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「パルコが全て生成AIで制作した広告公開」に対するモリプトさんの論考が鋭い

まずは「全編AIで制作」と謳われている動画をご覧ください。

これだけ見ると、「AIスゲー。ついに、ここまで来たか。もう、広告代理店はいらなくなる」という短絡的な話が出て来そうです。

私がnoteを通じて交流させて頂いているモリプトタツヤさんが、本件に関し鋭い論考を展開されているのでご紹介させて頂きます。

今回のパルコの広告映像は「全てを生成AI技術を用いて」と謳われていますが、映像まるごとシーンごと生成AIで出力したのではないと思います。個々の画像をプロンプトで生成して、全体を1本の広告動画にするのは人間の手作業による編集が入っているはずです。

「全て」が人間が全く編集で手を入れていないように伝わるのは大げさかもしれません。PARCOのロゴは既存のグラフィックを使ったと思いますし、時系列編集は手作業の部分もあると思います。

生成AIで作った画像をPhotoshopで加工したらそれは「生成AIで作った」と言えるのか、どこまで加工したらAI製とは言えなくなるのか、など、堅いことを言えばキリがありません。

おっしゃる通りで、プロンプト技術に長けた職人が、プロンプト入力しただけで、これが自動生成された訳ではない。実際には、著名なデザイナーが関わり、相応の手間とコストがかかっている点が重要。

こういう打ち出し方をして露出拡大に繋げているPARCOは上手だなとは思いますが、抜本的なコスト省力化/コスト削減には至っていないと理解すべきです。レンポジ(レンタル画像)活用の進化版といった感じでしょうか。

私もFlikiというAI動画生成ソフトを活用し、何本か動画を制作しましたが、結局、編集で完成までに3時間ほどかかりました。

3時間かけてつくった動画がこちら。

モリプトさんが後段で書かれている「パッケージデザインAI」に関する論考も興味深いです。

生成AIの活用に熱心な伊藤園が使っている、プラグ社の「パッケージデザインAI」は、パッケージデザインを画像生成AIがデザインしてくれることが真の価値ではありません。

生成されたパッケージデザインの画像がコンビニなど店頭で並べられた時、他社の商品より目立つか、手に取ってもらいやすいかをAIが判定する「評価AI」の存在がとても重要です。

パッケージデザインAIは評価AIの評点が高いものを出力しようとします。そして最終的に商品に採用するデザインは、AIのつける点数を基準に選ばれるようになります。

従来デザイン評価を目的に実施していた消費者調査をAIに置き換えることで時間とコストの削減が可能。ただし、デザイン生成自体をAIで置き換えられる訳ではない。

私も1年半前に、同じような視点で記事を公開しています。当時からは技術革新が進み、AIでできることは格段に進歩はしているでしょうが。

モリプトさんは、最後、以下の未来予測で結んでいます。そして、これが実現した世の中は、いよいよ人間が不要になる世の中なのかも知れません。

今回のパルコの広告映像は、映像制作者をAIに置き換えたものです。しかし、この向こう側にはクリエイティブディレクターのAIへの置き換えが待っているはずです。

芸術作品は誰が作ったかが重要ですが、ほとんどの商用広告は誰が作ったかを謳っていません。また、有名なクリエイティブディレクターはAIの学習元となり、本人稼働なしで収益を上げるようにもなるでしょう。

クリエイティブディレクターのAI化とクリエイターのAI化がセットになった時、生成AIは完成します。


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