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我が国のIT戦略の歴史をざっくり振り返る

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶと言います。
愚かな私は賢者の物真似をしようと思い立ち、まずは政府のIT戦略の歴史を学ぶことにしました。

このnoteは何ですか?

ただのリンク集です。私が自分で使うために整理しました。
お酒を飲みながらまとめたので、簡単なコメントやボヤきが入っています。
元ネタは(旧)IT総合戦略本部の以下のリンク集をベースとしています。
ほぼ全ての文書が現在リンク切れしていますので、国立国会図書館のアーカイブ事業であるWARPを利用しています。

我が国におけるIT戦略の歩み

少し古いのですが、令和元年度に出された「IT新戦略の概要」という資料に沿って、平成13年のe-Japan戦略から国のIT戦略の歴史を振り返ってみようと思います。

出典:政府CIOポータル「IT新戦略の概要」

e-Japan戦略(平成13年)

IT基本戦略(平成12年11月27日IT戦略会議)

我が国は、21 世紀を迎えるにあたって、すべての国民が情報技術(IT)を積極的に活用し、かつその恩恵を最大限に享受できる知識創発型社会の実現に向けて、既存の制度、慣行、権益にしばられず、早急に革命的かつ現実的な対応を行わなければならない。超高速インターネット網の整備とインターネット常時接続の早期実現、電子商取引ルールの整備、電子政府の実現、新時代に向けた人材育成等を通じて、市場原理に基づき民間が最大限に活力を発揮できる環境を整備し、我が国が5年以内に世界最先端の IT 国家となることを目指す。

IT基本戦略の冒頭より

IT革命に対して我が国の取り組みが遅れていることを指摘したうえで、「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す。」ことを掲げた基本戦略です。危機感と焦燥感が伝わってくる、個人的に好きな書き出しです。
2000年(平成12年)7月に情報通信技術(IT)戦略本部が設置され、20名の有識者から構成される「IT戦略会議」によって取りまとめられました。
残念ながら、この「世界最先端のIT国家」という表現は、令和2年頃まで約20年間ほど国のIT戦略で用いられることになります。

ところで2000年と言えば、中学生だった私が初めて親にパソコンを買ってもらった年です。
初PCはIBMのThinkPadで、おかげで息子はITコンサルになりました。天国の父ちゃんありがとう。

e-Japan戦略(平成13年1月22日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の第1回会合において、国家戦略として決定されました。
中身は「IT基本戦略」と同じですので飛ばします。

e-Japan重点計画(平成13年3月29日IT戦略本部)

本重点計画は、以上のような取組を経て策定された「e-Japan戦略」を具体化し、高度情報通信ネットワーク社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策の全容を明らかにするものである。

e-Japan重点計画「はじめに」より

e-Japan戦略を具体化した実行計画です。今も昔も「重点計画」なのですね。
PDFではなくWeb(HTML形式)で公開されています。モダンですね。
また、この時点で既に「デジタル・ディバイドの是正」についての言及が入っており、現在もデジタル庁に引き継がれるDNAを感じることができます。

この重点計画は気になったポイントも多いのですが、少しだけ抜粋します。

「e-Japan重点計画概要」より

行政の情報化
・2003年度までに実質的にすべての申請・届出等手続をオンライン化するため・・・
・2004年度までに原則として入札・開札を電子化

2005年の姿

○ 原則として24時間、自宅やオフィスからインターネットを利用してすべての行政情報の閲覧、申請・届出等手続、手数料納付・政府調達手続が可能

「e-Japan重点計画概要」より気になった点を抜粋

なんというか、20年前の文書とは思えない既視感ですね!

e-Japan戦略Ⅱ(平成15年7月2日IT戦略本部)

20世紀に工業社会として繁栄した我が国は、ITの戦略的な利活用を軸として、新たな価値に基づいた社会を築き上げる挑戦に立ち向かわなければならない。目指すは、国民一人ひとりが知識を介した繋がりを持ち、地理的・身体的制約にとらわれずに安心して暮らし、利便性のみならず知的感動を享受できる、「元気・安心・感動・便利」社会である。

e-Japan戦略Ⅱ    基本理念より

第一期のe-Japan戦略が「基盤整備」だったのに対し、第二期となるe-Japan戦略Ⅱは「IT利活用」がテーマとなっています。
書き出しも、第一期は「我が国は遅れているヤバい」だったのに対し、第二期ではいきなり「元気」「安心」「感動」といったお気持ちワードが登場します。
「利便性のみならず知的感動を享受できる」という部分は、今で言うUXみたいな感じでしょうか。

内容を読むと、例えば行政サービスにおいては、以下のような省庁・自治体間の連携によるワンストップサービスの構想が出てきます。

電子政府の総合窓口と各府省、地方公共団体等のシステムと連携し、関連手続を一括してオンライン申請できるワンストップサービスを整備する。

e-Japan戦略Ⅱ  「7.行政サービス」より

IT新改革戦略(平成18年1月19日)

e-Japan戦略Ⅱから2年半後、「改革」と名のつく新戦略が出ます。
表題に「首都大学東京」的なセンスを感じるのは私だけでしょうか。「新」の位置は本当にそこでいいの?

このIT戦略のサブタイトルは「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」です。本文中には「ユビキタス」という言葉も登場し、時代を感じることができます。

概要資料のポンチ絵を置いておきます。

IT新改革戦略 概要資料より

(ぜんぜん意味わからん)

デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜(平成21年4月9日)

我が国の IT 戦略は、2001 年に施行された高度情報通信ネットワーク社会形 成基本法(平成 12 年法律第 144 号)に基づき、「e-Japan 戦略」を決定して以来、本格的に情報通信基盤の整備に取り組み、「e-Japan 戦略Ⅱ」では利活用 の方向への進化を目指し、現在の「IT 新改革戦略」(2006 年 1 月 19 日)においては、「構造改革による飛躍」「利用者・生活者重視」「国際貢献・国際競争 力強化」の理念の下、2010 年の目標年度に向け、施策の推進を図っているところである。 一方、この間、デジタル技術は日進月歩の速さで進展を遂げ、既に 3 年を経た現行戦略では想定していなかった技術が具現化しつつある。加えて、百年に一度とも言われる金融危機が世界を襲い、これに伴う我が国経済の失速も著しく、これに対する処方箋が強く求められている。米国、英国、韓国等 の国々においては、このような危機に対し、デジタル技術に焦点をあてた新たな戦略を相次いで検討・策定しているところである。 このような事態に鑑み、2008 年 12 月 19 日、IT 戦略本部では、現行の IT 新改革戦略の期限を待たずに、直面する経済危機を乗り越えるとともに、我が国経済の底力を発揮するためのデジタル新時代を見据え、2015 年に向けた新たな中長期戦略を 2009 年 6 月末までに策定することを決定した。また、このうち、現下の経済危機を克服するための三か年緊急プランを同年 3 月末までに、先行して策定することとした。

デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜 冒頭の書き出しより

IT戦略に危機感が戻ってきました!
サブタイトルには「緊急プラン」と書かれています。なんと分かりやすい!
2008年と言えば、もちろんリーマンショックが原因です。
現行戦略では想定していなかった技術が具現化しつつある。」の部分は、ちゃんと読んでませんがクラウドコンピューティングのことだと思われます。

国民電子私書箱構想

このIT戦略で特に目についたのはこれです。
「ワンストップの実現」は、情報提供ネットワークシステムによるワンスオンリーに繋がっていますね。「行政の見える化」はマイナポータルでしょうか。
右下には「クラウド」の文字も見えます。クラウドという概念が初めて登場したのも(たぶん)このIT戦略です。

デジタル新時代に向けた新たな戦略〜三か年緊急プラン〜 概要資料より

そして世界最先端国家創造宣言へ

平成25年度以降は、「世界最先端IT国家」の創造を宣言しまくるフェースに入ります。
このあたりは仕事で散々読んでいるので特にコメントはありません。本当にただのリンク集です。
気が向いたら別記事などでまとめたいと思います。

まとめ

このエンドレスな感じ、そろそろ断ち切らなければなりませんね。

謝辞

この記事は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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