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もはやIMAXより新しい!?伝統芸能・活弁の魅力

こんにちは!映画チア部(ノコ)です!
みなさまいかがお過ごしですか?

私は現在大学4年、学生生活もあと少し…ということで、暇な間に絶対行っておきたかった「高田世界館」(新潟県)に行ってきました。

100年前から続く日本最古の映画館。洋館風の外観やオシャレな天井、それからなんと2階席!私たちがよく知る映画館とは全く違っていて、とてもとても新鮮で、古い映画館というよりは(ハイテク劇場とは違った方向性の)最新の映画館にいるような、不思議な感じがしました。

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はあ〜素敵。映画が生まれて約100年、誕生当初と比べると撮影方法や上映スタイルなどあらゆる点で大きな変化があり、今の私たちからすると新鮮でたまりません! 


さてさて今日は、そんな温故知新な映画文化から”とっておき”を一つ、ご紹介したいと思います。それは「活弁(かつべん)」です!

まず活弁とは何か、ご説明します。みなさんご存知の通り、初期の映画には音がありませんでした。そのため、ボディランゲージのごとく役者の動きだけで話の展開を推測させたり、役者の映像の後にセリフのみのスライドがあったり(映画『アーティスト』のアレ!)と、音の情報を補う努力が成されていました。

でもやっぱり、役者の言葉は耳で聞きたいもの。そこで現れたのが活弁です!

これは「活動弁士」という人が登場人物のセリフやナレーションを、上映中の館内その場で語る手法です。同じくその場で楽器演奏者が繰り出すBGMや効果音に合わせながら、複数の登場人物に一人で声を付けていく所業はもう神の領域。当時活弁は絶大な人気を博し、弁士ごとの違いにも注目されていたそうです。

どうやっても私の説明では伝え切れないので、こちらの映像をご覧ください。

なんとなくお分かりいただけましたでしょうか。幼い子供達をも魅了してしまう活弁……すごいです。しかしながら、技術の進歩により映像と音が同時に流れるトーキー映画が誕生し、活弁は過去のものになってしまいました。


のですが!実は今も日本には数名の活動弁士さん、無声映画伴奏者の方がおられ、この文化の継承に力を注いでおられます!(はあ、安心しました涙)


ところで、なぜバリバリ5.1サラウンド世代の私が活弁の話をしているのか?
それが今回の肝なんです。実は私、以前活弁上映を拝見したことがあり、そこでもう、深く深く感銘を受けました「映画ってこんなのもあるのか!すばらしい!!」という感動を皆さんにもお裾分けしたく、この場をお借りしているわけです。


私が観た活弁は『雄吕血』。1925年の日本映画で、昭和の名優・坂東妻三郎が主演を務めています。この映画の上映時間が75分だと聞いた時、活弁未経験の私はこう思いました。

「無理、飽きちゃう」

今思えば恐ろしく失礼な話ですが、100年前の映画です。色はない、音はない、画質も悪い、ストーリーもきっと単純。最近の美しい映像、迫力のある音声etcetc…に慣れきった私には厳しいだろうと思いました。(実際、授業で見る初期映画も短いものしか好きになれませんでした)

スクリーンショット 2020-10-29 17.06.26

引用 https://www.imdb.com/title/tt0016185/mediaviewer/rm3805168896

ですがどうでしょう。始まってみたら、これは一体なんなんだと驚きました。

イケメン、若い女性、おじいちゃん、悪い人…多種多様な登場人物を、声色を使い分けながら一人で演じる弁士さん。その神のような所業を、私たち観客の目の前でやっているのです。「七色の声」とはよく言ったもので、弁士さんによって白黒の映画に色がついたように、急に鮮やかに感じられるようになったのです


そして音楽。私は音楽に疎いので、録音と何がどう違うのかと聞かれれば「迫力」としか答えられませんが、生演奏はやっぱり、音が目の前に漂っているようで素敵なんです。


現代の映画は、スクリーンによって「見る空間・見せる空間」がハッキリ分け隔てられていますしかし活弁では、スクリーンの人たちと弁士さん・演奏家さんが「演者」という同じ枠内にいて、弁士さんたちと私たち見る人が同じ空間にいる。ただ見てるだけなのに弁士さんたちとの一体感があり、妻三郎との距離もすごく近く、かつてない臨場感を感じました。

私の知る映画とは、どこか遠くで撮影した映像をただ流すものです。あらゆる映像技法によって臨場感が追求されていますが、映画と臨場感は、根本的に相容れないものだと思っていました。なのに、活弁はそれを可能にしたのです

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また、異なる時代や文化圏の作品は100%理解することが難しいですが、弁士さんによって100年前の時代背景をちゃんと掴めるような、今を生きる私たちに合わせたナレーションがなされるため、自然にその世界に入っていくことができました。

これってすごいことじゃないですか?映画って、一度完成すると同じものが後世に残されていくだけなので、時代の変化に合わせられない、本当の意味で時を超えることはできないはずです。でも活弁にはそれができたんです!

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相当活弁に陶酔した話し方になってしまいましたが(事実なので仕方ない)、活弁はIMAXにもDOLBY CINEMAにも、トーキー映画以降すべての映画が持ち得なかった「ライブ感」「時を超える力」を持っています。一体これのどこが古いのでしょうか?

活弁の魅力は言葉では語り尽くせません。伝統芸能だと身構えず(あんなに幼い子供達が夢中になってたんですよ!)、”新しい映画”を観るつもりで是非一度体験してみてください!


なんと現在、若手女優・辻凪子さん(『温泉しかばね芸者』など)と活動弁士・大森くみこさんによって新しく活弁映画を作る企画が進行しています。それに伴って、全国でお披露目巡業を行なっており、11月14日元町映画館にもやってきます!
この公演では、メリエスの『月世界泥棒』『キートンの探偵学入門』といった古典のみならず、なんと主演・監督辻凪子さんの『ぱん。』(2017年)も上映されるんです!現代映画の活弁ver、どんな感じだろう……!
アフタートークには私も登壇予定!詳細は以下をご確認ください!

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