見出し画像

中町 信『死者の贈物』(1999) 紹介と感想

中町 信『死者の贈物』講談社, 1999

あらすじ

野木見友子が財津珠世のスナックへ電話をかけると、粕谷伸一郎が電話に出て、遺恨から財津珠世を刺し殺してしまったので自殺すると話し電話を切った。
状況を聞いた外科医の徳有修平、妻で看護師の徳有雪乃、野木見友子が急いで駆けつけると、珠世は生きていたが、伸一郎は喉を同じナイフで突き刺し死んでいた。
事件は単純に片づくと思われたが、3人の努め先の病院・明京病院院長で珠世の姉である財津加奈子の誕生日パーティーの最中に、珠世が殺されてしまう。
その後、加奈子の夫で副院長の茂人が自殺をして、今度こそ事件は終わると思われた。
しかし、悲劇は未だ終わりを見せず続いていくのだった。
偶然病院に入院していた時代小説作家で素人探偵である和南城千絵は、翻訳家で同じく素人探偵の夫・健とともに、事件の中心に入り込んでいく。


紹介と感想

著者の本を読むのは初めてですが、名前は前から知っており、いつか著作を読みたいと思っていました。
今回は、素人探偵夫婦・和南城シリーズの3作目になるそうです。

人間ドラマよりも、事件の謎の真相に焦点が当たっている謎解き小説になります。
序章の時点で真相に直接繋がる違和感をしっかり組み込んでおり、こういうのは好きな趣向なので良かったです。

しかし、合間の物語運びに少し人工的な部分が目立ってしまったという印象がありました。
特に、あからさまに殺されそうな野木見友子に対して、何かしら掴んでると感じながらも何も対策をしようとしない警察の動きは気になった部分です。

事件関係者の殆どが死んでしまう結構すさまじい展開ですが、探偵役も警察も深刻に捉えないのでサラッと楽しんで読む事ができる小説でした。

今後、代表作でもある『模倣の殺意』や、晩年に初期作を長編化させた『三幕の殺意』などを読んで、ミステリー作家としての特徴を知りたいと思います。

「和南城……変わった名前ですね」
「きみは、うちの課にきて、まだ一年足らずだから知らないだろうけど、彼の奥さんは時代物作家でね。あの夫婦には、これまで二度ばかり、捜査に一緒してもらったことがあるんだ」
「すると、素人探偵かなにかですか?」
「ああ。つまり、奥さんが作家探偵ってわけだ。それに、亭主がメチャ頭のいい男でね」

中町 信『死者の贈物』講談社, 1999, p.39
岡部刑事に和南城夫婦のことを説明する中畑警部

和南城夫婦シリーズ

01.目撃者 視覚と錯覚の谷間(1994)
02.十四年目の復讐(1997)【別のシリーズ探偵・山内鬼一と共演】
03.死者の贈物(1999)
04.錯誤のブレーキ(2000)


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?