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ウツボ釣って食った話

~ だいじなこと ~

※この記事には魚を捌く様子や釣りをしている様子の写真が乗っています。若干ながら血が出ているので、苦手な人はご注意ください。

あと微妙に私本人の手が出ている。

~ はじめに ~

この記事は帰ってきた!ドカ闇 Advent Calendar 2023、11日目の記事です。定期ゲーとか一切関係無いなこの記事。

11月25日。前日と比べて特段気温が落ちたこの日は私の給料日。 急激な気温差に身体と精神が若干追い付いていないながらも、千葉の南端の方へ釣りに行ってきた。ターゲットは?そう、ウツボ。

ということでウツボを普通に釣って普通に料理するだけの記事。

~ で、そもそもウツボって? ~

ウツボとはウナギ目ウツボ科の総称。目名から分かるとおりウナギの仲間であり、近縁の魚にはアナゴやハモがいる。あの辺長くてヌルヌルしてるしまあ仲間よな……という納得感。釣ったときに自分を固結びして針から逃れようとするのも一緒だとかなんとか。
自分を固結び。そう、自分の身体を固結びするのだ。本能的にそれが有効だと知っているのか、針掛かりしたウツボは時折自分の身体を固結びして逃れようとする。もし針から逃れてしまったら頭がフリーなウツボが釣り場に放たれる訳なので、緊張の一瞬となる。

それから彼らは存外に賢く、イセエビや小さなエビ類と共生関係を築いていたり、エサをくれる人の顔を覚えていたりする。Youtubeで探すと野生のウツボをダイバーが撫でている動画なんかもある。真似しちゃ駄目な類のやつですね。

そんなウツボはウナギの類いでは飛び抜けて危険な魚。ちょっと身体に入れただけで死ぬような毒なんかは持っていない(なお致命的な毒を持っていないだけで毒自体は血にある)が、その歯がとても鋭く危ないのだ。

ウツボの上顎。縦に並んだ三つの歯が特段鋭くてヤバい
ウツボの下顎。まだマシだけどまあかなり鋭い

これがものすごく鋭い。ともすればカミソリのように尖っている。そしてウツボは顎……というか全身の力がものすごく、つまり強い。噛まれたら指を持っていかれる。冗談抜きで。魚の方のウミヘビよりよっぽど海の蛇してる。まあ魚の方じゃない爬虫類のウミヘビもいるんだけども。ウミヘビ(爬虫類)とウミヘビ(魚)、いる。
あとウツボは屍食性の魚(死体などを食べるタイプ)なので、人には有害な細菌なんかを持っている可能性も考えられる。本当に危ない。

~ 美味いから釣るぜ ~

ウツボは穴に棲む根魚なので穴釣りで釣る。穴釣りとは魚の棲む場所に針と餌を直接落とし込んで釣ってしまおう、という釣り方だ。回遊性の魚などではなく海底に生きている魚、つまりカレイやヒラメやカサゴなどを狙い撃ちにするもの。

ウツボ自体の力と体重が普通の根魚とは尋常じゃなく凄まじいのでひたすら頑丈な道具を使う。私の場合は深海用の釣竿とにかくゴツいリール糸や穴釣り仕掛け。具体的には8000番のスピニングリールとナイロン16号、20号~25号の中通しオモリ、耐荷重20kgとかのデカいスナップ付きサルカン、ブリとか釣れるカン付き針。竿は中古のディープクルーザー400W。操作性も何も無い釣り方なので、リールは安物でもいいかもしれない。釣りをしない人には分からない字面だなあと書いてて思っている。

で、釣り場。黒潮の流れてる所なら大体どこにもいる。私が今回行った千葉の南端や伊豆の辺り、それから四国の南の辺りなど。根魚なので堤防の足許やテトラポッド帯のあたりにいる。

こういう所の根元あたりによく棲んでる

こういう所にサンマやサバなどの青物を雑に切って針に付け、穴に落とし込むと……

水汲みバケツの糸が絡んでしまったが釣れた
違和感を覚えて竿を煽ったら身体に針が引っかかってしまった。ごめんよ

このように釣れる。で釣れたウツボはもちろん超危険。おいしく持ち帰るために背骨を切って締め、エラを切り血抜きを行いたいのだが釣られたてのウツボは激おこ状態。下手に針を外そうとすると噛まれて指が無くなる。

氷水にドボン

なので、こう。あらかじめ氷水を作っておいたクーラーボックスに身体を突っ込ませて糸を切り、即蓋を閉める。 ウツボは水中のみならず陸上でもある程度活動できる魚で非常に生命力が高いのだが、こうしてキンキンに冷やした氷水に10分ほど浸からせることで弱る。彼らは皮膚呼吸が出来るので陸上でも余裕で動けるのだ。磯で釣った魚を捌いていると血の臭いに誘われたウツボが穴から出てきた、という話も聞く。鼻も効く魚、ウツボ。

弱ったあとで背骨を切って締め、エラを切り血抜きを行う。なお血抜きは必ず行わないといけない。彼らウツボが属するウナギ目は血清毒を持っており、血抜きをしないと毒を持つ肉になってしまう。 劇毒……と言うわけではなく、新鮮な血を大量に(それこそ1リットルとか)飲んだら死ぬ可能性がある程度のものだが、そもそも毒自体まずいんだわ。死なないにしたってわざわざまずい毒肉食う気も起きないし。
(参考リンク:自然毒のリスクプロファイル:魚類:血清毒

~ 捌く ~

釣り場で血抜きを済ませて持って帰って来たもの

そんなこんなでこの日は3匹釣れた。今回はこのウツボたちをムニエルカレーにしていきます。あと刺身

持って帰ってきたウツボたちは表面がぬめりでヌッメヌメなので酢をぶっかけて固化させたあとに包丁とかでこそいで取り除く。この時ウッてなる臭いがしますがちゃんと美味しくなる。

桶にウツボ入れて酢を回しかけてぬめりを固化させる
ぬめりをこそいだ後の皮。つるつるブニブニで触り心地がいい。そして頑丈。全力で引っ張ってもちぎれない。
なめして革にされる事もあると聞きましたがさもありなん。

ぬめりをこそぎ落とした後に肛門からハサミを入れ、腹を開いて内臓を出す。この内臓も正直結構臭い。特に胃袋は臭く、まんま吐瀉物めいた酸っぱい臭いがする。その代わり肉厚で頑丈、丁寧に下処理をすれば美味しそうな雰囲気をしている。そして底棲魚の癖にかなり大きい浮き袋を持っていて、浮き袋は美味しく食べれる。

捌くのはかなり難しい。普通の魚が余裕で捌けてもウツボはやり方を覚えないと無理だ。それからよ~~~~~~く研いだ出刃包丁と柳刃包丁が必須。必須。西洋包丁じゃ文字通り歯が立たない。最も硬いのは皮で、西洋包丁で挑もうものなら皮の表面だけが辛うじて切れる程度に終わるだろう。捌き方に興味があれば調べてみるとよい。

頭を落として内臓を取り、上・下半身で分けた後のウツボ上半身。
ぬめり落としからここまで1時間掛かっている。

まだ三枚におろしてすらいないが白い身がとても美味しそうに見える。実際美味しい。

上半身を三枚におろそうとしている所。手前のシマシマっぽいのが全てヒレの骨であり、ゼラチンめいてふにゃふにゃ動くのだが実際はけっこう硬い
二枚におろした所。上側が身、下側が中骨

ウツボの特徴のひとつとして、中骨が逆Yの字になっている。このため普通の魚のように三枚におろしづらい。

中骨断面図。左がヒレ側。

中骨から取った半身自体にも物凄く分かりづらく見えにくい位置頑強で鋭い小骨があったりするので厄介。普通の魚の小骨のように気合で齧ればなんとか食えると言うものではなく、明確に殺意をもってこちらに刺さりに来る。プラモのランナーの細くて尖ったものが入っている感じ。骨を抜けばいいのでは?と思うかもしれないが、未加熱では身にしっかりとくっついている上に無数にあるので厳しい。なので腹骨を漉くように骨のある部位だけ切り去ってしまうのが一番無難。……なのだが、物凄く分かりづらく見えにくい位置にあるという要素がそれを拒んでくる。本当に捌くのがめんどくさい。「ウツボ捌けるんでしょ?やってよw」って言われたらキレるレベル。

~ 料理して食うぜ ~

ムニエル。
おろした身を、こう。

小麦粉はたいて
ヤーーーーーッ!!
できた

実食。
なるほど身はとてもおいしい!捌く時にこれでもかというぐらいムチムチだった身がフワフワふっくら仕上がり、うま味が口の中に広がる。これだけでご飯が2杯3杯はいける……。上質で大きいウナギの身というのがぴったりな味わい。
惜しむらくは捌くのが下手で処理しきれなかった骨が歯に触る所。小骨なのに強靭すぎる。というか口内に刺さりかけた。

身のみならず、試しに皮だけ食べてみる。
……噛みきりにくく、ムニムニした食感。噛んでいると身と皮の間にあるゼラチンがじわじわ染みだしてきてネチョネチョとした食感になる。ゼラチンがしつこくなければいいのだがドロッとしてるし妙な臭み(ウツボ臭と言うべき、塩素臭と生臭さを足して2で割ったもの。冷静に嗅ぐとウッてなる)もあるし正直そこまでおいしいものではない。加熱で皮・ゼラチン・身がしっかりバラけるのが救い。 ノープランで料理を始めたので付け合わせ皆無だけどレモンあると相性抜群だなと思った。
ムニエルにはあんまり向いてない。

食べかけで恐縮だが皮・ゼラチン・身が綺麗に分かれているムニエル。
黒い所が皮、右上が身、白いのがゼラチン。身離れはよいのだがなあ。


カレー。
デイヴ・ザ・ダイバーに出てくる料理を作ってみたかったので作った。

デイヴ・ザ・ダイバーに出てくるウツボ料理。
ヤーーーーーーーッ!!

でっけえ鍋でタマネギ炒めてジャガイモとニンジン炒めて、

パワーーーーーーーー!!!!

水ぶっこんでカレールーぶっこんで、

できた

こう。

実食。
……うん。ムニエル同様、ムチムチだった身がふっくらふわふわ仕上がっている。カレーの味に負けないうま味が身から出ておりとてもおいしい。

カレーで煮込まれたウツボの身。

そこそこの時間煮たのだが身崩れすらしていない。 皮がぷるぷるとしていてゼラチン質がしっかりトロッとしている。捌く時やムニエルにした時に感じたネチョネチョ感は全く無く、簡単に歯で噛みちぎれた。私はぷるぷる系苦手なのだが、好きな人はすごい好きそう。
……が、皮はウツボ臭がカレースパイスの奥からフワッと香ってくるのが難点。フワッと香るだけでもちょっとウオッてなるやつ。


刺身。

薄造りにしたかったのだが私の料理スキルが低すぎて失敗している

脂の乗ったフグ。
海苔めいた香りがするムチムチジャキジャキの刺身をポン酢につけて噛み締めていると、奥からじんわり脂とうま味が出てきて非常に美味しい。釣りたて・捌きたてだと身が少々水っぽいので、キッチンペーパーでくるんで冷蔵庫に1日2日置いておくのがおすすめ。 日本酒が美味しいタイプの味。
この食べ方だと皮の臭みとか一切考えなくていい。骨もね。


~ おわりに ~

定期ゲーなどと全く関係のない、ただウツボを釣って食うだけの記事でした。楽しんでいただければ幸い。こういった記事を書くのが初めてなので、感想を頂けると大変喜びます。ミルクトゥースも喜んでいます。
これであなたがたもウツボは美味しいという事を十分知ってもらえたことですね?

もしウツボの味に興味が出たんなら自分で釣るか高知県に行くかなりしましょう。その時は私なんかの記事を信用せず他の人の情報やらを参考にしてくれ。探せばいくらでも出てくるから。釣り方も捌き方も。私はただのごく初心者の釣り人にすぎん。責任取れん。
高知県に行くとウツボのタタキと唐揚げとたまに薄造りが居酒屋で食える。まあまあ高いので金銭面に余裕があったり旅行でそういやコイツがウツボ美味しいって言ってたな~って時に頼むぐらいがいいだろう。おいしいよ。

それからここでは釣りのターゲット&食材としてウツボを紹介したが、普通におさかなとしても可愛い。こう……ぬべっとした顔付きが……たまらないんだ……。

~ おまけ ~

ウツボを釣った後、ゴンズイ狙いで近くの堤防に移動し釣りを始めた。ゴンズイもけっこう有名な毒魚だが、曰くそれもとても美味しいのだという。本命狙いの釣り人がほぼいない毒魚……素敵だ……♡

釣り方はウツボと同じく穴釣り……というよりブラクリ仕掛けで釣る感じ。時折アタリはあるものの肝心の針には掛かってくれない……そんな最中、ぐいとアタリに合わせると竿に重みが。
オッ何だろう、カサゴの類いかな本命のゴンズイかなと糸を巻き上げると……


エッアッ!?!?!?!?!

伊勢海老釣れちゃった…………

 ちょっとだけ観察した後、密漁になるので逃がした。本当にギイギイ鳴くんだね伊勢海老って。

私が釣ったポイントでは、伊勢海老が「協同漁業権」の対象魚になっている。それゆえ持って帰ると密漁になってしまう。間違って釣ってしまっても、すぐに逃がせば特に問題は無い。

漁業権はしっかり確認しよう。意図してなくても密漁になってしまう。
伊勢海老が漁業権の対象になっていない場所であれば喜んで持って帰っていたのだがなあ……。

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