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マフラーと彼

引きずりすぎだけれど どうか許して欲しい

初恋が実った時、
彼にして欲しいことが沢山できてしまった
そのうちの一つに女の子なら1度は憧れるであろう
マフラーを巻いてもらう
という願いも当然あった

幸いと言って良いのか分からないが、彼と付き合い始めたのは紛れもなく冬だった

毎週月曜日は彼が私を塾まで迎えに来てくれていて、
その時間が1週間のうちで1番幸せだった

当時の私は姑息だったので(今もそうかもしれない)
わざとマフラーを忘れて塾に通っていた
そう、あわよくば彼のマフラーを巻いてもらいたいから
改めて文字に起こすとなんとも阿呆な事をしている
でも恋にはそういう所があっても良いのではないか

願いは案外あっさり叶った
マフラーないの?寒くない?と言われた時
私の体温はきっと今までで1番高かっただろう
ドキドキで暑いほどだったので最早マフラーなど
必要ない状態に陥っていた。我ながら滑稽。
それでも必死に隠して寒いよ、忘れちゃったの、と。
恥ずかしい、思い出したくなくなってきてしまった

結局その後じゃあ俺の巻いてあげるよ、と
自分が着けていたマフラーを外して
向こうむいて、と言ってくれたので
彼に背中を向けた

今でも鮮明に覚えているのは
彼のバックに月が出ていて私が見ていたコンクリートにはマフラーを巻いてもらう私と巻いてくれている彼のシルエットが嘘のように、綺麗に映っていたこと。

これは余談だが、彼は身長が183cmあって
私と20cm以上の差があったので尚更シルエットだけで照れてしまうほどだった

そのままマフラーを巻いてもらって、途中で彼が強めに締めたので首が締まりかけたが 最終的には私の首に
彼が巻いてくれた彼のマフラーが納まっていた

嬉しかった、幸せだった

上手く言えないのだけれど、ただマフラーを巻いてもらったという事実だけではなく 彼が私を気遣って行動してくれたことや 私だけが特別だという想いが
私を最高の気分にしてくれた

彼との思い出でいちばん甘かったのは
これかもしれない
いや、バレンタインデーかな、

別れる時はあんなに嫌いになったのに 思い出すだけで
また好きだった気持ちが蘇ってしまう

まあいいか、もう付き合うわけじゃないんだし
浸ってもいいよね、幸せだった記憶に

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