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【書評(?)Vol.1】20代で得た知見

こんなに早く『書評(?)』をはじめるとは、自分で自分にびっくりしています。

インナーナラティブデザイナーのわたしによる、読書感想文です。
わたしとことばの出会いと、わたしと本の関係性を綴っていきます。
書くことへの評価、というとおこがましいので、「書評(?)」としています。

それでは、ご紹介したいことばと本の紹介を始めます。

決してあなたのためなんかではなく、ただひたすら私の救われない魂のために。
私にとっての仕事とは、そういうものだ。

KADOKAWA,F『20代で得た知見』

人生は忘れがたい断片にいくつ出会い、心動かされたかで決まる

一人の人間の人生は、出会った言葉でも、預金額で決まるとも、恋愛だの結婚で決まるとも思えない。

ある夜友人が電話で語ってくれた台詞、または恋人がふとした瞬間吐き捨てた台詞、バーで隣の男が語ってくれた一夜限りの話、なんの救いもない都会の景色、あるいは、夜道で雨のように己の全身を貫いた、言葉にもならない気づき。そういったものによって人生は決定されたように思うのです。

私はその断片を「二十代で得た知見」と名づけることにしました。

Amazon書籍紹介より

学生のころ、書店で久しぶりに本が読みたいなと思い、ふらりと寄った書店で吸い込まれるように手に取った1冊。
書評(?)をするなら、記念すべき1冊目は必ずこれにしよう、と決めていた本です。

最初に読んだときは、ほんとうに響かなかった。
わたしは学生で、青すぎて、ことばが踊っているように見えて、地に足がついていなかった。わたしが受け止められなかった。

それからこの本は、本棚に眠ってしまうのだけど、最後の学生生活1年間で唯一読んだ単行本でした。

それから1年後。わたしは社会人になり、追われる毎日を送ります。
仕事は何をしてもうまくいかないし、空回り。
自分の周りの人たちとの関係性が、薄っぺらく思えてしょうがない。
仕事以外をたのしむ時間も、金銭も、心も余裕がなかった。
とにかく、毎日が孤独だった。

そう感じていたときに、写真フォルダを眺めていたら、ページを撮影している画像を数枚見つけました。
最初、このことばなんだろう?と思いましたが、頭の奥底から書籍の手触りを思い出しました。

論文じゃない、あの本だ。
それが『20代で得た知見』との再会です。

あんまり響かなかったな、という記憶も思い出されたけど、もう一度読んでみようと思い、読み始めました。
すると、泣きそうになるくらい、ことばの一つひとつが沁みてきて、読み進めることがもったいなくなりました。

善も、悪も、ひたすらに、急げ。

読み返したあとに気づきましたが、学生のころに読んで響いたページのことばと社会人のときとでは、全く違う箇所に刺さっていることがわかりました。
学生と社会人。同じ20代でも異なる世界を見ていたんだと思い、自分自身が成長しているのかもしれない、と思えた瞬間でした。

豊かさとはつまり、目の前の貧しさから、どれだけの教訓を雑巾絞りのように搾り出すか。その錬金術のように思えます。

豊かさ、なんて便利なことばで、よく使っていました。
こんなに便利な世の中になり、豊かに暮らせる生活が当たり前に浸透してきました。
でも、著者のFさんは違う。まず貧しいという、豊かさとは無縁に思われる、そんなシーンで生まれるものだと考えています。

しかも、そこから搾り取らなきゃいけない。
もしかしたら、めっちゃかたい雑巾かもしれない。
そこからポタポタと滲み出てきたものに、豊かさが詰まっている。

まさに錬金術。

読んだ本の数だけ、言葉が、孤独が通じる人の数が増えるからです。

本を読み始めて、まさにこの感覚が生まれてくるようになりました。
ひとりと孤独は違う。孤独はほんとうにつらくて、苦くて、逃れられない。

でも、言葉が救ってくれました。
救ってくれた、というより、違う景色もあるよと教えてくれました。
孤独からのいなし方を教えてくれました。

考え方や視野が広がる、平たくいうとそういうことだと思います。
でも、この表現がしっくりきます。
一見するとそんなに前向きじゃない。でも確実に前を向いている。

でも、こうとも思えます。
孤独なんて通じたくない。苦いまま、ひとりで苦しみたい。
この矛盾の狭間を経て、ほんとうに孤独を知るんじゃないかなと、わたしは思います。

同じ20代でも、環境が違えば刺さることばも変わる。
わたしにとって、また読み返したくなる本で、宝箱にしまいたくなる本です。

書いていて、これはぜんぜん書評じゃないということに気づきました(笑)。
まあ、それでもいいです。
わたしとことばの出会いと、わたしと本の関係性を綴った【書評(?)Vol.1】でした。

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