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美容室探しの旅は、自分自身の性格を知る旅である

2022.2.10

私は大1まで、母も通っている最寄り駅の美容院に通っていた。それなりにカット料金もかかる、結構敷居は高めなチェーン店である。いわゆる「若者」というお客さんは少なく、比較的年齢層が高め(40代〜という感じ)のお客さんが多かった美容室だった。
担当さんが辞めるたびに、その美容室で新しい担当さんを紹介してもらっていたし、それを当然だと思っていた。その美容室でない必要がなかったため、通っていた。

しかし、その美容室の最後となった私の担当さんが、どうにも合わないのである。今の担当さんでないのに担当と書くのも癪なので、彼女、と書くことにする。


●彼女と私が合わない訳

彼女は、自身の独自の「若者」のイメージを、私に押し付けているようだった。

①「可愛い」の定義が違った

なんとなくの会話からだんだんと、「可愛い」の定義が全く合わないことが明白になっていった。
彼女の言う可愛いは、ギャル寄りで、雑誌で例えると「Popteen」。藤田ニコルとかの全盛期の時代である。彼女のメイクも、今思えばがっつりメイクであり、あの年齢層高めの美容室で、はっきり浮いていた。

私が言ってるのは、平成ギャルメイクの
アイラインがっつりPopteen。
今のPopteenはこういうのじゃなくてびっくりした。
メイクが薄すぎ。すんごい落ち着いてる。


しかし私の可愛いは、清楚系。ファッション誌で例えると「Ray」とか「nonno」みたいな感じで、女優さんだと書ききれないほどたくさんいる、いわゆるナチュラルメイクの、王道清純派である。
というか、普通の「可愛い」って、98%くらいこっちじゃないか、、?って今は思うが、まぁ気付くのに時間がかかってしまったんだから、仕方ない。ただ、「可愛い」にここまでのズレが生じること、普通ないだろ…。あの年齢層高めの美容室で、前者のギャル寄りの美容師さんがいたことに、びっくり。

誰を出すか迷ったが、誰もが可愛いと認めるであろう、ガッキー。逃げ恥大好き。
普通の可愛いってこっちではないか、、?


②「美容室にお願いしていること」の定義が違った

私は、女子校の女子力もない部類だったので、とにかく楽に扱える髪の毛にしてほしいことがお願いだった。
しかし彼女のカットは、こう巻いたら可愛いからと、独断でレイヤー(段)を入れてくるのだ。かと言って、コテの扱いは教えてくれない。「毛に沿ってコテを巻けば可愛くなるよ!」って、どういう意味? 「毛に沿う」コテの使い方とは?? せめて、内巻き・外巻きのどっちなのかだけでも教えてほしい、、コテの使い方分かんないけど。

なので、私が可愛くいられるのは、美容院の帰り道だけであった。翌朝の髪は、ちょっと扱いやすくなったが、可愛くはならず、一週間後からは、もっさり一つ結び女が爆誕していた。

③ 「客を早めに来させようとする、モチの悪いカット」をされていた

これは、分析の末に辿り着いた結論。
私の髪の「量が多い」というと、必ず「髪を梳く」行為をされることから気づいたことである。

美容師さんは、「梳く」と「切る」を分けて言うので、私はそれぞれを別物だと思っていた。しかし、よくよく考えてみると、「髪を梳く」というのは、「髪を切る」と、同じなのだ。

人間の髪の量を「減らす」ということはつまり、〈3本中3本長い髪〉という状態から、〈3本中1本はそのままの長い状態で、2本を短い髪にする〉ということである。なので、その〈2本短い髪〉が伸びてくると、「量増えたな」と感じ、美容室に行こう、と思うようになるのだ。
その〈2本短い髪〉が、耳の下あたりでほぼ同じ長さに揃えられていると、分かる通り、急に「どんっ」と増えるスピードが速くなるのだ。それに、私は段を入れられていたが、段の分も、急に「どんっ」と増えるスピードが速くなる。

なので、彼女のカットは「客を早めに来させようとする、モチの悪いカット」だったと、確信している。
(後述するが、上手い美容師さんのロングのカットは、急に「どんっ」と増えないような工夫がされている。)

④私を「金ヅル」として扱っていたのだな、と思わされた

悪意のある言葉で書いてしまっているが、そう思うようになってしまったのは、彼女が
「いつも〇〇ちゃん(私)のお母さんが来たときには、挨拶させてもらってるんだ」
という発言をしてきたことに所以する。彼女と母の担当は別の人であるが、なぜ母に挨拶するのだろうか。

私はそれを聞いたとき、私が美容師さんを変えたいと言ったときへの対策の挨拶だ、囲い込みだ、と感じてしまった。まぁ思春期だったので反抗期もあるのかもしれないが、自分はあなたの親にわざわざ挨拶をしているよ、ということを、子どもに言う必要はないだろう。私もその時「そうですか」としか返せなかった。
母はお喋りな人で、アシスタントさんや担当さんとこんな話をした、と嬉しそうに話してくれることがある。しかし、母に彼女のことを聞いたところ、「ただ挨拶してくるだけ、その後世間話とかもしない」と言っていた。会話を弾ませることもなく、ただ「〇〇ちゃん(私)の担当です」と言うだけのコミュニケーションに、何の意味があるのだろうか。「末長くよろしくお願いします」の意味以外ないだろうし、私を金ヅルと見ているのか、と悲しくなった。

このことから、彼女は私を可愛くしたくて切っているのではなく、私の髪を切ることで得られるお金がほしかったのか、と思うようになってしまった。(今になって振り返ると、彼女のコミュニケーションでは、なんとなくすれ違いがあったな、と思う。私が無理をしていた感じ。)

●決定的な決別

こんなにも違和感があったにも関わらず、「違う美容室に通う」という選択肢がなかったため、通っていた。しかし、その美容室と決裂することになる、決定的な出来事が起きる。

この時の私は、前髪も髪と同じく梳かれていたため、伸びてくると、前髪が非常に厚くなってしまっていた。それをどうにかしたくて、前髪の半分ほどの量を、後ろ髪に持っていきたかった。なので、前髪の〈短い部分〉と〈4ヶ月ほど伸ばした部分〉がはっきり分かる状態で来店し、「伸ばした部分は切らないで」としっかり伝えた。
…にも関わらず、彼女は伸ばした部分を、何の躊躇いもなく、ぱつっと切った。あまりに一瞬の出来事に、あんなにしつこく念を押したよね?と呆気に取られた。
切られた前髪を元に戻すことはできない。何か言う気にもなれず、呆然としてる間に、先ほど切られた髪が以前同様梳かれて、前髪に加わっていく。

私は再び「一見薄く見えるけど1ヶ月後には極厚になる前髪」になってしまった。
ちゃんと説明もしたのに、4ヶ月の可愛いへの努力を無駄にされた。

このことがきっかけで、急速に彼女への疑念が生まれて、上記に記した可愛いの違いだったりがふつふつと湧き上がり、「あ、美容院変えよう」と思ったのである。

高3の卒業式は、美容院に行かずに、無事薄い前髪で可愛く写真に映ることができた。卒業後最初のカラーは、知ってる美容室の方が良いと母におすすめされたので、カラーだけというメニューで彼女にお願いした(それは失敗されず、可愛い色に仕上げてくれた)。



以上で、5年ほど続いた彼女と、今生の別れをした。
前に彼女のインスタを見つけたのだが、やはり彼女とは合わなかった。それは、成人式の投稿である。
私の成人式はThe古典柄の振袖で、髪飾りはつまみ細工のものを選び、髪は三つ編みをかっちりとひとまとめにした。しかし彼女が手がけた成人式の髪は、羽がふわふわ飛んでいて、後れ毛がたくさん出てて、紐があちらこちらに絡まっていた。その子の振袖は、私がカタログで敬遠していたメルヘン系だった。あー、合わなかったのだな、と思うと同時に、彼女と決別しといてよかったと心から思った。
インスタで美容師さんの個性を知ることは、案外重要である。

もう全然好みが違う。


ここから、私の美容室流浪の旅がはじまる。
この旅で私は、意外にも、自分自身を見つめ直すことになるのである。

美容師さんを1回だけで判断するのはよくないので、とりあえず3回は通おうとした。


●1軒目:安い美容室

まずは、最寄り駅の前でよくクーポンを配っている、若者向けの美容室に行くことにした。ここは、カットが2000円台(すごく安い)だった。今まで通っていた高級路線のところとは、別次元だった。

この時指名をした美容師さんは、歴5年目くらいのお姉さんだった。1回目のカットは、すごく良かった。すきバサミを、はじめて根元の方から入れてくれたのである。前述した彼女は、耳の下から一定にすきバサミを入れていたため、梳いた髪の毛が一定に伸びて、急に重たく感じていたのか、ということにやっと気づいた。梳いた髪の毛の長さをばらばらにすることで、伸びる長さを調節して、量が急に増えないようにしていたのだ。
すぐもさっとしていたのはそういうことか、と、上で書いた「梳く」の理論を、やっと理解した。

だが、この美容室は、「安さ」が売りであったため、結局3回目で離れてしまうことになった。

一つ目は、カラーがひどかったこと。染めて一週間くらいで、髪の赤みが、やたら気になるようになってしまったのだ。一回、暗めのアッシュなんたかの色にしてもらったのだが、私がカラーが抜けやすい髪質であることも相まって、一日で色が抜けてしまったこともあった。ここに通ったことで、カラー剤の質を認識した。

二つ目は、次回の予約を入れてからでないと帰れないシステムだったことだ。リピーター頼みの経営なのだろう。予約日は後日でも変更可能ではあったのだが、思いつきでぱっと美容室に行きたい私にとって、面倒くさかった。

三つ目は、3回目のカットで、担当の方が、耳の下からすきバサミを入れ出したことだ。そしてその時、いつもは3ヶ月後にとっていた次の予約を、1〜2ヶ月後にすることを推奨された。嫌な予感がした。案の定、髪は“ぼんっ!!”とすぐに増え、前回2回の「持ちのよいカット」は何だったのか、と思うくらい、すぐに美容室に行きたくなってしまった。この時、「客を早めに来させようとする、モチの悪いカット」の構造を、理解することとなった。

私は次回の予約を「予定が分からなくなって」というよく分からない理由で取り消し、この美容室とも決別した。

●2軒目:カリスマ美容師

「2軒目:カリスマ美容師」と書いた状態から以下空欄のまま、1年10ヶ月とnoteの下書きに放置されていた。
…ので、年内下書き断捨離として、以下の文章を、2023.12.27に追記する。

ここは、インスタで見つけたフォロワー3万人の美容師さん。「赤みが消えるカラー」を売りにしている通り、私の髪を一瞬見ただけで、すぐ去っていき、アシスタントさんが塗ってくれた。カラーは全く赤みなく変な色落ちにならないままだったので、コロナ禍中も髪には不便なく過ごすことができたし、カットは10分もかかっていなかったけど、3ヶ月ほどすごくまとまっていた。技術力「は」すごかった。

だけど、3万人のフォロワーの弊害で、とにかく美容室が落ち着いていなかった。
カリスマ美容師が一気に5人程度のお客さんを捌くため、店内を動き回っていて、忙しない。なので、カリスマ美容師待ちの時間が恐ろしく長かった。スマホもないし、雑誌もないし、とにかく虚無な時間だった。カリスマ美容師が贔屓しているお客さんをカットする時間が私に比べて桁違いに長く、その2人の会話も聞こえちゃってたからこそ、余計に長く感じた。
しかも、お店にいるお客さんを全員カリスマ美容師が受け持ってたので、カリスマ美容師以外の美容師さんのお客さんが取られちゃってた。せっかく私服でハサミのバッグも持ってるのに、制服のアシスタントと同じ状態になってて、カラー塗りやドライヤーのときに、覇気のなさがこっちまで伝わってきた。美容室内がギクシャクしてて、空気が澱んでいで、居心地が悪かった。

嫌だなぁと思う気持ちそのままに、1回行ったっきりで終わった。店名すら忘れてるので、もう二度と行けない。


●3軒目:モテ前髪の美容室

ここもインスタで見つけた。コロナがほんの少し落ち着いて、おしゃれ心が芽生えた頃だったのと、前述の通り前髪への苦い思い出があったので、インスタの「前髪に時間をかけてカットします‼︎」「あなただけのモテ前髪をつくります‼︎(意訳)」の文言に打ち抜かれた。
フォロワーはもうすぐ1万人くらいだった気がする。立地もいいところで、それなりに有名店だったので、いいかなぁと思った。

ここは、当初の計画通り3回行った。けど、3回でやめちゃった。
理由としては、インスタの「前髪可愛くするよ♡」に期待しすぎたから。

毎回時間をかけてこだわって切ってもらってたけど、0.1mmの違いで、自分がそんなに変わったように見えなかった。カット中、「前髪って結局すぐ伸びちゃうんですよ!! 0.1mm単位の調整なんていりません!!!」って言おうかと思った(←そんな勇気はない)。この人にそんなにこだわってもらう意味を見つけられなかったので、私は楽にセルフカットできる扱いやすい前髪なんだな、と気付くことができた。
後ろ髪とカラーは、いいんだけど、可もなく不可もなくで、毎回感動はなかった、かな。満足してたかどうかがうろ覚え。
あと、美容室の規模が大きすぎて、ずーっとガヤガヤした環境だったのに耐えられなかったのも理由の一つ。

美容師さんは自分のお客さんを増やすために、SNSで自己プロデュースをしないといけないのが大変だと同情しちゃう。自分の売りを見つけて、それを効果的にアピールしてバズらせて、お客さんに来てもらうことで、自分が有名になれて給料も上がる。モテ前髪の美容師さんも、フォロワーが大台超えてからは独立してた。
でも、私が美容師さんに求めてるのは、アピールしてるその一点の技術力じゃなくて、総合力だった。美容師さんのSNSとフォロワー数を信じすぎてはいけないことと、私はカット技術へのこだわりがないようでしっかりあったってことを学べたのが、この美容室での収穫。


●4軒目:今通っている美容室

そんな流れで出会ったのが、今通う美容室と美容師さんである。
この美容師さんのカットの良さは、この記事↓で書いた通り。ショートヘアにする勇気もくださった、素晴らしい技術力。

加えて、好きな俳優とかの無理な会話がなくて、無言でもいっかって思える距離感が、私にとってちょうどいい。少人数でわさわさしてなくて、落ち着ける空間で、帰りに街ブラも楽しめる。もう完璧。
たまにカット後の後ろ姿をSNSにあげてくれるので、私を大切なお客さんって思ってくれてるようで、嬉しくなる。



というわけで、美容室探しの旅を無事終えることができた。

自分が思ってる「可愛い」が分からないと、美容師さんとのミスマッチにすら気付くことができない。
自分が思う居心地の良さが分からないと、しっくりくる場所と空間と人を見つけられない。

なので、最初に「美容室探しの旅は、自分自身の性格を知る旅である」なんてタイトルを大きくつけてた訳だけど、あながちその通りだな、と思った。
何をするにも、自己分析は大事だね。



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