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『画像生成AI「Adobe Firefly」の新機能「カスタムモデル」を、いかに「コーチ」のバッグのデザインに活かしているか』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.4.6

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■COACHがバッグのデザイン過程で生成AI活用、「らしさ」をどう表現するか

アメリカ・ラスベガスで3月26日から28日(現地時間)の3日間、アドビが主催する年に一度のデジタルエクスペリエンスのカンファレンス「Adobe Summit 2024」が開催された。戦略基調講演には、「コーチ」「ケイト・スペード ニューヨーク」「スチュアート・ワイツマン」といったファッションブランドを有する、タペストリー社のデジタルプロダクトクリエイション部門シニアディレクターであるJJカマラ氏が登壇。本サミットで発表された、画像生成AI「Adobe Firefly」の新機能「カスタムモデル」を、いかに「コーチ」のバッグのデザインに活かしているか、実際の生成過程の画像と共に明かした。

「コーチ」「ケイト・スペード ニューヨーク」「スチュアート・ワイツマン」といった有名ファッションブランドが生成AIを活用というだけで時代を感じさせます。

アイディア出しはAI、仕上げは人間、という方法で活用されており、最終デザインを生成AIで作っているわけではありません。しかし今回明かされた「Adobe Firefly」の新機能「カスタムモデル」は、従来の生成AIでは難しかった「そのブランドらしさ」を扱えるようになっているようです。


「コーチらしさ」を生成AIで出力できるように

Adobe Fireflyに「ふわふわのシアリング素材を使用したタビーのハンドバッグ」と入力して生成された画像。

Fireflyに限らず他の画像生成AIでもそうですが、「ふわふわのハンドバッグ」はランダムガチャでそれっぽく生成できます。

しかし「ふわふわのハンドバッグ」をたくさん出力しても「コーチ」のハンドバッグが出るのは非常に低確率の偶然でしかありません。

左が実際に販売されている商品。右が「Adobe Firefly」で制作したカスタムモデル。

生成AIに「コーチ」らしさを学習させることができるようになったというのがAdobe Fireflyの新機能「カスタムモデル」です。


「らしさ」をルイヴィトンの例で

失礼ながら「コーチ」らしさというのはちょっと伝わりにくいので「ルイヴィトン」を例に取ります。

「モノグラム」と呼ばれる、誰もが知っている柄。濃いブラウンと薄いベージュのコンビネーションカラー。ゴールドのファスナー。

など、「ルイヴィトン」といえば、のデザイン要素で満ち溢れています。これらが含まれているから「ルイヴィトンのハンドバッグ」に見えるわけです。

こういう要素をプロンプト(言葉)にして画像生成AIに命令しても、「モノグラム」の部分で正確には出力されないのが現在の画像生成AIの限界です。

限界だけでなく制限もあります。

「ルイヴィトンのハンドバッグ」というプロンプトをBing Image Creatorに入力した際の警告

これは正しい制限であるとは思いますが、公式に社内利用する際にもこの制約がかかるわけで、本格的なデザイン業務のシーンで生成AIを導入する妨げになっていました。

Adobe Fireflyの「カスタムモデル」では公式であればこの制約を突破できるようにしました。ブランドの「らしさ」そのものを学習させることで、本格的に生成AIを業務活用できるようになるわけです。


「らしさ」をデザイナーが理解していることが大事

しかし結局のところ、デザイナーやブランド自身が「らしさ」を言語化できること、製品デザインに「らしさ」を体現し続けてブレていないことが根本的には重要です。

「らしさ」に共通性がない製品デザインばかりアウトプットしていたり、社内でも「らしさ」の共通認識がないブランドでは、いくらAIにデザインを学習させても「らしさ」を体現したデザインは出力されないでしょう。

例えば、かつての日本車のデザインは、「トヨタらしさ」「日産らしさ」が言語化しづらいものでした。しかし最近はどのメーカーも「らしさ」の共通性が強く持たされています。

分かりやすいところではレクサスやマツダが、誰が見てもわかるデザインの共通性を持っています。車に詳しくない人だと見分けがつかないレベルです。


プロのデザインシーンで生成AIが使われる兆し

この共通性を学習させることは、これまでの生成AIではフェイク動画対策もあって不可能でした。これがAdobe Fireflyの「カスタムモデル」でできるようになったわけです。

ずっとプロの世界で使われてきたAdobeらしいアプローチとも言え、これからプロのデザイン業務に生成AIが本格的に導入される兆しであると感じます。

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