見出し画像

国籍という問題ーー温又柔著『「国語」から旅立って』

 温又柔著 新曜社よりみちパンセ 2019年出版

 温さんの言語感覚がもっと知りたくなって、簡単に読めるこの本を読んでみようと思って、図書館で借りた。

 よりみちパンセから出ていたから、ティーンに向けて書かれていてとても読みやすかった。私としては、もうちょっといろんなことが考察してある文章を読みたかったが、温さんにとっては、彼女が今まで生きてきた言語体験は、とても重要なもので、それを若者に伝えたい、という感じが伝わってくる本ではあった。

 オン・ユウジュウ という名前をON YUUJUUと英語で書くことと、ローマ字読みでなくて、ウェン・ヨウロウ WEN,YOUJOUと表記すしたら、日本ではバツをされたという話は、なんか変なのと思った。この話は、深く考えていくと面白い話で、日本語をローマ字に変換するというのは、世界に通じない話なのかな、とちょっと思った。ローマ字表記は日本語の発音で、アジアの言語を英語の文字にアルファベット変換するのはいろんなパターンがあると思うが、日本語のローマ字変換は英語話者の人が、発音しにくい変換なのかもしれない、と思った。

 昔、私の中学校では、「国語」という言葉が変、という話で、「日本語」という科目名でよんでいたんだけど、温さんも、「国語」の「国」がどこの国なのか、という話をしていた。ということは中国も、母国の言葉の科目名が「国語」というのかもしれない、ということは割と新鮮な発見だった。

 高校の中国語の授業中に「あなたは日本人ですか」と中国語で聴かれると、「いいえ、わたしは中国人です」と答える。大学の授業で、南方訛り、を指摘される。「わたしは自分を中国人ではないと思っています。わたし自身は台湾で生まれて、わたしのお父さんとお母さんはどちらも台湾人です。だからわたしも台湾人ですよね?」

 という話は、単純に日本と中国と台湾という三つの国をまたがる国のアイデンティティを抱える温さんの心の葛藤のようなものを感じる。葛藤というか、個人的にはどの国が一番好きとかそういうのはないんだが、ただ単に、国籍というものがどこなのか言わなきゃ生きて生きづらいという世界を語っているように私は感じる。それは、日本と中国と台湾、この三カ国というのが割と、そういう関係にあるようにも思う。

 とにかく、温さんみたいな言語感覚を持った人の話を、若いうちに知っておくべきだと私は思う。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?