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コナン22巻を読み返してみた(コナン深読みの流儀)

とりあえず、コナンの22巻をひっぱり出してきた。

何故22巻か?というのは、今年の映画『100万ドルの五稜星』を観た方は分かると思います。でも大丈夫。この「22巻」という巻数を言うだけならほとんど全くネタバレにはならないので。むしろ何も知らずに22巻だけ読んでそれから映画を観に行くのも楽しいと思います。

さ、今日はこの22巻を使って、コナン深読みを嗜んでいこうと思う。


とはいえ。

ここから先は、巻の「内容」に触れるので、さすがに映画に関するネタバレ要素がでてきます。なので、映画を観ていない方はぜひ映画を見てからお読みください

それと原作をいずれ読むつもりの方も、22巻自体のネタバレを多分に含みますので、そこのところもご了承ください。















(以下の画像は全て『名探偵コナン』22巻からの引用です。)


22巻、これです。「北斗星」の事件がのってます。

そう、映画にも登場する、北海道警の西村警部が登場するお話ですね。

そういえばこの西村警部と一緒にいる若い刑事さんは、今回の映画には出てきてない

で。問題は。

この西村警部、いくら北海道のお話だからといえ、1999年に発売されている22巻から(アニメも1999年放送)、飛んで105巻が最新刊で発売されている2024年急に映画に登場したわけですから、どうしても不自然さを感じてしまうじゃないですか。やはり。なので引っ張りだしてきたわけですよ、第22巻。(というか1999年の時点でこれだけ絵が仕上がってる青山先生、ほんとすごいっす)

・・・と書きながら調べていると、2004年の『銀翼の奇術師』には声なしで絵だけ登場しているよう。ぐ・・・覚えてない。でも確かにあれも北海道の話だなあ。でも声なし出演だし、映画何回も観てる私ですら覚えてないくらいだから、そんなに重要ポジションとしては出てきてなかったはず。(だよね?)

話を戻します。映画なのだからこの西村警部ポジションのキャラはオリジナルキャラでも良かったはずなんだ。でも敢えて原作の22巻から持ってきた。その理由を深読み含めてメタ視点でいくつか考えてみました。


「川添刑事」を立たせたかった。

これは映画を観た方は説明なしに理解いただけるでしょう。川添刑事は今回の映画にてゲスト声優の大泉洋さんが声を当てているキャラクターで、いかにも怪しい裏の顔を持ったキャラクターとして描かれている。そして実際とんでもない裏の顔を持っている

この警察関係者が二人とも「怪しい」となると推理がとっちらかるので、ひとりはすでに怪しくないことが明白な人物を置いた、という理由。

うん。あると思う。とはいえ…、キッドが登場する話ということで「キッドの変装」という飛び道具がある手前、この理由ひとつでは説明がつかない。

「工藤優作」を話題に挙げたかった。

これもめちゃくちゃあると思う。今回の映画のエンディングの大ネタのフリとして「工藤優作」、彼を話題に挙げる必要がある。そのために西村警部は用意された。

この理由のすごい点は、若干の不自然さがあるとは言え、一応違和感なく工藤優作が序盤に物語へ登場させられているところ。もしかしてこれがしたくて舞台が北海道になったのではないか?卵が先か鶏が先か。

そして何より、22巻を手に取ってびっくりする。

イケメン

背表紙の鍵穴キャラが工藤優作!!!!

工藤優作は初登場は第5巻。それから何度か登場した後の22巻で満を辞しての鍵穴キャラ。たしかにこの北斗星事件は、工藤優作のキャラクターらしさ全開の物語ではある。

でも。それでも。
ここで被せてくるのすごくない???どこまでが計算なんですか?と問わずにはいられない。

この自己紹介コマも格好良い。息子みたいに「探偵さ」とか言い切らないとこがかっこいい

これまでも散々意味ありげなムーブが多かった工藤優作だが、今回の映画でさらに「工藤優作に注目せよ」というメッセージが強まった気がする。

「北斗星事件」に注目させたかった。

さあここから度が過ぎた私の深読みが始まりますよ。でもこれがコナンの楽しいところなんだ。

まず北斗星の事件はかなり面白い。コナンの中でも屈指の名作ミステリーだと思う。なので読み返すに値する物語であるのは間違いない。

なのだが。単にそれだけでなく、キーワードが多いことに読み返して気がつく。とは言え全て、根拠のない私の「深読み」なのでその点ご留意ください。

「十年前」に何があったのか

「古美術店」にも何かあるのか?と思わずにいられない

この事件の発端は「十年前」である。『名探偵コナン』のなかで工藤優作の過去が描かれている物語というのは数が限られるが、この10年前頃に何かが起こっていたのではないか、と予感させられる。

というのも10年前ということは、新一は7才頃。

この若い頃の優作さんめっちゃ好き。髭生やしてない頃。

この新一が6〜7歳頃のエピソードというのは時々出てくるのだが、その中で今回の映画を観た上で外せないのが、第55巻の工藤優作と黒羽盗一の間になんらかの関係があることが発覚した物語。この物語の時期も、新一と蘭が小学1年生のエピソードなので、10年前

どう考えてもこの「十年前」あたりに何かあったようにしか思えないのだが・・・果たして?

なぜ「未だ発表されていない」?

「未だ発表されていない父さんのあの小説」というのも気になる。そもそも一度は出版社の編集の手にまで渡っていたのに。1999年時点の10年前なので、手書き原稿だったため原本1部しかなかった?とも考えられなくはないが…。

とにかく原作では結局何故「発表されていないか」が明確にされていない。途中、トリックに欠点があるからという理由で片付けられようとしたが、結局嘘か本当か、「あれはフェイクだよ」と本当のオチは別にあると語られている。

そのウインクの下に何を隠してるんだ!父さん!

そもそもだな、この(↓)「トリック忘れた」という設定どこいった??

新一に「あの男」呼ばわりされる優作

しかもこれ以前も以降も工藤優作の有能振りを鑑みるに、「トリックを忘れる」なんてことをするキャラクターではないはずなんですよね。これは、「意図的に」発表していないと深読みしたくもなります。

「探偵きどりの若い男」という存在

この北斗星事件で、やたらと印象に残る描き方がされている「探偵きどりの若い男」。この事件においては、小説上の探偵役でその状況が今のコナンと似ているという話で方がつくのだが、妙にこのコマ、印象深くありませんか?

どことなく新出先生に似てる

もちろん、必要以上に意味深になってしまってる、ただこの事件に関するだけの存在だ、と片付けることもできるのですが。

私のような記憶力のない人間でも、105巻まで読み続けていて、未だにこの22巻という序盤のこの小さなコマに描かれたこの「探偵きどりの若い男」のことが頭の片隅に残っているのです。

ちなみにこのオチも気になる。犯人は死んじゃう予定だった、というもの。

笑顔で怖いこと言う優作さん

けれども実際はこの小説通りにならず、犯人は無事警察に出頭。なので探偵気取りの男(コナン)の死と、犯人の末路だけは小説通りにはいかなかった。・・・ことに一応なってるけど?

工藤優作の小説といえば、『闇の男爵(ナイトバロン)』シリーズが有名作。今回の映画でも「ナイトバロンシリーズの新作」というワードが登場している。そしてもう一つがマカデミー賞で脚本賞を受賞した『緋色の捜査官』。これはどうやら赤井秀一がモデルの物語らしい。

ではこの「探偵きどりの若い男」とは?
もちろん他のシリーズや短編だって多く書いているだろうと片付けることも簡単だが、それでも。ここまで伏線を張りまくる『名探偵コナン』で100%のスルーはし辛かったりする。

やはり最近の工藤優作の動きを見ていると、色々分かった上であえてやってるところがあるような気がしてならない。つまり黒の組織に関することだとか優作の読みの範疇で、新一(コナン)が踊らされている構図をどうしても思い浮かべてしまう。この小説のように。

「籏本グループ」が気になる

そもそもコナンたちが北斗星に乗った理由というのが、籏本夏江という人物に招待されたため。籏本グループという家系に属する一人である。

「籏本」という珍しい苗字も気になるポイントだったりする

彼女自身は家族のしがらみから抜け、夫と北海道で悠々自適な生活を送っているのだが、この「籏本グループ」は気になる存在である。

そもそもこの元になった事件は第3巻に掲載されていて、そこから22巻に飛んで唐突にこの手紙である。結構不自然ではないか?

もちろん行きがかり上コナン達を北海道行きの列車に乗せるため、「北海道」というキーワードで連想される過去の登場キャラクターが籏本夏江しかいなかったから彼女を利用しただけとも取れるのだが、だがしかし敢えてここまでコマを使って再登場させる必要はあるのか・・・。しかも結局事件が起こり電車が停車したせいもあり、コナン達が北海道に行ったその後は一切描かれていない。

そしてその元になった第3巻の事件というのは、毛利小五郎が初めて「眠りの小五郎」になった事件でもある。

コナンのジト目

加えて、籏本夏江ではないが、この籏本グループの人間が第16巻にも登場している。それはなんと怪盗キッドの初登場事件だ。今年の映画を発端に、22巻の北斗星事件に辿り着いた人にとっても、遡るとどんどん物語が繋がっていく楽しい構図になっているのがすごい。

「籏本グループ」はこの22巻の北斗星事件以降すっかり音沙汰がないが、もし今後ひょっこり出てこようものなら鳥肌ものである。しかしそういうことをやりかねない、それが『名探偵コナン』だったりもする。

列車で起こる事件といえば

これは単なるこじつけ。でもどうしても書いておきたかった。

やはりミステリーというとクリスティ、そのなかで列車というと『オリエント急行殺人事件』。そしてちょうどこの第22巻の名探偵図鑑も西村京太郎の作品に登場する十津川警部だったりする。

そういや大泉洋さん演じるススキノの便利屋が載ってた巻もあったっけ

ミステリーと列車というのは切っても切れない関係にある。

とはいえこの北斗星事件からどうしても連想してしまう事件がひとつある。第78巻の「漆黒の特急 ミステリートレイン」。ベルツリー急行で起こる事件の物語だ。この話、組織に関わる重要な物語であることはもちろんだが、工藤有希子が変装して乗客に紛れ込んでいるという設定が、この第22巻の北斗星事件を思い出さずにはいられない。・・・とはいえこの事件以外でも変装した有希子がコナンの周りに現れる物語は他にもあるのだが。

そして本当にこじつけでしかないが、今年の映画で、函館の運輸所に停車している電車の車内でキッドとコナン・平次の3人が事件について話す場面があるのだが、あれを見ていて「これ電車内である必要ある?」と思ってしまったのは私だけだろうか…。もちろん絵になるから、で片付けられる話なのかもしれない。電車には詳しくない私だが、軽く調べたところ函館運輸所はかつて北斗星が配置されていたこともあるようだ。うーん。

それから博士と少年探偵団がわざわざ新幹線で来たのもねぇ・・・と言いかけて気が付いた。今、函館内(北海道内?)をコナンのラッピング電車が走ってるらしいので、これは本当にただの「大人の事情」ってやつなのかもしれない(笑)

でも考えずにはいられない。こういうのが楽しい。

「22巻」に注目させたかった

最後はおまけ。メタ的な話です。

22巻は、鍵穴キャラが工藤優作ということに加えて、
北斗星事件の直前には、平次と和葉が登場している物語が掲載されています。このあたりの二人の関係性を読んだ上で今年の映画を思い返すと、なかなかの進展ぶりにどきどきしてしまいます。とはいえ連載で言うと一体何年かかってるんだとツッコミたくもなるが、そこはぐっとこらえて…。

蘭が平次と和葉をひっつけようムーブをしてるのも、この頃からずっと変わらず。この話では二人にお揃いの服を着せてみるもチャレンジ失敗。

この頃の恋心というものに全く気付いてない平次いいよね

というかこの頃はまさか平次と和葉より、新一と蘭の方が先に付き合うことになるなんて誰が予想できただろうか!絶対に平次と和葉の方が先だと思ってたよ。

和葉の、事件解決につながるような鋭い直感もこの頃から健在。

今年の映画も、重要な手掛かりに気付くのは和葉

ついでに言うと、コナン(新一)が指で数字を数えるときに、ヨーロッパ式の数え方をしているのもすでにこの頃から見られる。

コナン君、パーカーインでサスペンダーしてるの可愛い

今回の映画でもスマホ持ちながら「3」の指数字してましたね。持ちにくいやろそれ、とつっこみたくなったけど。

どうしてコナン(新一)がこのような数え方をするかの理由が明かされるエピソードなんて…一体何話でしたっけ。すくなくとも22巻からは大分先ですから。こういうキャラクター設定の緻密度には感服です。

調べてみた。

直近だと、91巻で「ヨーロッパではこう数える」という話題が登場、その後93巻で「フランスかぶれのお母さんの影響を受けた誰かさんの仕草にそっくり」という灰原の台詞が登場している。

それ以前もぱらぱら遡ったがしっかり言及されているのはここまでなかった気がする…のだけど、もっと昔に見聞きした気もするんだけどなぁ。私が見落としたかアニメか映画でそのエピソードがあったか…?

もちろんコナンや新一がこの指数字を使っている絵はたくさん出てくるのだけども…。

ちなみに私も小さい頃からコナンにかぶれたおかげで、指数字はコナン式を踏襲している。特に「3」「4」あたりはコナンと同じポーズでやりがち。

とにかくコナンはこういう、とんでもなキャラ設定や繋がりが105巻という時を経てたくさん出てくる。

なので新しいエピソードが登場した上で、新たな視点で以前のエピソードを読み返したら全く違う視点で話が読める、ということが頻発する。

さて第22巻を例に私流コナン深読みの流儀をお届けしてみました。次はやはり55巻ですかねぇ。

まったく、これだからコナンはやめられない!!!

お願いだから結末まで見届けさせてください!青山先生!


▼映画本編の感想はこちら


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