『「AIだけで作った曲を音楽配信する」その先の未来』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.5.9
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■「AIだけで作った曲を音楽配信する」。生成AIが作り上げた架空バンド「The Midnight Odyssey」を世界デビューさせる、その裏側
常々に感じていた、TikTok発で流行る音楽に特に感じる「このアーティストは実在するのかな?」という疑問。
ボカロっぽい声質だということや、アーティストの人となりの紹介がほぼなく楽曲だけを耳にすること、ライブ活動のニュースを耳にしないことなど、アーティストの実在感を感じない楽曲が増えてきたように思います。
SunoAIの優秀さに驚いたのはプロのミュージシャンも同様だったようで、メタ的な試みとして「AIで架空のバンドを生成させる」というプロジェクトが始まっています。
楽曲だけでなく人物像などもAIで生成させ、さも実在しているかのようにキャラクタライズし、配信サービスを通じて世界デビューさせようというものですが、この流れの向こう側には何が待っているのでしょうか。
「AIが作った曲」を流通させるプロジェクト
SunoAIで作曲させたあと、ギター、ベース、ドラム、ボーカルなどの音を専門ソフトで分離してバランスの調整だけ行うというルールで、あくまでも「AIが作った」を逸脱しない範囲で作られた楽曲がコレです。
曲を聴いただけでは人間なのかAIなのか私にはわかりません。
AIっぽさが結構強く出てはいますが、アー写も用意されました。
それぞれに名前が付けられ、架空のバックグラウンドヒストリーも持たされました。このくらいの情報しかないアーティストはごまんといますから、今回のようにAIで作ったことが公表されていなければ、人間かAIかは気づけないでしょう。
音楽で食っていけるのか?
今回のようにAIで制作した曲、AIが歌う曲が増えていくこと自体は間違いないと思います。しかしこのトレンドは「AIが仕事を奪う」とは別の次元の問題をはらんでいるように思います。
作曲者がAIに代替されるなら「AIが仕事を奪う」ことになると思いますが、レコード会社やSpotifyなど配信サービスが自らAI楽曲を量産し始めたら、数とスピードの面で叶わない人間の楽曲は埋もれるでしょう。
ライブも、配信など興味を持つきっかけがなければチケットが売れないということが起きるはずです。
リスナーとしても、もともと会ったことがない人の曲を聴くことが大半だったわけで、人間なのかAIなのかの区別なく「楽しめればいい」という消費の仕方をする人が大半だろうと思います。
つまり、音楽の流通を担っている配信サービス会社やレコード会社がAIによる量産を選択した場合、人間のミュージシャンが食っていける道が業界的になくなってしまう可能性はありそうな気がするのです。
Spotifyは再生数稼ぎを目的としたAI楽曲を数万曲削除しましたが、それは不正視聴を取り締まるためであって、AI楽曲だから取り締まったわけではありません。また、仮にAI楽曲を禁止したとしても、AIを許可する他のプラットフォームが登場するだけです。
音楽は原始的に人間のパッションで奏でられる欲望の産物ですから、人間が音楽を演奏しなくなることはあり得ないはずです。しかし、配信会社とレコード会社が本気でAIを担いだ時、人間が食っていくための音楽市場自体がなくなるかもしれません。
音楽は世に溢れているけれど、音楽で食っていく道はない。そしてそれは音楽に留まらない。
だからといってAIは止められないので、うまく取り入れるしかないのでしょうが、突き詰めた先には悩ましい未来が待っていそうです。
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