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真壁幸紀監督が語る、映画『すくってごらん』に込めた思いや魅力とは? vol.1

3月12日より全国で公開中、映画『すくってごらん』

今回の上映にあたって、『すくってごらん』で監督を務めた真壁幸紀監督に(ほの)と(まっぴぃ)でインタビューを行ってまいりました!

2記事にわたって、新感覚ポップエンターテインメント『すくってごらん』制作の裏側についてたっぷり紹介します。

vol.1では、映画ならではの"音"にこだわった理由や普段の映画制作との違い、キャスティングの経緯など語っていきます!

↓本作のレビュー記事については、こちら


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(画像:映画.comより引用)

漫画に対抗!? 真壁監督が"音"にこだわったワケ

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まっぴぃ:原作の同名漫画を実写化するにあたり、こだわったことはありますか?


真壁監督:オファーされた時は、まだ音楽物とか、映像に文字を入れるっていうことは全く考えていませんでした。

けれど、原作を読んだときに漫画ならではの表現がたくさんあって、これを映像化するとすごいお金がかかると思ったんですよ。

ただ、原作の楽しい感じとか、金魚すくいで世界観を表現するところは良かったので、それをベースに新しい表現で、漫画に負けないような映画ならではのことをしようと思いました。

そこで、漫画には音が無いので、音をふんだんに使った映画にしませんかと提案しました。


まっぴぃ:漫画を忠実に再現するというよりは、オリジナルにする方向で進めた感じなんですね。


真壁監督:そうですね。逆に、漫画に対抗するというか、漫画とは全然違う感じで、映画を楽しめる形にしたいなっていうのが一番でした。

今、AmazonプライムとかNetflixとかでクオリティ高い作品が、月1200円とかで見れちゃうわけじゃないですか。それをわざわざ1900円払って、2時間使っていうとなかなかやっぱり…。

そうなると、一番みんな手っ取り早く、映画館で観たいと思ってもらえるかってなったときに、音が一番かなと思って。

音響にこだわった映画を作るってことが、映画館の音響を使って、映画館に脚を運ばせることにつながると思って、作りました。

僕の自宅もそうなんですけど、今すごく安くプロジェクターが買えるんですよね。そうすると、壁とかに投影すれば大きく映るので、大画面ってだけだとあまり価値が無いんですよ。


まっぴぃ:なるほど。音楽要素のない原作でも、映画ではミュージカルのような、音楽を中心に持ってきたのは、やはり映画ならではのこだわりを出したかったからってことなんですかね。


真壁監督:そうですね。あと、海外のミュージカル映画と比べて、日本のミュージカル映画ってなるとあまり良いのがないなと。

だからこそ、挑戦してみたいなっていうのはありましたね。まだそこが未開拓な部分もあるので。

尾上松也さんとか百田夏菜子さんは、今回初主演、初ヒロインだったんですけど、もっとちゃんと音楽を使った邦画が作られれば、そういう人たちが出る映画が増えると思ったんです。

これをきっかけに、音楽映画が作られるような邦画界になれば良いなっていう気持ちも込めて、チャレンジしました。


ほの:言われてみると、日本のミュージカル映画って少ない気がします。


真壁監督:そうなんですよね。いろいろ調べて、研究したんですけど、単純に人種というかノリというか。

アメリカの人たちって気軽にハグとかしたり、ノリの良い人たちじゃないですか。だから、外で歌っても全然恥ずかしくないんですよ。

やっぱり日本人は、基本的には侘び寂びの人たちだから、すごく照れがあるわけですよ。

ミュージカルの本とか読んで面白かったのが、あっちの人たちはキリスト教とか、神の視点を持っている人たちで、天を仰ぐような仕草を日常的にやってるんですよ。

日本人は仏教で、下を向く人たちだから、神の視点とかあまり気にしないじゃないですか。

日常的に上を向いて何かを歌ったり、祈りを捧げることがない人たちが、ミュージカルをやるとしんどいよっていうのを誰か偉い人が書いてたんです。


まっぴぃ:でも、この作品の音楽だと、歌というよりは、心の内から勝手に音楽に乗ったみたいな、壁がない感じがして…。私の母とかミュージカル苦手なんですけど、勧めたいと思いました。


真壁監督:ありがとうございます。やっぱりミュージカルって急に歌い出すってイメージがあると思うんですけど、実はよくよく見てみるとそんなことはなくて。

気持ちが高まったから歌ってるみたいな感じなんですよね。

それが、ミュージカル表現の一つのルールなんですけど、それが急に歌ってるように見えてしまうんですよね(笑)

今回は、ちゃんと気持ちが高まったから歌ってるんですよっていうのを分かりやすく提示しました。


まっぴぃ:すごく自然で、誰でも楽しめる感じの音楽映画だと思いました。


真壁監督:ありがとうございます。そこを目指してたので嬉しいです。


普段の制作では味わえない、"わからない"も楽しめた現場

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まっぴぃ:ミュージカル仕立てにするにあたって、普段の映画制作と異なる点はありましたか。


真壁監督:ありましたね。脚本の段階から、ここに音楽が入りますとか、ここは歌ですっていう感じで。

松也さんとかに脚本を渡した時、ここに歌が入って、ここでこういう気持ちになるっていうのはわからないと言われたり。

僕もあんまりわかんないなと思いながらやってたんですけど、そのわからない感じを楽しんでくれる人たちが今回来たので、割とノリで作れたみたいなところがありますね。

逆にノリで作らないと難しいかな。ガチガチに固めちゃうとなかなか難しかったかなとは思います。


まっぴぃ:脚本の土城さんと真壁監督で、音楽と脚本をどのように組み合わせて、作品を完成させていったんですか。


真壁監督:あの映画のあの曲だとか、ここをちょっとあいみょんっぽくしたいですとか、ジュディマリのYUKIちゃんの初期の頃っぽいのだとか、具体的に歌手の名前や曲名を挙げて、話しながらやってました。

結局、具体的な映画とか音楽、観てきたもの、聞いてきたものを提示して打ち合わせするっていうのが、脚本作りでは結構あります。


圧倒的歌唱力の全キャスト、タイミングと情報がカギ!?

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ほの:どのキャストの方々も圧倒的な歌唱力をお持ちでしたが、キャスティングは歌唱力があることを前提に行われたんですか?


真壁監督:そうですね。彼らは、舞台では結構主役をやる人たちなんですけど、映像の分野ではまだあまり主役とかを張っていない人たちでした。

その人たちが逆に映画の舞台にくるからこそ、新しいものを作れるんじゃないかと思ってキャスティングをお願いしました。

松也さんに関しては、もちろん歌唱力もそうですし、コメディが上手かったので、そこはすごく意識して選ばせていただきましたね。


ほの:私の中では、石田ニコルさんは、モデルで活躍しているイメージがあったので、歌が上手なことに驚きました。以前からご存知だったんですか?


真壁監督:そう、それもすごく良いタイミングだったんですけど、彼女も5、6年前にデビューした時に、ミュージカルの『RENT』をして。

ただ、その時に彼女的に思うところがあって、歌を歌うことを辞めていたらしいんですね。勉強しなきゃなって。

今作のキャスティングを進める中で、キャスティングプロデューサーの方から、さっきの石田ニコルさんのお話を聞いて、そういう熱がある人がすごく良いかなと思ってオファーしました。


ほの:タイミングが良かったってことなんですね。


真壁監督:そうですね。タイミングが良かったのと、情報網を張っていたってことですかね。誰が今一番良いのかっていう。

キャスティングで難しいのは、みんなオファーを受けるんだけど、お仕事以上のものを出してもらわないとなかなか良いものにならなかったりするので...。

「歌を歌いたいです」っていう人が来ると、一個クオリティとしては上がるので、そういう人を探すようには気をつけています。


ほの:今回の主人公の方は、映画初主演の尾上松也さんと、映画初ヒロインの百田夏菜子さんで、役者の方々にはすごく初めての多かった現場だったとは思うのですが、真壁監督から見て、お二方はどのような印象でしたか?


真壁監督:そうはいっても、松也さんも百田さんも10〜20年、松也さんは小さい頃から歌舞伎やってますし、百田さんはずっとトップアイドルだから、二人ともプロだし、ベテランの域なんですよね。

お二人に共通しているのは、スタッフのテンションを上げるというか、みんなと距離が近いというか。

自分たちが主役でこの現場を作ってるんだってことに対する使命感を持っていたことですかね。

2人とも、なんとか撮影現場を盛り上げなきゃなっていう使命感をずっと持ちながらやっていて、基本的にずっと明るかったですね。

割と撮影現場ってスケジュールがタイトだったりして、助手の子たちは結構疲れちゃったりするんですけど、そういう子たちと接してくれてたので、彼らはすごく嬉しそうでしたね。

現場が暗くならなかったのは、お二人のキャラクターのおかげだと思います。


まっぴぃ:映画そのものの雰囲気が、そのまま撮影現場に繋がっているんですね。


真壁監督:そうですね。題材がコメディっていうこともあるから、基本的に気分が落ちたりするってことは、作品に対してもよくないと思って。

シリアスな題材だとそこはまたちょっと違うんですけどね。和気あいあいとやることが良いとは限らないので、なかなか難しいところではあるんですけど、今回はこういう題材だったのでちょうど良かったです。


ほの:尾上さんが映画初主演とは思えないくらい、もちろん長い間舞台や歌舞伎で培ってきたものだと思うんですが、顔とか体の動きとかがダイナミックで、映画初主演とは感じませんでした。


真壁監督:僕も本当にそう思います。

尾上さんと僕は同い年なんですけど、彼みたいに、30代中盤で、かっこいい役もかっこ悪い役もできて、主演になれる人ってなかなかいないですよね。なので、すごく貴重な俳優さんだと思います。


ほの:『半沢直樹』にも、尾上さんが出てらっしゃったじゃないですか。その時はめちゃくちゃかっこいいなと思ってたんですけど、この作品の時は、「あれ、ちょっと違うな」って思って(笑)


真壁監督:けど、この作品は『半沢直樹』よりも全然前に撮っていて、2019年の夏に撮ったんですよ。

ちょっとコロナで公開日がずれてしまったんですけど。『半沢直樹』に出るなんて、全然知らず驚きました。


ほの:じゃあ、この映画で変わった一面が見れるってことですよね。


真壁監督:そうですね。結構みんな『半沢直樹』と歌舞伎のイメージがあるから、歌が上手いってこともあんまり知られてないんですよね。

ミュージカルの大きい舞台でも主役とか結構やってるし、ミュージカル界では有名なんですけど、そこもみなさんに知っていただきたいです。

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いかがでしたか?

この映画に込めた音のこだわりやキャストの方々について、たくさん語っていただきました!

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映画『すくってごらん』は、全国の映画館で絶賛上映中!監督がこだわりにこだわりぬいた音を、ぜひ劇場で体験してください!

vol.2もお楽しみに〜!

↓映画『すくってごらん 』の公式サイトはこちら

執筆:映画チア部神戸本部 (ほの)

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