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選挙結果振り返り(2024 5.19投票)


 昨日投開票の選挙。 注目していた2つの市長選で衝撃の結果が出ました。 そこから見えてくるのは、

①自民維新への支持が確実に低下している
②かといって立憲が支持されているワケではなく、現在支持率が上がっているのは「反自民」の受け皿として野党第一党が支持されているだけ

と言えるのではないでしょうか。 詳しく見ていきましょう。




◎群馬県・昭和村長選挙

 3期務めた現職が立候補せず、元村議の3人で次の座を争う選挙は70歳の方が抜け出し初当選を果たしました。

 2012年に村議を辞して村長選に出て落選、2016年も続いて挑戦するも落選した方で最も政治から離れていた方なので何なら最も当選から遠いかと思っていたのですが、前回の村長選が無投票だったコトも有り「現職の次に村長になるべきはこの人」という “刷り込み” が(批判的な意味ではなく)有権者に出来ていたのかもしれません。
 加えて現職と一度村長選で戦った方なので、現村政に対する批判票が多く集まった結果ではないかと私は推測しています。


◎群馬県・昭和村議会議員補欠選挙(定数1/2人)

 村長選に立候補するため辞職したコトで空いた議席を埋める選挙です。 51歳と56歳、ともに選挙初挑戦の新人が争う一騎打ちは56歳の候補が大差で当選を果たしました。

 情報が全く無いので詳しくは分かりませんが、村議補選当選者と現職村長が同じ「堤」姓なので、もし何らかの関係性が有ったのならばそれが大量得票に繋がったのかもしれません。


◎千葉県・一宮町長選挙

 3期目を目指す現職に元町議の新人2人が挑む選挙戦は現職が2位にダブルスコア近い大差で圧勝。 3選を果たしました。

 コチラは新人候補の準備不足と投票率が前回から12.42ポイントも下がった影響も有り、現職の完勝。 順当な結果なのでしょう。
 新人候補のうちの一人は「町長給与50%カット」とアピールしていましたが、私個人としては給与や退職金のカットを言い出す人は「その分だけ仕事しないんだろうなぁ」と見ちゃう人なので、(党派性は抜きにして)そういった甘い言葉に惑わされなかった有権者に敬意を表したいです。


◎神奈川県・小田原市長選挙

 2期目を目指す自民公明維新推薦の現職に、前回544差で敗れた元職と元会社員の新人が挑む選挙は元職が現職を倒し返り咲きの4選を果たしました。

 “2期目を目指す現職” というのは基本的に盤石なもので勝利が基本。 負けたとしても接戦になるものですが、まさかダブルスコア近い大差で敗れるとは・・・
 現職は前回当選時にコロナ給付金10万円を公約に載せ、どう見ても市独自のものと思っていたのに「国の給付金10万円のコトだった」という豪快なちゃぶ台返しを披露したコトで有名。 選挙直前でも地元紙が新情報を見つけて追及するなど蒸し返されたりしていましたし、統一教会との繋がりが指摘され選挙期間中に “狙われた候補は落選する” と言われる鈴木エイト氏が取材に来ていたり、ポスターのデザインが最悪だったりと候補者個人の敗因も有ったとは思いますが、とはいえ腐っても現職。 こんな大差がつくハズも有りません。 このような大惨敗となったのは自民が河野太郎氏や小泉進次郎氏など国会議員総動員で応援したコトがマイナスに作用したとしか思えません。 ただでさえ負ければ国政に影響が出ると見られていた中でこの大敗は・・・
 まさに自民の支持低下は小手先の手段では回復できないレベルにまで堕ちているというコトを、いいかげん自覚しなければいけないです。「パーティー券の公開は10万未満はナシで」なんて甘っちょろいコト言ってる場合じゃないと思いますよ。

 そしてわざわざそれに付き合って負けがついた維新も維新。 藤田幹事長になってから関西以外の地方選挙でも勝てるようになりましたが、万博問題から始まる党のズンドコっぷりに手腕が鈍ってきたのでしょうか。

(統一地方選後の関東ブロックにおける維新候補戦績)
(クリックやタップで拡大してご覧ください)

 首長選でいえば昨年の海老名市長選でも推薦候補が敗れましたが、その人は新人であり同日に行われた市議選のための “かかし推薦” だったコトは明らかだったため今回とは状況が違います。 馬場代表の「第二自民党」発言以降自民寄りの姿勢が目につきますが、そろそろ方針(もしくは党執行部)を変えないと大阪万博から始まる維新の凋落傾向に加速がかかってしまうかもしれません。

 では元職を当選させたのはどの党かと言われれば、共産は自主支援していましたが目立たないようにしていたようですし、立憲は2021年の参院選における “選挙期間中の” 候補者一本化騒動に端を発したゴタゴタが続き、今では県議会で6会派に分裂するという体たらく。 最大会派の県議が現職を応援する中で地元選出の県議が元職応援に入り、結果当選したコトでこの選挙における最大の勝者は、この立憲県議なのかもしれません。
 と、いうワケで、杉尾参院議員などがこの選挙結果を引用して自民の凋落をアピールしていましたが、決して立憲が勝ったワケではないというコトは書き加えておきます。 変に立憲やその支持者が勘違いしないためにも。

 そんなこんなで元職は現職の失点と自身のイメージの良さによって当選したと思われますが、返り咲きとはいえ今回で4期目。「多選」のフェーズに入ってきましたので注意が必要ですし、何より「チーム日本」「日本列島100万人プロジェクト」といった “反ワク系” の関係者が応援しており自身も「ワクチンはもう打ちたくない」と発言したとされる情報も目につき、コロナ禍中に市長ではなかったコトも有り、医療衛生関係が変な方向に行かなければイイな、と願うばかりです。


◎奈良県・香芝市長選挙

 2期目を目指す立憲維新国民民主推薦の現職に前回476票差で3選を逃した元職、更に共産党地区委員長の新人と元奈良市議の3人が挑む選挙は、元奈良市議が現職と元職が争う間隙を抜いて初当選を果たしました。

 繰り返しますが “2期目を目指す現職” というのは基本的に盤石で他は立候補に躊躇するもの。 それが元職は未だしも新人が2人も出るというのは、現職が何かしらの理由で「危うい」要素が有ると考えられ、調べるとスキャンダルめいたものが見つかりましたし、小学校の統廃合が問題になって推進の現職に対して新人3人とも反対という構図だったため、現職が不利な要素は確かに有りました。
 とはいえ知事を誕生させた維新の推薦を受けて知事も応援に入っており、知事もメガソーラー問題等で悪目立ちしていますが、高齢多選の知事を破って誕生した知事だけに県内の支持は悪くないとのコト。 それで落選してしまうというのは、やはり立憲との相乗りという形が嫌われたとしか思えません。 先だっての衆院補選において馬場代表が「立憲を倒さなければならない」などと放言していたのにココでは相乗りかよ! と見られてもおかしくないでしょう。 とかく「改革」を訴える維新が故に、旧態依然とした振舞いを少しでも見せると嫌われるという党のキャラクターを見失うと、かくももろいと言えるのではないでしょうか。

 自民は今回自主投票だったようですが、元職に対し自民奈良県第二選挙区のスタッフが応援に入っていたり高市早苗氏から為書きを貰ったりしていましたが、実質的な一騎打ちだった小田原市長選と違い “第三の候補” が出ると厳しい部分が有ります。 そもそも支持されているのならば前回負けなかったハズですからね。

 その争いを抜けて当選した元奈良市議。 政党推薦を受けず香芝市で議員経験は無いものの義務教育を香芝市で受けていた(出身は大阪市)コトと35歳という若さが当選できた要因なのでしょうが、市議会の議長が参謀として全面支援したコトで他自治体の議員や(どこでも顔を出すでお馴染み)片山さつき氏から為書きを貰ったりと広範囲からの支持を得ていたようです。

 ただ、市議会議長は元自民→元維新の人で、奈良県内の維新で揉めて離党(その時に元奈良市議も追随した模様)し、現在は維新のノリを無所属でやっているというタチの悪い人。

 この議長が(名指しせずとも明らかに)共産市議に向けた発言を共産市議が抗議したコトに対し「侮辱、名誉棄損だ」として陳謝や出席停止など計6回もの処分を出しているコトから見て議会で大きなチカラを持っているのは間違いなく、そこと市長が強く繋がるとなると反対意見を出しにくい議会、市政になりそうな雰囲気がプンプンします。 有権者にここまでの構図を見て投票しなければ、とは言いませんが、この先が心配です。


◎奈良県・香芝市議会議員補欠選挙

 昨年県議選に出馬(当選)した自民系市議の議席を維新公認の新人と一級建築士の新人2人で争う一騎打ちは、維新公認の候補が接戦を制し初当選を果たしました。

 一級建築士の新人はいわゆる “意識高い系”。 選挙カーによる運動や名前の連呼などに抵抗を感じ「選挙カフェ」と称したスペースを作り、そこで市民と語らうという異色な選挙運動を展開。 しかも選挙期間中に相手陣営の選挙事務所を訪れ、そこのスタッフと語り合うという異例の行動を取り「自分の中で欲しかった、ひとつのゴールに達した感覚はあります」とまで書いていた人に対し、奈良県知事を誕生させた維新の公認候補が360票差まで迫られるというのは、異常です。 市長選に当選した候補に政党色が薄い(薄く見える)ので、その流れにヤられちゃったのかなという気がします。

(統一地方選後の維新候補戦績)
(近畿ブロック ※大阪を除く)
(クリックやタップで拡大してご覧ください)

 先週、同じ奈良県の宇陀市議選で落選時無所属の候補に公認を出して当選させたコトが有ったので、この結果を以て関西圏における維新の支持が落ちている! とは言えないと私は見ていますが、大阪万博の体たらくが報じられ始めた昨年夏以降から始まった支持低下が一段加速したコトは否めないでしょう。

 現状絶賛内ゲバ中のようですが、そんなコトしてる場合じゃないと思いますけどね・・・


◎広島県・安芸太田町議会議員補欠選挙(定数1/3人)

 いわゆる「河井夫妻買収事件」で有罪が確定し失職した市議の穴を埋める選挙で、5回目の選挙挑戦で初当選を目指す新人と元JR西日本職員の新人と元消防職員の新人の3人で争った結果、元消防職員が元JR職員を振り切り初当選を果たしました。

 情報は有りませんが、5回目挑戦の人がまず選択肢から外して2候補を見ると元消防職員が元JR職員より9歳若いのが要因のひとつに見えます。


◎鹿児島県・大和村議会議員選挙(定数8/9人)

 奄美大島の村で現職7人新人2人が立候補した全員無所属の候補が争う “定数プラス1” の選挙は、上から現職7人が並び当落線上を新人で争い若い方が当選しました。

 最下位の新人が断トツで票が獲れていないトコロを見ると、当選した新人は今期限りで退任した現職と居住地区が同じ、実質的な後任候補で落選した新人は無投票になるのを憂いて出馬した、(村民から見れば) “空気の読めない人” なのかなと勝手に見立てていますが、こういう構図をこれまで何度か見てきたので当たっているような気がしています。
 結果、殆ど何も変わらず、と。 そして大和村は少なくとも21世紀になって女性議員はおろか女性候補すら出ていないため、男まみれの議会という構成も変わらず、と。 男性議員が後継に女性を指名しない限りこの形は続くのでしょうね。 寂しい限りです。



以上です。
当選された皆様の御活躍をお祈り申し上げます。


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