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「乙武洋匡」という「存在」の悲哀


 4月28日投開票の衆院東京15区補選。

 出馬表明時は大本命だと思われていた乙武洋匡氏が、終わってみればまさかの5位。 供託金没収ライン(得票率10%)を超えるのがやっとという結果に終わってしまいました。

 私は今回の選挙に関して乙武洋匡氏を支持する気は一切有りません。 それが大前提では有りますが、彼を見ていると、越えられない「壁」を打破してきた彼の前人未到っぷりと、越えたが故に生まれた「周囲」との乖離。 それを承知で自らの理念に基づき前進し、最後はやっぱりズッコケる姿を見ていると胸が苦しくなる、というか、彼の「悲哀」を感じずにはいられません。

 以下の内容は私の、プロレス好きでストーリーラインを読み取ろうとするクセが抜けない私の憶測(もしくは、妄想)であり、皆様に同意を求めたいワケでもありません。「で、結局なにが言いたいん?」とツッコミたくなるようなとりとめの無い文章になる可能性が高いですが、GWの空いた時間にでも読んでいただければ幸いです。




◆日本で初めて「障がい者」の枠から飛び出した人

 そもそもですが今回の補選の顛末を見ていて、乙武氏のコトを「障がい者」という視点で皆様は見ていたでしょうか。
 勿論、彼の姿や移動手段(電動車いす)を見れば彼がハンディキャップを持っているコトは承知でしょうが、彼を語る上で議論の中心がそこにはならない。 ハンディキャップを持つ人物と承知の上で、彼の言動や過去のスキャンダルが語られる。 コレって実はかなりスゴいコトだと私は思うのです。

 「多様性社会」とは性別人種宗教、そしてハンディキャップなど、それぞれの人が持つ特徴を「個性」として受け入れていくものだとするならば、まさに「先天性四肢欠損症」というハンディを持つ乙武氏は寛容に受け入れてられる人物のハズです。 でも実際はハンディキャップを持つが故に過去のスキャンダルが批判されている。 
 つまりコレって、(逆説的になりますが)乙武氏が「障がい者」という枠から飛び出て、世間と対等に渡り合えている証ではないでしょうか。 (乙武氏レベルの大きなハンディキャップを持つ)日本人において、そこまでのポジションに行けた人というのは初めてだと思うのです。
 想像して見ると、もし彼が当選して国会に行っていたら彼のハンディキャップを考えれば歴史的な出来事になったハズですが、そうならなかった。 そして、それを望んでいる人も投票結果を見る限り少なかった。 これも結局は、自業自得。 ただそれは過去のスキャンダルだけではなく、彼自身が選んだ人生の “方向性” の(現時点における)答えだったように見えます。


◆「インクルーシブな社会」を実現するために

 乙武氏は大学在学中に著書「五体不満足」が大ヒット(←このタイトルが後に鉄板のイジりネタになるなんて思ってもみなかったでしょうね・・・)。 卒業後は教育分野で活躍する一方、タレント的な活動でメディアへの露出も続けていました。 ココで彼に、人生の選択肢がふたつ現れます。

教育分野での活動を続け子供たちにインクルーシブな社会を説いていく
タレントとして活動しメディアに露出するコトでハンディキャップに対する偏見を取り払う

 例えば②に関していえば衆院補選の際に彼へ向けられた反応を見る限り、ある程度達成されているのかもしれません。 でも今以上にタレントに振り切って活動するコトも可能だったでしょう。
 彼が放つ自らのハンディを逆手に取った、周りが対応に困るようなジョーク(例「まさに手も足も出ない」「タンスの角で小指ぶつけた」など)は唯一無二の切れ味で、そのセンスを生かしてタレントとして生きていく手も有ったハズです。(実際、彼の、とても聖者ではない奔放な言動はサブカル界隈では有名で、それを知っている人には過去のスキャンダルが出た時は「あぁ、やっぱりww」でしかなかったので)

 ただ、その世界は自身のハンディキャップを生涯 “ウリ” にしなければならない厳しい世界。 乙武氏はそれを望まなかったのでしょう。 さりとて①の教育界で生き続けるコトは現状維持が否めず影響力も限定的。 そこで彼が選んだ道は、そのどちらでもない、

③世間と対等に渡り合える存在になる

 という選択だったのでしょう。


◆「枠」を飛び越えた先で見た、現実

 「インクルーシブな社会」実現のためには、自らが「障がい者」という枠を飛び越え、「乙武洋匡」という存在そのものとして他者と渡り合って行くしかない。 そう考え「政治」という “禁断の果実” に手を出してしまった乙武氏。 しかし政治の世界は当選してナンボ。 しかも当選したところで国会議員の中の「1」議席でしかなく、実は最も没個性な世界が政治です。

 しかもその世界の住人の多くは「インクルーシブ社会」なんて端から興味の無い人間ばかり。 掲げていても小池百合子氏のような、票のために言ってるダケで裏では自分のコトばかり考えているような輩だらけでした。
 それでも乙武氏は喰らいついていき議員になれるチャンスを掴むまでになったものの、御承知のように過去のスキャンダルが暴かれて地に墜ちたのですが、それが無くとも彼が憲法をより武力を行使できる方向の改正「賛成」したり緊急事態条項の明記に「賛成」したりと、政府寄りの姿勢を見せていたコトで左派リベラル界隈からは嫌われる存在になっていました。
 私は武力行使に進む憲法改正や緊急事態条項は「反対」ですが、全ての主張が同じだという人はそうそういないし、それを求めると人との繋がりがミニマムになってしまうので、その辺りは「各論」で見た方が良いと思っていますが、とにかく世の中が “紅白玉入れ合戦” のように2チームに分けて得点を競うような世界線になっているので世間には受け入れられなかったのです。
 そして最も悲しいのは、乙武氏に近づき、持ち上げ、仲間のように振舞っていた周りの人間が、スキャンダルを起こした途端にサッといなくなり、彼は独りぼっちになってしまったコト。 頑張って頑張って「障がい者」という「枠」を飛び越えて、自らの理想実現まであと一歩というトコロで、この仕打ち。 自業自得とはいえ、哀しかったろうと思います。


◆何故あそこまで「ひろゆき」に拘るのか

よろず~ 様より引用)

 乙武氏が選挙終盤に投入した有名人が、西村博之さんこと、ひろゆき氏でした。 が、皆さん思っていましたよね。

これ、逆効果じゃね?

って。 ひろゆき氏は未だに人気が有るとはいえ、そのピークは確実に過ぎていて、最近では米山隆一氏に逆論破されるなど、彼の常套手段「ストローマン論法」が通用しなくなってきました。 
 更に言えば、最近のキリン騒動。 つまり成田悠輔こと、おでんメガネ氏が缶チューハイのCMキャラクターに選ばれた際、過去の「集団自決発言」に起因する不買運動が起きてキリンが降板させたという顛末が有って以降、「一度やらかしたコトはいつまでも掘り起こされる」流れが出来つつあり、それに照らし合わせれば裁判の賠償金問題や辺野古抗議活動への発言など、他の追随を許さないやらかしを誇るひろゆき氏に応援してもらうなんて、誰がどう考えても票に結びつかない、マイナスプロモーションでしか有りません。
 それでも乙武氏が何故ひろゆき氏に応援を依頼したのか。 それは頼れる有名人が彼しかいなかったのでしょうし、ひろゆき氏が2022年から交流が始まって以降、一貫して応援し続けてくれていたコトが大きかったのではないでしょうか。
 自業自得とはいえ周りから誰もいなくなった乙武氏。 未だ近寄って来る人がいないワケでもないが、どうにも信用できない。 現に自民党推薦を断ったら支持者が一気に減った。 結局は乙武氏も「1議席」というピースに埋まるかどうかの “駒” でしかなかったと痛感した中で、損得ナシで接してくれたのが(有名人では)ひろゆき氏だけだったのだろうと思います。
 私は辺野古基地抗議活動への、あの発言は沖縄人として本気でムカついたし、それ以来ひろゆき氏の発言が正しかろうが何だろうが全て否定しています。 先程「各論」で見るべきだと言った私が絶対的「総論」で否定すべきと定義する存在ですが、それでも他者が持つ人間関係まで否定するコトは出来ません。 なので乙武氏がひろゆき氏を呼んだコトには特に文句も無いですし、当然リスクも承知の上でひろゆき氏しか呼べない状況にまで追い込まれていたんだな、と、何度も言いますが自業自得とはいえ、乙武氏の悲哀を感じてしまうのでした。


◆それを誰かに例えるならば

OTV Live News イット! より引用)

 同じような悲哀を感じたのが、沖縄県知事選における佐喜真淳氏です。 もちろんコレも統一教会との繋がりや国政選挙への打診を受けながら県知事選にこだわった佐喜真氏の自業自得なのですが、告示前の総決起集会には自民党幹部が多数入るなど熱い支援を受けていましたが、選挙戦が進むにつれ劣勢が伝えられると「関わるのはゴメンだ」とばかりに誰も応援に入らなくなり、最後に残ったのは責任を押し付けられた小渕優子党選対本部長と佐喜真氏の御家族だけとなっていった、あの時と同じものを乙武氏に感じています。
 当然ながら私は玉城デニー氏を応援しており、何なら彼がラジオパーソナリティだった時代からファンでハガキを出していたような人間なので、佐喜真氏には一切同情していませんが、それでも、今回の乙武氏と同じく “駒” のひとつでしかなかった佐喜真氏に「悲哀」を感じてしまうのです。


 以上、どうまとめてイイかすらわからないまま書き倒してみました。 最後までご覧いただき有難う御座います。

 そのお礼、になるかどうかは分からないですが、きっと皆さまがたまに聴きたくなるあの曲を、置いておきます。 まとまりのない話をしてしまいスミマセンでした<m(__)m>




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