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意外な結末

映画「アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台」

キャッチコピーに「カンヌが笑って泣いた」とあり、コメディと思っていましたが、コメディの要素がありつつも、人生についていろいろ考えさせられる映画でした。とくにクライマックス、意外な展開へと進むのは、脚本家が考えたのではなく、スウェーデンで実際に起きた実話ベースなのだそう。
この映画の舞台はフランスです。

主人公の喜劇俳優エチエンヌは、服役中の囚人を対象とした演劇ワークショップの講師として刑務所を訪れます。エチエンヌは演技指導にやりがいを見出し、サミュエル・バゲット作「ゴドーを待ちながら」という非常に難しい演目を町の劇場で公演することを提案します。囚人たちは、長セリフが覚えられなかったり、それぞれのハンディを抱えながらもどうにか稽古を続け、公演を終えます。これは一回きりの例外だったはずが、評判を聞いた全国の劇場から依頼が舞い込んで、ついにはパリのオデオン座からオファーがくるまでに。オデオン座公演に向けて、エチエンヌと囚人たちは幕開け直前まで一致団結していたはずが、最後の最後にそれぞれの人生の分かれ道が待っていました。

アプローズ=拍手喝采

この映画を見て、意外ではなく予想していたとおりだったと感想を述べる人もいます。だって囚人なんだし、という意見です。わたしには意外でした。もともと演劇は達成感のある、社会に必要な仕事と受け止めていることと、もうひとつ、彼らの舞台をもっと見たかったというのがあるのかもしれません。
ただ、ほかの映画、たとえば「わたしは最悪。」のユリアなんかもそうだし、リアル社会もそうですが、結局、人生とは他人に決められるものではなく自分で決めていくしかないということ。一つひとつの決断が積み重なって今の人生があり、この先もつくられていくのだと改めて思う作品でした。

意外な結末で思い出すのは、フランソワ・オゾン監督の「スイミングプール」。これは見終わったあと、しばらくたっても頭が混乱して、編集部の同僚が解説してくれてやっとなんとか飲み込めたことを覚えています。
ビリー・ワイルダー×マレーネ・デートリッヒの「情婦(Witness for the Prosecution)」は、意外というより、びっくりぽん!なラスト。お見事などんでん返しがあまりにも有名ですが、結末を知ってからリピートで見ても面白いのが名作のすごいところ。
どんでん返しといえば、「カリガリ博士」。主人公の完成度の高いキャラクター設定と意外な結末は、鑑賞から何年経っても忘れられません。
話がだいぶそれてしまいました。