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ひなげしをあなたに

薄く繊細な紙で形作られたような
ひなげしの花びらを見ていたら
昔、一面にひなげしが咲く丘へ
行ったことを思い出した

赤紅、朱色、黄色、白、色とりどりの
ひなげしたちが光に透け
海風に吹かれながら
少し頼りなげに揺れていた

ひなげしを摘んでもいいよと言われて
夢中で、たくさん摘んだのに
そのあと花束をどうしたのか、記憶にない

あれは、夢だったのかーー
いや、私は確かにその花を手にしたはずだ


冥王ハーデスに娘ペルセポネを連れ去られ、嘆き悲しむ豊穣の女神デメテルを慰めるために、眠りの神であるヒュノプスは、ひなげしを贈ったという。

ひなげしの別名は、虞美人草ぐびじんそう
中国の秦末期の武将・項羽の愛妃であった虞姫は、敵である漢に包囲された時、項羽の足手まといにならぬよう自害した。
虞姫が亡くなると、その周りには火のように赤いひなげしが咲いたという。


陽だまりをイメージするような
ひなげしの花に、そんな伝説があったとは
少し意外な気もしたけれど

夢の中に立ち現れるように咲く
儚げなその花の群れを見ていると
それも分かる気がした




あなたが去ってから
もうすぐ、四年の月日が経とうとしている

あれは夢だったのではないか…

今もあなたは
この世界の何処かにいるのではないか
ひそやかにーー

未だに、そんなことを思ってしまうことがある

風に揺られ、儚げに佇む
あなたの横顔を思い浮かべながら





ひなげしの花言葉

陽気で優しい

労わり

慰め

心の平穏

別れの悲しみ







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