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BOOK REVIEW vol.083 茶柱の立つところ

今回のブックレビューは、小林聡美さんの『茶柱の立つところ』(文藝春秋)です!

小林聡美さんが好きです。きっかけは映画『かもめ食堂』。2006年、職場の先輩にオススメされて見て以来、ずっと好き。出演されているドラマや映画すべてを見ているワケではないけれど、小林聡美さんが出演されている作品はどれも安心して見ることができるような気がします。『めがね』や『パンとスープとネコ日和』も好きで、『かもめ食堂』を見ては実際にフィンランドに行き、『めがね』では与論島に憧れ(いつか行ってみたい!)、『パンとスープとネコ日和』を見てはパンとスープのお店を開いた自分を妄想してしまうほど、けっこう影響を受けています。実際の小林聡美さんは存じ上げないけれど、ドラマや映画の中の役柄を通して醸し出される雰囲気が自然体でとても心地いい。肩の力が抜けていて、知的でさっぱりとしているように見えるのに、胸の奥には度胸や強さ、そして愛情を秘めているお姿(役柄だけれど)に、「何だかとってもいいのよね〜」と憧れてしまうのです。

エッセイはコロナ禍に執筆されたものが多く、ステイホーム中の過ごし方なども綴られています。プランターで野菜を育てたり、zoomでさまざまなご友人と繋がったり、ピアノを習ったり。好奇心旺盛で軽やかに取り組まれているけれど、決して無理はしない。エッセイの中の小林聡美さんもとても自然体でした。何よりフットワークが軽く、「え!小林聡美さんも、バスツアーに参加されたりするの?」、「近所の体操教室に通われてるの!?」といちいち驚く私。(ちなみに富山にも旅行に来られていたらしく、国宝の瑞龍寺や、藤子・F・不二雄ギャラリー(めっちゃ地元!)にも足を運ばれていたことを知り、一気にテンションがあがった私)。大女優さんなのにまったく気取らない日常を過ごされていることが、これまた素敵。女優さんだって人間なのだから、冷静に考えると当たり前のことなのですが、あらためて日常に溶け込む小林聡美さんを想像しては、「近くにお住まいの方がうらやましい〜」と、私のミーハー心が刺激されるのでした(笑)

「道」というのは終わりがないのだ。進めば進んだぶんだけ景色が広がるし、ときどき後戻りしていることもあるかもしれない。でも終わりがないから、安心してゆこう。

『茶柱の立つところ』P146より引用

歯切れの良い文章の中に、クスッと笑えるポイントが散りばめられていて、軽快に読み進めていくことのできる小林聡美さんのエッセイ。その軽やかさの中に、ときどきふと立ち止まって、じっくりと味わいたくなるような言葉に出会うことがあります。私にとって、P146の言葉がそうでした。

調子の良い時はぐんぐん進める。進んだぶん達成感もあるし、見える景色も変わってくる。でも、調子が悪くなり始めると、つい偏った思考にとらわれ、前に進めなくなったり、道を誤ったり、後退してしまうことがある。私にはそんな自分を“ダメな自分”だと責めるクセがあります。つい最近もあまり調子が良い時期とは言えず、傍から見ると前に進んでいるように見えても、心の中はぐちゃぐちゃで後ろ向き。でも心はとても焦っているので、カラカラに干からびかけた気力だけで何とか前に進もうとしていました。そんな心境で読んだからか、なおさら「終わりがないから、安心してゆこう」という一文にホッとしたのかもしれません。これからも「道」は続くのだから、後戻りしてしまった自分もあまり責めることなく、心にゆとりを持って進んでいこう…そう思えたのです。

『茶柱の立つところ』は、日常を切り取る視点がユニークで、心を軽くしてくれる一冊でした。帯には、『ありきたりな日々のどこかに、ときどき茶柱が立ちますように。』という一文がありますが、このエッセイとの出会いも私にとっては一つの“茶柱”だったような気がします。プロフィールを拝見すると小林聡美さんは双子座のお生まれ。偶然にも今日から太陽双子座期がスタート!とてもよいタイミングで双子座バイブスを感じることができてラッキーでした。小林聡美さんの紡がれる言葉が好きなので、他のエッセイも読んでみようと思います^^

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