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ウガンダ農村部にみる、初等教育へのアクセスに関する課題

ウガンダに来て4か月、ローカルNGOに配属となって3ヶ月が経った。
その期間で見えてきた事を、頭の整理も兼ねてまとめておきたいと思う。


教育制度と、初等教育の完全普及(UPE)政策

ウガンダの教育制度は、以下のようになっている。
❶初等教育 7年間

❷前期中等教育 4年間
❸後期中等教育 2年間

➍高等教育(大学/専門学校)
           
そして現在、初等教育の無償化、中等教育の一部無償化が実施されている。

これは1990年代にサブサハラアフリカの複数の国で主流となった
ユニバーサル・プライマリーエジュケーション(UPE政策)」(初等教育の完全普及と呼ばれる)
という政策が根幹となっており、

ウガンダでは1997年に政府から初等教育(小学校)無償化が実施され当初は各家庭4人までの学費無償が導入されたが、
2000年には人数の制限も取り払われた。

この政策により、農村部でも公立小学校への入学数が増加した。

ウガンダの就学者数
1996年 約310万人 (UPE政策以前)
2003年 約760万人
2017年 約880万人

 ※UNICEF Open Dateウェブサイト, CEIC Date ウェブサイトより

2019年に行われた調査では、初等教育への就学適性年齢のこども(6歳~12歳)の10人に8人が、初等教育へ就学しているという調査結果も報告されている。 
※UNICEF Open Date ウェブサイトより

就学者数が増えた一方で、
教室など学校施設のキャパシティーが足りない/教える側の人数が追い付かない/児童一人一人に対して注意を払える範囲が小さくなっていくという傾向が生じているようだ。
(教育の質、および初等教育を終了する児童の割合が問題視されている。)

よく、アフリカの小学校教室で
一つの机に児童がギュウギュウ詰めに座って授業をうけているイメージは頭に浮かぶかと思うが、
農村部ではまさにそのような光景が広がっている。

「それでも通えない」 初等教育へのアクセスに関する問題

「無償化」といっても「授業料」の支払いは無いが、以下のもの等は各家庭が負担する必要がある。
・制服の用意
・学用品(ノート等の文房具)の用意
・学校施設に関する電気・水道代の積立金(毎学期)
・給食費の支払い(毎学期)        etc.

UPE政策に基づき、中央政府→各地域の公立小学校へ、学校運営の為の補助金が配分されているが(各学校の児童数に応じて配分額が決まる)、
学校がこれらの予算から賄いきれない費用については、学校が各家庭へ負担を求める形となっている
のである。
(各学校に学校運営委員会とPTAが発足され、委員会で取り決め→PTAで通知・コンセンサスの構造になっているよう。)

最近では、物価高騰も相まって学校経営が苦しいことから、入学時に「入学料」を徴収する公立小学校も出てきている。
(施設・授業の質が比較的高い私立学校では、入学料の支払いが必要なケースも多いが、所得水準の低い農村部の公立学校で入学料徴収はこれまであまりない。)


これらの費用負担が出来ない家庭は、いまだ子どもを学校に通わせられない状況にある。

私が配属先でAIDS孤児の保護を中心に活動するなかで、実際に出逢ったそのような家庭には、(労働人口とみなされる)20歳以上の大黒柱となる家族メンバーがいない家庭が多かった。

例を挙げると、
・幼いうちに片親を亡くし、重い疾患を抱える(就労は難しい)親と暮している
・幼いうちに両親を亡くし、祖父母や、同集落に住んでいる自身の子育てを終えた(子どもが家庭を出て行った)高齢者に引き取られ、一緒に暮らしている


こういった境遇にある家庭は、農村部内でも特に貧困層にあたると考えられる。

2018年公表の、世界銀行・UNICEFおよびウガンダの調査団体が作成した
「ウガンダ貧困マップおよびレポート」を見ると、ウガンダでは

世界銀行の貧困ライン(2022年の改定前):一日1.9USD未満で生活する人の割合は、人口の約34.6%。
ウガンダ政府が制定する国家貧困ライン※:一月29,000UGX(約7.43USD)未満で生活する人の割合は、人口の約19.7%。

※同レポートでは、「国家貧困ラインの算出方法は多角的な視点を考慮されているが、各地域における経済状況は様々異なり、各地域による算出数値(貧困ライン)はより実態に即したものと考えられる」との注意書きが添えられている。

※Poverty Map of Uganda -Thechnical Report in January 2018より

私の暮らすウガンダ中央部ムピジ県ムピジ町では、
自治体がこのような貧困家庭に対して経済的に就学を支援するような政策は置かれていない。
住民が経済的理由で就学させられないということを自治体へ相談したとしても、解決策として充てられる具体的な福祉制度がない状況である。

では住民はどこに助けを求めているのか?

その相談先は、同地域で活動しているNGOや、住民や大学生ボランティア等から発足した市民団体等であったりする。

私が赴任したローカルNGOも、そういった住民や、住民の困った声を聞いた自治体が助けを求める相談先になっている。

構造としては、

政府が公表している「Child Policy」があり、そのなかに教育へのアクセスの確保も軸として含まれてはいるが、

先述のように子どもを就学させられない家庭に対し、地方自治体が福祉として手を差し伸べる事が出来るようにする為の経済的インセンティブが伴う政策はない。

そうした貧困層へのセーフティネットとして、
ローカルNGOや市民団体が地方自治体へ登録して活動をしている。(登録することで、行政と民間とが連携を取りやすくする等の目的がある)

実際の支援現場(地域コミュニティ)では、
それらの団体がそれぞれの予算で出来る範囲の支援を提供している、という構造がある。


”それぞれの予算で出来る範囲の支援をしている” というところで
やはり支援対象者の幅や、支援内容には制限が出てくる。
カバーできれない住民が(境遇が)出てくる。

それらの団体は独自で資金調達する必要があるため、
彼らは常に資金調達の困難に直面している。


***
私の配属先であるNGOは、
同地域(ムピジ県)では初等教育への就学支援を行うローカルNGOとして
唯一の県庁登録団体(県庁公認団体)である。

このローカルNGOの具体的な支援方法や、直面している課題に関して
次の記事にまとめたいと思う。

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