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【書籍紹介】マルチの子 西尾潤著 「NFTの95%は無価値」のニュースと不都合な真実について

今、NFT界隈では「95%のNFTは無価値」という話題で賑わっています。dappGambl社の調査結果が発端。

「Dead NFTs: The Evolving Landscape of the NFT Market(死んだNFT:NFT市場の進化する風景)」と題した新しいレポートの中で、7万3257のNFTコレクションのうち6万9795が、ビットコインに次ぐ仮想通貨であるイーサ(ETH)において、ゼロ・イーサであるとの調査結果を示した。つまり、NFTの95%が、今日1円の値もつかないというのだ。NFT元年と言われた2021年には170億ドル(約2兆5000億円)もの取引高を誇ったものとしては惨たらしい暴落だが、レポートでは、現在も2300万人が、実用的な用途も価値もないこれらのトークンを所有していると推定している。

それを報じた大手メディアローリング誌の記事に対して賛否が巻き起こったというもの。

以前、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)に学ぶナラティブ力」というnote記事を公開しましたが、下記の通り、お猿さんを表紙にするくらい同誌はNFT推しでした(笑)。

「手のひら返しが過ぎるだろう」ということですが、メディアとはそういうものです。言っても詮ないことです。

NFTには、「アートとして価値のあるもの」「コミュニティーのパスポートとして価値のあるもの」「独自のユーティリティを提供するもの」等もあり、十把ひとからげに論じる訳にはいきません。が、NFTバブルは「自分より高値で買う人が居るであろう」という美人投票理論(別名、大馬鹿理論とも言う)によって作り出されたという点は異論の余地がないかと思います。

けんすうさんも「NFTを何だと思っているか」で反応が違うと解説されています。

そこで、ふと、以前読んだ「マルチの子」というマルチ商法の地獄に落ちていく様子を描いた書籍を想い出しました。

市場参加者が増えれば、資産価値が上がり、先住者が潤うという構造が、マルチ商法の「自分のダウン(配下)が増えれば、アップとしての自分が潤う。そのポジションを維持する為に過剰投資を行い破滅に向かう」という構造が似ているのではと。

ビジネスモデルは全く異なりますが、参加者の心理に共通するものが多い様に感じます。私自身はマルチビジネスの経験はないので、あくまで書籍で学んだ範囲での話。

これを読んだのは2年ほど前で、まだ、私自身が仮想通貨やNFTに触れる以前。実は、この書籍にブロックチェーン、ビットコイン、サトシナカモト等が登場し、マルチを装った詐欺が展開されます(※マルチ自体は詐欺ではありません)。

そこで展開される手法は、取り込み詐欺の応用版。仮想通貨に限らず、投資の世界では昔からある王道の手口。最初の数回は高利回りの配当金が分配され、ある日突然、音信不通となり元本回収ができなくなるというもの。

「マルチの子」は、作者の実体験に基づいて書かれた限りなくノンフィクションなので、リアリティーが半端なく、ぐいぐい引き込まれます。

出典:西尾潤さん「マルチの子」インタビュー 文春オンライン

同インタビューで「マルチは研究熱心でまじめな人ほどはまりやすい」というのもNFT投資と似ているなと。

マルチ商法(マルチレベルマーケティング)自体は、広告費のいらない効率的なマーケティング手法であり、仕組み自体に罪はない。

実際は、そこに内包された「人間の欲望を刺激する仕組み」「承認欲求を満たす仕組み」に飲み込まれてしまって、破滅に向かう。ということが本書及び著者インタビュー記事を通じた学び。

少数の真に勝ち抜いた人は良い思いができるのでしょうが、多くの人は死屍累々となっていく。。。

最後に、私自身のポジションを述べておきます。NFT投機バブルが起き、それが崩壊し、多くの人がネガティブな印象を持ってしまったことは事実。一方、NFTは新しい技術であり、「投機」はその一側面に過ぎない。ここからが、真の社会実装を目指したスタートラインと思っています。

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