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からあげ

※ちょっといつもと違った投稿です


私の両親は共働きでした。
母は私が産まれてすぐ、生後3ヶ月になるかならないかくらいで仕事を始めたそうです。
ちなみにフルタイムです。

時代的には共働きが少ない時代だったのかもしれませんが、私が住んでいた地域では共働き家庭が多かったので、小学生の時に帰ったらお母さんが家にいるという家庭は少なめの地域でした。

私は一年生から鍵っ子。
弟が小学生になってからは、兄弟一緒に親の帰りを待っていました。
母と父は大体同じ時間に帰ってきます。

母は日によっては買い物をして帰ってきます。
そこから慌ただしく夕飯の準備。
私も手伝ったり、宿題に追われて手伝えない日もありました。

父は破天荒でした。
ザ!昭和な男な上に破天荒。
厄介です。

父はいつも定位置から動かないでお酒ばかり飲んでいるんですが、趣味は料理。
思いついたように突然料理を始めます。

でもその料理は”思いつきで今作りたくなった料理を作る”という感じ。
生きるための料理ではないんです。
気まぐれ。

その反対に母の料理は生きるための料理。
家族と子供達の腹を満たすための、毎日の食事作りです。
趣味ではなく家事。

目的が違う2人の料理。

父は母の手伝いなんて一切しません。
思いつきでキッチンを半分占領したり、時には居間のこたつの上で調理をしたり。
コンロは二口しかないので、父が使い出すと母は困るんです。
一応一つは空けてくれたりはしていたようですが。

父の料理は気まぐれなので、別に夕飯時に合わせて作るわけではありません。
というか、その日に出来上がらないことも多い。
数日煮込んだもつ煮込み、スープから作るラーメン、コトコト煮込みまくったビーフシチュー…
時には夜中の23時とかに出来上がる。
そしてそれを食べさせるんです、家族に。
夕飯も終わってるし、なんならみんな寝るよ。
でも父は作ったものを食べさせたいんです。
まぁ、自己満、自己中です。

でも、美味しいんですよ。
お店で出てくるレベル。
そら、子供の時の私ずっと太ってるわけだよ。

母の料理は日々暮らしていくための料理。
フルタイムで働いて、帰宅して、子供たちを寝かせる時間も気にしながらの食事作りになります。
タイムリミットがあるわけです。
しかもキッチンの半分を父に占領されたりもするので、なかなか捗らない日もあったと思います。

だから「いかに時短で作るか」が勝負になってくる。

私は唐揚げが好きです。
子供の頃から。

父の唐揚げと母の唐揚げは違うんです。
父は、こだわりの漬けダレで作ったお店のような唐揚げ。
母は、市販の唐揚げ粉で作った唐揚げ。

どっちの方が多く食べたことがあるか…
母の唐揚げなんですよね。
つまり、市販の唐揚げ粉のからあげ。

私にとってはこれがお袋の味です。

もちろん父の唐揚げはとっても美味しかったです。
そんな記憶があります。
でも、はっきりと味を覚えてたのは母の唐揚げ。市販の唐揚げ粉の方です。

私は結婚してから、唐揚げを作るときは漬けダレに漬け込んで、片栗粉をまぶして作っていました。
1人で子供達の面倒を見ることが多いのですが、連休で疲れてしまったのもあり、今日ふと「あ、唐揚げを唐揚げ粉で作ってみようかな」と思い立ち、結婚後初めて母が使っていた唐揚げ粉を購入しました。

作ってみたら子供達にかなり好評。
私も食べてみました。

あ…お母さんの唐揚げだ。

確実にお袋の味になってました。
舌が覚えてた。
お袋の味を気軽に買ってきて再現できるなんて、なんて幸せ者なんだ!と思っちゃいました。
ありがとう、日清製粉さん。

父が作ってくれていた料理は市販のものでは再現できません。
父のオリジナルレシピだったので。
私にはお袋の味に加えて、親父の味があるんです。
親父の味に関しては、数品だけ母から父の作り方を聞いて、私が好きだったものだけ父の味を再現はできます。

でもね、市販でお袋の味を気軽に味わえるのも最高だな!と思ったんですよ。

お袋の味って、オリジナルじゃなきゃいけない必要もないんじゃないかなと思っていて。
「母が私や兄弟を育てるために作ってくれていた唐揚げ」
それだけでもう特別なんじゃないかなって思うんです。

母親はこうあるべき!
みたいなのを目にしたり言われることもあるかと思うんです。
でも、母親だってみんな違う人間で、家庭環境もさまざまなのに、なんで「母親」で一括りにされて、◯◯であるべき!になるのかな?不思議でなりません。

父の唐揚げも母の唐揚げも大好きだったんですよ。
つまり、手の込んだ唐揚げでも、市販の粉を使った唐揚げでも美味しいもんは美味しい。

子どもにとっては「◯◯であるべき!」みたいなのって、どーでもいいんじゃないかな?って。

私も上の子供が生まれた時に、謎の使命感がある時期がありました。
いや、それはそれでいいんですよ。
でもそんなに自分のこと追い込まなくてもいいのでは?と今は思います。


あー、美味しかったな、からあげ。

また作ろう。

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