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『追い風ヨーソロ!』、しばしの凪


 高知県は安田町、海から安田川をさかのぼった山の中に佇む大心劇場で、2023年6月24日から30日まで公開された今作、『追い風ヨーソロ!』。あらためまして、ご来場くださった皆さま、物心の両面で応援してくださった皆々さま、公開が終ってから「いつまで(上映を)やっちゅうが?」と興味を持ってくださっていた方まで、ほんとうに、ほんっとうに、どうもありがとうございました。
今作もいったんのゴールを切り、安田町の各所に飾られていた、小松秀吉さんの筆による看板たちのほとんども、大心劇場に帰還。その大心劇場も夏休みに入って、いわば、凪のときを過ごしております。

強い日射しや風雨に耐え、劇場に戻ってきた看板たち

 凪のときに海に船を浮かべて、船上でゴロゴロしているときの、なんと心地いいことか。でも、そんな凪の時間は、次に追い風が吹くときへの備えを進めるには絶好の機会でもあります。
 とてもありがたいことに、今回の公開を経て、DVDにしてはどうか、配信してはどうか、等など、ご提案も頂戴しました。公開を終えた映画が、お茶の間(死語?)で楽しめるようになるのは一般的となったのも、ひと昔前のこと。それが一瞬にして世界中を駆け巡るような時代が到来しています。見方を変えれば、カネの匂いもしてきます(笑)。スポンサーに頼らず、手弁当で今作を創りあげた我々にとって、儲かる、儲からない以前の部分で、カネは喉から手が出るほど欲しいものであるのは事実。カネのために生きていなくても、カネがないと生きていけないのは間違いないですからね。

 でも、この『追い風ヨーソロ!』という小舟の母港は安田町の大心劇場です。これから各地の映画祭に顔を出したり、という場面もあるかとは思いますけど、必ず安田町に、そして大心劇場に帰ってきます。そのときに、小舟が中舟くらいにはなっていたいと、できる限りの備えを進めています。次回の公開は、大心劇場です。

上映の日にちが消えた大看板。次なる予定が書かれるのはいつか

 さて、この『追い風ヨーソロ!』の企画が髙松太郎の存在から始まった、という話は以前にも書きましたが、太郎だけで作品が成立したわけではありません。撮影の前、ロケハンのときに安田町で食べた野菜たちの力強さ。このときの感動も、この町を映画にしようという強いモチベーションにつながりました。比喩を陸に上げて、野菜に喩えれば、最初の公開を終えた『追い風ヨーソロ!』は、我ら7人が種を蒔き、7人が変わりばんこに、あるときは一斉に水をあげたりなんかして、ようやく土から顔を出したばかりの小さな芽。何処ぞの悪意ある誰ぞに踏みにじられたら、簡単につぶされてしまうような若芽です(そこからがしぶといぞ、という心意気はありますけど)。
やがて再び大心劇場で公開の日を迎えるまで、葉をつけ、枝をのばし、花を咲かせて、安田町の野菜のように力強い実になるように、育てていってほしいと思っています(もちろん、我々も全力を尽くします!)。

差し入れでいただいたトマト。高知の滋味

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『追い風ヨーソロ!』

【出演者】
大野仁志 我妻美緒 山川竜也 八洲承子 愛海鏡馬 豆電球

【会場】
大心劇場
〒781-6427 高知県安芸郡安田町内京坊992-1
http://wwwc.pikara.ne.jp/mamedenkyu/

【あらすじ】
1889年、安田村。唐浜では通りすがったお遍路の男に看取られながら、ひとりの女が息を引きとった。そして安田川のほとりでは安田村を離れていた兄弟が偶然の再会を果たしていた。その前に父の仇だと刀をかまえる女が現れた……。

時は流れて現在、安田町。かつての安田村にいた面々と同じ顔をした者たちが集ってくる。他人の空似か、あるいは前世か。交錯する過去との因縁。時を超えて、彼らを包むように風が吹く。

全編高知・安田ロケ、上映は大心劇場による地産地消映画がここに誕生!


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