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伝統文化のコスモロジーが持つ意味

「シャーマンと伝統文化の智恵の道」に書いた文章を転載します。


伝統文化の世界観は、単純に現代の科学的・合理的な見方からすれば、単なる妄想や迷信の類いに過ぎないでしょう。

ですが、伝統文化の中でも、原初的な、狩猟文化の「アニミズム」的な世界観は、人類が数万年を生きた世界観です。

ですから、それは、少なくとも、人間の心の構造を正直に反映した、普遍的な価値を有したものであるはずです。

伝統的世界観が持つ意味の一面を、抽象的になりますが、簡潔に書きます。


見えない世界と無意識的な心の働き


伝統文化は、冥界や霊界などの「目に見えない世界」を前提とします。

「目に見えない世界」は、地下のような普通には行けない世界であったり、地上世界の背後にあって普通には見えなかったりする世界です。

この世界は、「見える世界」の基盤となり、それを作っている世界です。

そこには、「見える世界」の原型となる存在と、それを現す創造力があります。

人間の心の活動のほとんどは無意識的です。

「見える世界」は、無意識的な心の活動によって、感覚をもとに言葉やイメージや認識の枠組みを使って構成・投影されて、最終的に意識化されたものです。

ですから「見える世界」と「見えない世界」は、「意識」と「無意識」に対応し、それらを象徴します。

つまり、「見えない世界」は、「無意識」的な心の活動が投影され、それを象徴します。

また、「見える世界」を形作る感覚や概念、イメージは、よく言っても、自然の一部を反映したものでしかありません。

言葉やイメージは、静的で抽象された人工物なので、動的で多様な自然を十分に捉えられません。

ですが、無意識的な心の活動には、自然現象と共通・類似する動的で多様な側面があります。

言葉やイメージが意識しやすいのに対して、象徴の働きや、直感、直観、雰囲気的なものは意識しにくい心の働きです。

これらは、自然同様に様々な心の要素が関係する複雑な働きです。

言葉やイメージのように表象を持たないので、意識化しにくいのです。

ですが、表象はなくても、「あれ」として内省的に思考できます。

ところが、言葉やイメージとして表現しようとすると、多くの苦労と言葉が必要となります。

これらは無意識に働きますが、文化的な象徴表現、象徴的儀礼によって意識化することで活性化することができます。


象徴と人格の全体的成長


現代の科学的な世界観を作る認識が概念的であるのに対して、伝統文化のそれは象徴的です。

伝統文化の世界観は、それぞれの自然観察に基づきます。

象徴は、自然の認識によって有効に働きます。

象徴は、連想によって様々なものを結びつけます。

そのため、象徴は、本質的に脱領域的、多義的となります。

それは、様々な「見える世界」と「見えない世界」、マクロコスモスとミクロコスモスを結びつけます。

つまり、自然と社会と身体と心の表裏両面を結びます。

ですから、「見えない世界」の神霊も、自然の力や無意識的な心の働きなどを象徴します。

象徴は、人間の諸能力や人格の傾向、無意識の特定の領域を指し示すだけではなく、それを活性化します。

そのため、体系的な様々な文化的な象徴表現、儀礼を通して、諸能力や人格の全方向的な成長を促します。

また、伝統的世界観が、「見えない世界」を重視することは、自我や意識、そして、言語秩序を中心にせず、それらを作っている無意識な働きの創造性を重視することになります。

伝統文化は、自然の諸現象の死と再生を重視し、それに対応する神々の死と再生を語り、それを反映する定期的な儀礼を行います。

それによって、人は繰り返して無意識へと心を開き、沈めることで、意識を広げ、人格の中心を無意識の創造性へと近づけることが促されます。





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