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新聞の小さな記事を見てICUを受験することに。

 高校を卒業して2年が経っていた。

 日中は本屋でバイトをし、夜はバンドの練習があった。

 本が好きだったので本屋のバイトは苦にならなかった。

 バンドはボブディランに憧れていたリーダーのオリジナルが評判を呼び、あちこちで演奏した。僕はリードギターを担当した。当初はアコースティックギターだったが、エレキギターに変えた。ディランがそうしていた様に。

 その年の8月、日比谷の野音で雨の中演奏したのを最後に僕はバンド活動を辞めて受験勉強を始めた。ある日何気なく見ていた新聞の小さな記事に目が止まった。

 フランスの大学で教鞭を執っていた哲学者の森有正氏が帰国して翌年の春からICUで教える事になったという。

 森氏に哲学を学びたいと、翌年、ICUを受験する事にしたのだった。

 受験まで半年しか無かった。無謀にも思えたが、こんなチャンスは2度と無いと思い、決心は堅かった。

 生涯で最も勉強に専念した半年が始まった。

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