読書感想/『奉行と人相学』菊池寛

最近、「見た目で人を判断する」みたいな昔の当たり前な感覚に触れるのが好きでして。

今はそういうのダメっぽい空気感あるのは分かってるし、事実そうだと分かりながらも、とはいえそういう感覚に共感してしまう自分もいるのが事実でして。

 大岡越前守は、江戸町奉行になってから一、二年経った頃、人相と云うことに興味を持ち始めた。
 それは、月番のときは、大抵毎日のように、咎人の顔を見ているために、自然その人間の容貌とその人間の性格とを、比較して考えるようになったのである。
 が、大抵の場合、人殺しや、強盗は凶悪な面構えをしているし、かたりすりは、ずるそうな顔をしている。
 が、折々愚直そのものと思われるような男がずぶとい悪人であったり、虫も殺さないように見える美人が、亭主を毒殺などしている。そうして見ると、愚直そのものと思われる顔にも、どこかに根ぶとい狡猾性がひそんでいなければならないし、虫も殺さないような美しさの中にも、人に面を背けさせるような残忍性が、ひそんでいなければならない筈である。
 そう云うものを見つけるには、人相学と云ったようなものを、研究しなければならないのではないかと考えていた。

青空文庫『奉行と人相』より

この入りがもういいじゃないですかー。

こういう前提が置かれてから始まるんですよ。

なんかしびれません?

ここから始まるストーリーは、人好き好きというか(正直私的にそこまではまらなかったのですが笑)。

もうこの序文が好きですね。ここだけでお腹いっぱいです。

こんな楽しみ方もまた一興。

▼こんな自分では見つけられない作品に出会えてるのは窪田等さんの朗読さまさまです

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