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【北海道時間.jp】第1回:トラピスト修道院 北海道の大地に根付く祈りと労働の軌跡

杉やポプラの優雅な並木道を進むと、静かな修道院の風景が広がります。北海道北斗市にあるこの「灯台の聖母大修道院」は、日本で最初に設立された男子トラピスト修道院です。1896年、シトー修道会の教えに則り、祈りと労働の生活を送ることを誓った9人の修道士によって創設されました。

トラピスト会とは何か

トラピスト会は正式には「厳律シトー会」と呼ばれるカトリック修道会の一つです。ベネディクト会規に基づき、究極の目標はキリストへの同一化にあります。隠修的な生活を送りながら、祈りと肉体労働を通して神への道を求めるのです。世俗とは一線を画した修道生活では、共同生活、沈黙、祈り、読書、絶えざる罪の告白と回心といった様々な修行を通して、自己を神に捧げていきます。この伝統的な「モナスチコ生活」は、他の活動修道会とは異なる独自のスタイルとなっています。

北の大地に根付いた歩み

1894年、函館教区のベルリオーズ司教がトラピスト会総長にこの北の地での修道院設立を打診しました。2年後の1896年、フランスから渡った9人の修道士によって、この地に修道院が設立されました。修道院は近くにあった灯台にちなんで「灯台の聖母修道院」と名付けられました。1908年には当別小教区が設立され、敷地内に聖堂が建てられました。1917年にはこの聖堂が聖リタに捧げられました。さらに1935年には大修道院に昇格し、現在に至るまで「祈り働け」をモットーに活動が続けられています。

四季を彩る自然のハーモニー

修道院に足を運べば、豊かな自然とトラピスト修道士たちの生活の軌跡に出会えます。敷地内を散策すれば、春の薫り高い新緑、夏の木々の陰、秋の燃えるような紅葉、冬の白銀の世界といった四季折々の自然を堪能できます。
トラピスト修道士たちは、この美しい自然の中で日々祈りと労働に打ち込んできました。彼らが大切に守り育ててきた豊かな自然は、訪れる者の心を穏やかな静寂のなかへと導いてくれるでしょう。

修道院の味を堪能する至高の時間

この北の地に佇む修道院は、北の大地の味を楽しむことができることでも有名です。工場で作られる上質なトラピストバターを使ったクッキーやソフトクリームは、旅する人々に長年親しまれています。特にソフトクリームは、一口含めば芳醇でコクのある味わいが広がります。この濃厚な味わいは、北海道の大地が育んだ新鮮な生乳と、修道士たちが受け継いできた伝統の技が融合した賜物です。ほかにもジャム、チーズ、ドリンクなども販売されており、修道院で育まれた恵みの味を堪能できます。これらは北海道の豊かな食の恵みと修道院の技が生んだ、格別の逸品です。

長く継承されてきたシトー会の精神

敷地内を歩けば、歴史を感じさせる建物や設備を間近に見ることができます。見学できるスペースでは、修道士たちの日常生活の一端を知ることができます。写真から朝夕の祈りに集う修道士たちや、礼拝堂の荘厳な雰囲気などから、シトー会の修道生活の伝統が伝わってきます。彼らが実践してきた祈りと労働の生活様式に思いを馳せることができます。このトラピスト修道院は、訪れる人々に静寂と深遠な精神性を感じさせるだけでなく、北海道の大地の豊かな食文化を体験する機会も提供しています。修道士たちの労働の軌跡は、食を通しても感じることができます。また、地域に根ざした修道院の姿からは、宗教とコミュニティーの関係について考えさせられることもあります。長年にわたり地域社会に溶け込み、信仰の場としての伝統を守りつつ、多くの訪問者を迎え入れてきた修道院の歩みは、人々の生活と深く結びついているのです。

トラピスト修道院は、多様な側面を持ち、訪れる者にさまざまな体験を提供しています。静かな修道院での散策や自然の美しさ、修道士たちの祈りと労働の姿に触れることで、深遠な精神性と地域との調和を感じることができるでしょう。この豊かな体験が心に残り、再び訪れたくなる場所の一つにもなりました。

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