読書感想/『夜間飛行』サン=テグジュペリ
サン=テグジュペリを読もう(個人的)月間!
『星の王子さま』『人間の土地』に続きラストこちら。
▼『人間の土地』感想はこちら。(ほぼ名言の引用ですが…)
『夜間飛行』は、
標題の『夜間飛行』と『南方郵便機』の2編の小説が1冊になった新潮文庫版。
『人間の土地』で、彼の読みづらい文章には一通り慣れたつもりだったのですが、
やはりこちらの2作品もなかなか苦戦しました。ちびちび読み進めながら、結局読み終えるのにい1ヶ月弱かかったような気がします。
特に『南方郵便機』。
『夜間飛行』は航空会社の支配人リヴィエールという、地上にいる人間の視点があるおかげか、まだ幾分か読みやすかったのですが。
『南方郵便機』は本当に読みづらい。もしかすると、サン=テグジュペリが書いたという事実がなければ、早々に諦めて放置してしまったかもしれない。
訳者・堀口大學氏のあとがきで
とあり、首がもげるほど同意しました。
そうか。こういう作品を「精読を要求する作品」と表現すれば良いのか。と感心したりもした。
『夜間飛行』は、繰り返しになりますが、支配人リヴィエールという地上にいる人間の視点があるため、作者サン=テグジュペリの視点である独特で強烈な飛行機乗りたちの死生観を、すこし客観的に捉えることができます。
またそんな飛行機乗りたちを従え統制しなければならない苦しさも分かりやすく伝わってきた。
これは『人間の土地』を先に読んでいたおかげもあるかもしれない。もし順番が逆だったら、『夜間飛行』ですらすでにくじけていたかもしれない。
以下、印象に残った箇所をいくつか引用。
気に入った言葉を付箋していたところを拾い集めてみたのですが、
これらの言葉は全て、リヴィエールが発言したものでした。
もう一人ファビアンという飛行機乗りの視点からもこの物語は描かれているのですが、やはり私自身リヴィエールの側に共感を寄せているらしいことがこのことからも分かります。
リヴィエールは、これらの言葉を強い口調で語るのですが、内心にとても大きな揺らぎがあることも分かって、まるで自分に言い聞かせるようにこれらを語っているのが、なんとも胸にくるものがあります。
『南方郵便機』の方は、なぜか漠然とゲーテの『若きウェルテルの悩み』を思い出しながら読んでいました。
この物語のまとっている空気感なのかなんなのか…そう感じさせられました。
そしてその雰囲気の余韻のなか、具体的な内容は印象に残らないまま、ただ不思議な魅力に惹きつけられて物語が終わった、そんな印象。
おそらく、堀口大學氏の仰るように「精読」をすれば、かなり見えてくる景色が変わるとは思うのですが、なかなか「では、もう一度じっくり読もう」とはなりにくい・・・。読むのに大変苦労する物語です。
いつか、いつの日か、という気もしますが、なかなかどっしりとこの本に向き合う気分にならなければ、難しい。
ただしもし読み込むのであれば、ある程度若いうちに読まなければという焦燥感も感じつつ。今はとりあえず、本棚にしまいこんでおこうと思います。
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