『ラッパーDrake、故2PACのAI生成音声で楽曲公開し問題に。AIボイスのルール整備』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.4.28
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■ラッパーDrake、故2PACのAI生成音声でケンドリック・ラマーへのディス曲を公開。遺産管理団体が強く抗議
サンプリングという著作権法的にはNGな音楽制作の方法を編み出し発展してきたヒップホップ界で、声の生成AIを使って他人になりすましてラップするというトライとトラブルが起きています。
今回は、超有名ラッパーのドレイクが、同じく超有名ラッパーで1996年に亡くなった2PACの声を使って歌唱したことが問題になっています。
そのドレイクも、以前はGhostwriter977というハンドルネームの他人に声をパクられ、ユニバーサルミュージックグループ(UMG)が抗議の声を上げて配信停止させたという経緯があります。
レコード会社はビジネス上の観点から生成AIによる声の盗用を好ましくないと考えているでしょうが、かつて被害者だったドレイク自身が2PACの声を盗用して見せたことを考えると、ヒップホップ文化の核であるサンプリングと生成AIボイスを同類のものと肯定的に捉えているのかもしれません。
サンプリングと著作権、ヒップホップ文化
既存曲の一部をループさせたり混ぜ込んだりするサンプリングも、ターンテーブルやサンプラー、そしてDTM(Desk Top Music)というテクノロジーの進化で生まれた手法です。
技術的にできるからやる、というのが音楽業界では必ず起きてきたことですが、商業的にはトラブルが一度起きた後にルール整備されるという流れを取ってきました。
10年以上経ってルールが整ってきた
サンプリングが著作権侵害で訴えられるようになるのは1990年代だとしています。判例を洗ったわけではないので確かなことは言えませんが、1970年代後半からサンプリングが始まって10年以上は法的な整理はされてこなかったようです。
ルールが未整備であるがゆえに、あとから超高額な請求が来るという事態も多発しました。
サンプリング向け音源提供の新市場創出も
数多くの訴訟を経て、サンプリングは許諾が必ず必要であるということ、許諾を得る窓口や手法、契約範囲などのひな形化が進みました。おそらく支払い相場のようなものも形成されているだろうと思います。
また、サンプリング用の音源ライブラリを積極的に提供する人が登場するなど、サンプリング自体が新たな市場を作ったりもしてきました。
歴史に学べば、生成AIボイスについても同じような手順をたどるだろうと予想できます。
菊地成孔さん「音楽は新技術が使われなかったことはない」
TBSラジオ「荻上チキ Session」に一昨日(2024年4月26日金曜日)にゲスト出演されたジャズミュージシャンの菊地成孔さんが、AIで曲を作ったエピソードを話されていました。24分ごろからです。
レコ発のイベント用のグッズとして調香師と一緒に2種類の香水を作ったが、その香水をイメージした曲をAIで作ったとのこと。
・僕ら(ペペ・トルメント・アスカラール)の音源をディープラーニングさせて、AIが吐き出してきた音源をこっちで編集して作った。サンプリングではない。
・音楽はもうAIで全然できる。この1年でものすごくクオリティが上がった。今一番すごい。
・(AIを使うことは)オールオッケー。新しいテクノロジーが登場すると必ず警戒して、雇用がなくなる、現代的な問題としては権利関係の問題は生じやすいが、音楽は結局、テクノロジーが生まれちゃったものが使われなかったことは1個もないので、AIも使われると思うし、AIに対しての立場は、制限すべきだとか国や人にによってもいろいろあるが、僕は100%オッケーでいいんじゃないかと思っている立場。
・(AIを)盛んに使って、いいものを出していくしかない。
・AIリミックス集も出そうと思っている。
・AIは成果物の量がものすごく多い。
・AIをアートシーンで使う人のこれからの問題は、権利がどうのこうのというより、OKテイクを誰が出すかということが問題になる。
・生成は無限にできるから、1個のものを作ろうとして100個とか挙がってくる。
・なので、決定権を誰が持つかというのが、現在の作曲にあたる権利、作曲家の権利がそこに維持されるのではないか。SF的な空想だが。
菊地成孔さんの音楽×AIの考え方にとても共感します。どうせ使われるのだから制限するのではなく積極的に使うしかないし、AIがない世界にはできません。
そのためにも適切なルールや手続き方法が規定された方が、AIをより安全に使いやすくなります。あとから何億円も請求が来る可能性に怯えていては使えません。
ドレイクも、騒ぎを起こしながらルール作りを促しているようにも見えます。他人の声にどのような権利を持たせるのか、使ってほしい人の権利処理方法や、使ってほしくない人の制限方法、似た声の人への対応、口調や口癖もセットでないと似ない問題など課題は多いものの、いずれにせよ前向きにAIを活用しやすくする方向で検討が進むだろうと見ています。
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