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緻密な仕組みがあるからこそ、失敗を恐れずチャレンジできる

大きな夢を抱き、
リスクを恐れず突き進め。

がむしゃらにやれ。一か八かに賭けろ。

それが起業家だ。成功者だ。

なんてことばかり言って、人を焚き付けようとしてくる人がいたら、怪しいと思って当然です。

成功はそんなに単純に訪れるものではありません。

おいおい、前回「成功の糸口はいつも目の前にある」って言ってたじゃないか、と思うかもしれませんが、それも真実なのです。

大きな夢を見るのも、がむしゃらな努力をするのも、素晴らしいことで、まったく否定しません。そして、成功への道は必ずあります。

ただし、なんのプランも策なく「何かでかいこと」を「がむしゃらな努力」によって達成しようとするのはおすすめできません。

成功者は、決してギャンブラーではないのです。
(カフェイン中毒者ではあるかもしれませんが笑)

今日は、起業家にとって大事な「リスクとの向き合い方」、とりわけ「守りの仕組み」の話をしたいと思います。

<戦略的であるということの意味>

前々回の記事では、『ONE PIECE』のルフィーを引き合いにして、仲間集めの話をしました。

どんなリーダーの元に信頼できる仲間が集まるのか?

それに対する回答とにして、「足が震えるようなでかい夢を掲げて、命を賭けるような覚悟で毎日を生き」「何がなんでも事業を伸ばす。寝る間を惜しんででも、存続させる」リーダーである、と書きました。

このような意味で、リーダーは間違いなく大志を掲げる夢想家であるべきですし、がむしゃらに働く人間であるべきです。

しかし、それは戦略的であること、つまり賢くあることを無視していい理由にはなりません。

起業家は、創り出したい世界のために貪欲であるべきで、「毎日死ぬ気でがんばってる俺って、かっこいい」とうぬぼれるためにエネルギーを割いている時間はないのです。

では、戦略的であるとは、どういうことか?

「戦略家のための戦略家」とも呼ばれる世界的な戦略論・経営理論の権威リチャード・ルメルト氏の言葉を一つ引用させてください。

良い戦略は、困難な課題を乗り越える現実的な方法を示す。戦略目標がそもそもの課題と同じくらい歯の立たないものだったら、戦略を立てる意味はない。

『良い戦略、悪い戦略』

彼のいうように、困難なこと(ビジョン・ミッションは壮大なものでいいのです)を現実的にできることの積み重ね・組み合わせで可能とするのが戦略です。

勝算もないのに「死ぬ気でがんばれ!」とだけ言い続けていいのは、従業員がゾンビの会社くらいなものです。

<成功者は向こう見ずなギャンブラーではない>

繰り返しになりますが、
成功者は決してギャンブラーではありません。

現実として、他人に「死ぬ気でリスクに飛び込め」と言っている人だって、当人はリスクをうまくコントロールしていることがほとんどです。

図抜けて成功した人たちは、
頭のおかしいリスクテイカーではないのです。

むしろ、成功を収める人は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、別の部分ではことさらに慎重に守備を固めバランスを取っています

例を挙げましょう。

ヘンリー・フォードは、トーマス・エジソンの下でチーフ・エンジニアを務め安定した収入を得るかたわら、自動車帝国を築き始めています。成功をほとんど確信するに至ってからようやく自動車一本にしぼりました。

ビル・ゲイツは、大学2年生のときに新しいソフトウェアを販売していましたが、大学にはその後丸々一年通っています。しかも、選んだのは退学ではなく休学です。資金も親持ち・・・。

アインシュタインは、特許庁という非常に安定した職に就きながら、空き時間でいくつかの重要な論文を書き上げました。

カフカは、保健局で働きながら執筆していましたし、夏目漱石は、講師のかたわら『吾輩は猫である』を発表しています。

死ぬ気でやることはそれ一本でやり始めるものではないし、成功をほぼ確信するまでは、頑丈な命綱を手放すことはないのです。

<盤石な守備あってこその創造的な攻め>

突出した成果は、
無数の思い切ったチャレンジの上に築かれます。

しかし、明日の支払いが気になって仕方なかったり、失敗することがあまりに自分のキャリアにとってマイナスに働く環境にいたりしては、望んだ結果は手に入らないでしょう。

そのため企業においても、先ほどの章の偉人たちのように、守備を固めておくことは必要不可欠です。

もう少し具体的にいうなら、「失敗しにくくする仕組み」と「失敗しても取り返せる仕組み」を構築しておくことです。

それが十分に機能していれば、メンバーに「思い切りバットを振ってこい」と言えるはず。

次章から、クルーズで実際に使えわれている(使われていた)仕組みをいくつか紹介します。エッセンスを抜き取って、ぜひ参考にしてみてください。

<守備の仕組み①社長特命執行部>

まず、社長特命執行部

代表直下の組織として、メンバーそれぞれが固有のミッションを携え、グループ経営の中核を担う約10名の“特殊部隊”です。

ここにいる精鋭たちは、技術系のことと法務以外のことを、全部責任を持ってやります。誰かがどれか特定の仕事をやるのではなく、それぞれが全部できる集団なのです。

これはつまり、一人でCxO何人分もの働きができる人材が社内に常にいるということ。通常だとCxOクラスの人材を見つけてくるのは大変で、コストもかなりかかりますから、有効な守りの仕組みとして機能しています。

もちろん、こうした人材を育てておくことで、新たな事業が軌道に乗るまでがスムーズにいき、子会社の多くの失敗を未然に防ぐこともできています。

社特がついていれば大丈夫。そういう安心感があるから、チャレンジャーに対しどんどん新たなプロジェクトを任せられるのです。

<守備の仕組み② 約240時間の内定者研修>

続いて、内定者研修。

これは新卒者に対する仕組みです。

いくら若手にチャレンジさせる環境があろうと、基礎的なスキルがないために起きるような失敗は避けたいものです。

そこでクルーズでは、業界でいちばんビジネスリテラシー&ITリテラシーの高い新卒なってもらうくらいの勢いで新卒の内定者研修を行っています。

入社と同時に即戦力にするため、研修の講師はCTOが行い、研修に使う総時間数は約240時間。一般的なビジネスリテラシーからプログラミングスキルまで一通り行います。

CTOの時給を考えれば、こうした配置は大胆にも思えるかもしれませんが、全員の底力を上げ、全体としてより失敗しにくくすることにはそれだけ投資する価値があると思います。

<守備の仕組み③重要プロジェクト>

革新的なアイデアを求めて、若手にチャレンジさせる。若手に権限を委譲し、大きなプロジェクトを任せる。

こういった耳障りの良い話はよく聞きますが、実際蓋を開けてみると…みたいなことってありますよね。

ほんとうにそれでうまくやれるの?
さすがに予算的には小規模じゃないと不安じゃない?

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

クルーズは、下のような重要プロジェクトという仕組みを作ることによってこれを実現しました。

『「成長軌道に戻らなきゃ、僕は社長失格」──CROOZ SHOPLIST小渕宏二が背水の陣で臨む、前代未聞のV字回復劇』より

重要プロジェクト制度を導入して半年後の成果として「売上成長率が前期1Q(←重要プロジェクト発足期)5.3%から直近は 17.6%と拡大」しておりました。

詳しくは、ぜひこちらFASTGROWの記事を読んでみてください。

<守備の仕組み④徹底したフォーマット化>

先ほどの重要プロジェクトを進める上でも使うのですが、クルーズでは、失敗させないための会議のフォーマット作りやルール作りを徹底しています。

例えば、以下のように。

・「自分はこう思う」といった主観を徹底的に排し、客観的な事実にもとづいた課題解決のプロセスを取らせるため、プロジェクト提案の際には「事実データ」を最低3つの情報源から、毎回300個集めさせる。

・会議体の設計から、会議で用いられるスライドのフォーマット、そのスライドを何秒間モニターに表示させるかに至るまで、徹底して仕組み化。

もちろん、マニュアルのようなものがあっても、誰もみていなければ意味を成しません。クルーズでは、そうさせないための合宿もあります。

過去の失敗から抽出した、上場廃止など致命的なリスクにつながるような項目が、1スライド1メッセージで集約されており、それがPowerPointにして500ページ超え。3ヶ月に一度、経営陣が集う合宿で、子会社や部署、領域ごとにガイドラインに沿っているか指差し確認

こうした様々な「仕組み化」はクルーズの十八番と言ってもいい慣習で、大胆に攻めたことをするための後ろ盾として大いに活用しています。

詳しくはぜひこちらを読んでみてください。

<今回のワーク>

毎回恒例の、
テーマに合致した若手起業家向けのワークです。

これらは、内容を体験的に理解してもらうための実践的なものです。ぜひ、いくつかでもチャレンジしてみてください。

・同じ失敗を二度と起こさせないために、世の中にはどんな仕組みがあるのか事例を10個調べてみる。
・良い失敗と悪い失敗を定義してみる

それでは、また次回お会いしましょう!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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