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青いガーネット 1st One-man LIVE 「HOUSE OF UMBRELLA」2024.3.29@hillsパン工場 LIVE REPORT

 2023年6月30日よりGARNET CROWのトリビュートバンドとして始動した青いガーネットの山本ピカソが、3月29日に念願の初ワンマンライブを行った。会場は大阪にあるライブハウス「hillsパン工場」。関西唯一のメジャーレコード会社「GIZA studio」が所有する本社ビルの地下2階に位置するこのライブハウスは2003年3月20日のオープン以来、松本孝弘(B’z)、稲葉浩志(B’z)、坂井泉水(ZARD)、倉木麻衣、そして本家・GARNET CROWほか、山本にとっては同じグループ会社の大先輩に当たるビックな面々もステージに立ったことのある特別な場所だ。また「hillsパン工場」は新人発掘や育成にも力を入れており、山本もイベントなどでこれまでに幾度かライブ出演を果たしているが、今回は思い入れも気合いの入りようも格別であったに違いない。なんたって人生に一度きりの初めてのワンマンライブなのだから。ましてや、3月29日は24年前にGARNET CROWがメジャーデビューを果たした記念の日。その意味からも、GARNET CROWに敬愛の念を抱く山本自身はもちろん、解散から10年以上が経ってもなお多く存在するファンにとっても、様々な想いがよぎる特別な一夜に挑む1stライブとなったのだ。

 開演19時。いよいよその時が訪れ、オーガニックなSEに乗ってサポートメンバーの宇都達人(Gt.)、北川加奈(Key.)、車谷啓介(Dr.)、川浪啓太郎(Ba.)に続いて、山本ピカソ(Vo.&AG.)が姿を現した。アコギを背負い、中央のスタンドマイクにポジションを取ると、ソールドアウトとなった満杯の客席に視線を向け、たちまち感激の表情を浮かべた。と同時に力強いドラムのフィルが鳴り、ライブは幕を開けた。

 一曲目はこれまでのライブでも何度か披露している「Mysterious Eyes」。GARNET CROWのデビュー曲だ。前方のオーディエンスが思わずイントロで立ち上がり、歓喜を体全体で表している。中央から後方は食い入る様にステージを見つめ、大きな手拍子を送りながら山本を後押し。得も言われぬ高揚感で場内が満たされていった。

『皆さんこんばんは、青いガーネットです。1stライブにようこそ。今日は私たちと皆さんとで最高の一日にしたいと思っているんですけど、準備はどうでしょうか? それでは聴いてください!』

 挨拶後は、ライブ初披露曲「flying」。どっしりと安定したバンドサウンドに乗って伸びやかな歌声を羽ばたかせた。続いて、歯切れの良いリズムと親しみやすいメロディラインとは裏腹に寂寥感が滲む歌詞が独特の「空色の猫」。エンディングの印象的な英語コーラスを、宇都、北川、川浪と共にユニゾンし、チームワークの良さをのぞかせた。

 「改めましてこんばんは。青いガーネットです。こんなに沢山の方とこの日を過ごせると本当に想像もしていなかったので、すごく嬉しいのと同時に3/29 はGARNET CROWさんのデビュー記念日でもあり、そんな大切な日に楽曲を歌わせていただけることを感謝しています。皆さんと今日一日すごく楽しい時間を過ごせたらと思っています。最後までよろしくお願いします」

 MC開けは、「水のない晴れた海へ」「Last love song」のライブ初挑戦の2曲、さらにGARNET CROWの真骨頂とも言えるノスタルジックなナンバー「忘れ咲き」を続けて披露。本家のライブで定番だった「水のない晴れた海へ」は、ネオアコースティックを基調に楽曲制作をしていた頃の1stアルバム収録曲で、アルバム曲の中でも特に人気が高い曲だ。緻密なアレンジに、AZUKI七の狂気を感じるほどに美しいピアノソロや、中村由利の内省的なヴォーカルによって唯一無二のGARNET CROWワールドを構築するこの傑作を、気負いのない等身大の歌声で表現した山本に好感がもてた。また、深い陰影を描き出す凛とした北川のピアノにも魅了された。
 ライブ中盤は、ゆったりとしたイントロにバンドメンバー紹介を乗せ、途中から軽快なサウンドにチェンジし一体感を増していった「スパイラル」。大学生とは思えない宇都のテクニカルなギター・ソロに触発されたかのように、「歌える人は一緒に歌いましょう!」と山本が大声で促す場面も。アコギを置き、ハンドマイクで歌唱していた彼女は客席にもマイクを向け、観客とのシンガロングを笑顔で楽しんでいた。

 「半年前くらいにスタッフさんから“ワンマンライブやりませんか?“と言っていただきまして。“私なんかまだまだ”と思っていたんですけど、“ライブタイトルを考えてください“と言われて……。それで、子供の頃のことを思い出してみたんですけど、小学生くらいの時に近所の子供たちと外で遊ぶのが大好きで、雨の日でもなんとか外で遊べないかと考えたのが、それぞれが傘を持ち寄って柄の部分を中心に集めて「傘の家」みたいにして(笑)。その中に入ってお喋りしたりしていた頃のことを思い出しまして。このライブも、私を含めここに居る皆さん全員が違う所で生まれ育って、違う所から集まっていい思い出を作るっていう……そういうことが出来たらと。そして今日以降の日常に、雨や雪や氷(ひょう)が降る日もあるかもしれない、それを凌げるような思い出を一緒に作れたらいいなと思って『HOUSE OF UMBRELLA』というタイトルにしました。皆さんが来てくれたから、このタイトルが初めて意味をちゃんと成したと思います。本当にありがとうございます!!」

 ライブタイトルに込めた想いを語った後は、この日唯一のオリジナル曲「四月の天使」をドロップ。作詞作曲を自ら手掛け、アレンジは宇都と北川と共に行ったそうで、演奏も三人で披露した。「春の曲です!」と紹介された今作は、春から夏へと今にも駆け出しそうな恋心を鮮やかに描いたポップなナンバーで、清涼感に溢れるメロディ・ラインは聴き心地がよく、殊にきらめくサビのキャッチーさは秀逸だった。今回は1コーラスのみ聴かせてくれたが、この曲を聴く限り、今後山本のソングライティングセンスにも大いに期待が高まる! 引き続き、三人編成のままもう一曲。これまでに青いガーネットがカバーしたGARNET CROW作品は初期〜中期の曲がメインだが、ここで最後のオリジナルアルバム、しかもそのラストに収録された「closer」を選曲。楽曲と真摯に向き合い一語一語想いを宿すように歌う山本の姿に、いつしか場内はあらゆる感情を受容する没入空間が生み出されていった。情感豊かな宇都によるエンディングのギター・ソロにも心打たれた。

 そしてライブは後半へ突入し、車谷(Dr.)と川浪(Ba.)も再び参加して「Holy ground」へ。安定したリズム隊のグルーヴに支えられ、エグみのない伸びやかな歌声を聴かせる山本。およそ一年前にもここhillsパン工場でこの曲に挑戦する姿を目にしたが、その時よりも随分と成長した今を見せてくれた。
 
 「GARNET CROWさんのトリビュート、青いガーネットとして活動させていただいてからまだ短いんですけど、沢山の感情に出会えたり、ライブも沢山させていただいて有難いとしか言いようがありません。今日がピークにならないようにこの先もライブ活動をメインに誠意を持って活動していけたらと思っています。今日一緒にやってくださっているバンドメンバーさん、スタッフさん、そして何より素敵な楽曲を残してくださったGARNET CROWさんに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。」
 
 惜しみない拍手が贈られる中、GARNET CROWの代表曲であり、時が経っても色褪せることのない名曲「夢みたあとで」が届けられ、この日のクライマックスを迎えた。と思いきや、ライブはまだまだこれから! 宇都の派手なグリッサンドを合図にアップテンポに駆け抜けるマイナー調ナンバー「whiteout」「僕らだけの未来」を矢継ぎ早に畳み掛けた。ぬくもりのある歌声のイメージが強い山本だが、こうしたエッジの効いたロックテイストもなかなか良い! そしていよいよラストナンバーは「今宵エデンの片隅で」。GARNET CROWでは会場全体が揃って腕を左右に振り、毎回盛大な盛り上がりを見せたこのライブ定番曲を最後に歌い、青いガーネットの記念すべき初ワンマンライブは爽快に幕を閉じた。のだが、高揚した場内はアンコールの手拍子がいつまでも鳴り止むことはなく、アンコールをする予定はなかったそうだが、バンドメンバーと相談の上急遽ステージに舞い戻ってきた。そして、GARNET CROWの歴史を語る上で欠かすことのできないデビュー曲「Mysterious Eyes」をもう一度演奏。ライブ初披露の7曲を含む全14曲を堂々と歌いきり、およそ1時間半に及ぶ初ワンマンライブは多幸感に包まれる中エンディングを迎えた。

 今回のステージはGARNET CROWのトリビュートバンドとして、1曲以外全てGARNET CROWのカバーで構成されていた。MCでは「ライブをメインに活動を重ねていきたい」と話していたが、今後どのようなオリジナル曲を聴かせ、どのような個性を発揮してくれるのか、十分に期待できるポテンシャルの高さを示すパフォーマンスだったと思う。何よりも彼女の魅力は、琴線に触れる温かみのある歌声にある。「四月の天使」のようなみずみずしく鮮やかな歌詞はもちろん、GARNET CROWのような文学的な想像を掻き立てる歌詞とも相性抜群。今後の成長と活躍を見守っていきたい。

SET LIST
01. Mysterious Eyes
02. flying
03. 空色の猫
04. 水のない晴れた海へ
05. Last love song
06. 忘れ咲き
07. スパイラル
08. 四月の天使(オリジナル曲)
09. closer
10. Holy ground
11. 夢みたあとで
12. whiteout
13. 僕らだけの未来
14. 今宵エデンの片隅で
(Encore)
Mysterious Eyes


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