マガジンのカバー画像

【2月】366日それぞれのすこしふしぎ

21
◯月◯日のすこしふしぎな話。 2月1日~2月29日
運営しているクリエイター

記事一覧

2月1日 テレビ放送記念日

 過去からタイムスリップしてきた人が今うちにいるのだけれど、どうやらはじめてテレビを見たらしい。箱の中に人が閉じ込められている! と大騒ぎだ。 「大丈夫だよ、これ、テレビっていうんだよ」 「て……てれび……?」  彼は、この時代にまだ慣れていないのだ。戸惑うのも仕方がない。怖くないよ、と優しく教えてあげる。 「で、でも」 「うん、うん、大丈夫だよ」 「やっぱり、こんなの、テレビじゃない。ぼ……僕の知ってるテレビっていうのは、モニターに映像が映っているもので、こんな、拷問器具み

2月2日 交番設置記念日

 道の向こうから、お巡りさんが自転車に乗って走ってきた。  私達が端の方に寄って道を譲る仕草をすると、彼はぺこりと笑顔で頭を下げてからそのまま走り去っていく。 「パトロールしてるんだよ」 「誰もいないのに?」 「アタシ達がいるじゃないか」 「それはそうだけど」  ここの廃村には幽霊が出る、と聞いて、オカルトサークルに所属する私と友人は、旅行がてら幽霊見物にやってきたのだ。果たして幽霊はすぐに見つかった。  今、私達の目の前を走り去っていった、半透明のお巡りさん。  もう誰も住

2月3日 節分

 赤鬼は泣いた。  豆をぶつけられたからだ。それも親友だと思っていた青鬼にぶつけられたのだ。  青鬼も泣いた。  節分というものを最近知った。なにやら健康祈願の為に豆を相手に投げつける行事だとか。そこで親友の赤鬼に豆をぶつけたら泣かれた。親友を泣かせた。つら。  黄鬼は戸惑った。  近くの村で聞きかじった節分なるものを青鬼に教えてやった自分のせいで、悲劇が起こってしまった。どうしたものかとオロオロする。  緑鬼は豆を食べていた。  豆をぼりぼりぼりぼり食べていた。この豆は、自

2月4日 西の日

 西を目指す事にした。  故郷を出て、俺はひとり「ンメェ」じゃなかった、大羊とふたり、旅に出る。  大羊を知らないか? あんたの住んでる辺りには居ないのか。大羊っていうのは、まあ名前のとおりにでっかい羊でな。緑色の毛が特徴的な種だ。うちの地方じゃあ、若者が大羊と一緒に旅をする風習があるんだよ。  ……俺は若者って歳じゃないけどな。ずっとうちのじいさんの介護で忙しくてな、旅に出そびれてたんだよ。だけどそんなじいさんもついにくたばって、俺は介護から解放された。やっと、俺の旅が始ま

2月5日 ふたごの日

 私の幼なじみはふたごだ。  フミちゃんとイツムくん。二卵性の男女のふたごだけれど、一卵性かと思うほどによく似ている、中性的な姿のふたり。小学校でも、中学校でも、同い年の私とふたりはずっと同じクラスで過ごしてきた。なんせ、私達が生まれ育ったのは小さな町で、子供も少なく、学校には一学年一クラスしかなかったのだから。  変化があったのは高校に進学する時だ。  私は遠くの街の学校で寮生活。イツムは家から通える距離の学校へ。そして。 「え!? フミそんなとこまで行くの!?」 「うん。

2月6日 ブログの日

02/06  このオカルトブログを始めて祝三ヶ月!  全然閲覧数がのびません!  でもめげません!  今日は、とある儀式を試してみようと思います!  なんの儀式かって?  ふふふ、それは、……時を戻す儀式です。  必要な道具も全部揃えました。今は高揚する気持ちを落ち着かせる為にこの文章を書いています。このブログを書き終えたら……ついに儀式の始まりです。  結果はまたここに書きますから、皆様、絶対見に来てくださいねー! 「これが……娘さんのブログの内容ですか」 「ええ。これと全

2月7日 フナの日

 金魚ってフナから出来てるんだよって友達が言ってた。  本当かなあ、全然違うじゃんって思ったけど、でもその友達ってすっごい頭のいい子だから本当かもしれないって思って、試してみる事にした。  お家の物置に使ってない水槽があるのは知ってたから、それを出してきて、洗って綺麗にして、お水を入れて、それから、フナを買ってきた。  魚屋さんに行って、フナください! って言ったんだ。 「おつかいかい? 偉いねえ」 「ううん。私が使うの」 「お料理するのかい? 気をつけてな。包丁とか火とか使

2月8日 〒マークの日

 〒があった。  友人の住む部屋の壁に、〒マークが書いてあった。  赤いペンキで、でっかく。 「なあ、なにこれ」 「郵便のマーク」 「じゃなくて、なんでこんなもの書いちゃったんだよ。賃貸だろ、大丈夫なのか?」 「僕がやったんじゃないよ。知らない内に書いてあったの」  ある朝目が覚めると壁に〒があったのだ、と友人は主張する。そんな事あるか? 寝ぼけたとか酔ってたとかで自分で書いたんじゃないだろうか。全く心当たりはないと友人は言い張るけれど。 「消そうとしても消えないし、郵便屋も

2月9日 漫画の日

 妹がマンガを読んでいた。  マンガ、というタイトルの本を読んでいた。  漫画の中に出てくるような、表紙に「マンガ」とだけ書かれた本を、読んでいた。  気になったので借りて読んでみる事にした。  表紙をよく見ても、「マンガ」の三文字以外に一切の情報がない。作者名もないし絵もない。開いて中を見てみる。そこには当然漫画があった。  そう。漫画だ。  漫画だ、という事は言える。しかしそれ以上は説明できない。言葉が出てこない、頭の中がまとまらない、いや、まとまるとかまとまらないとか、

2月10日 左利きグッズの日

 近所の雑貨屋は、何故か毎年この時期になると左利きセールを行う。左利きの人に向けた様々な商品が、安くなって棚に並ぶのだ。  と、いう話をヒダリさんにしたところ。 「そりゃ十日が『左利きグッズの日』だからだろう。知らなかったのかい?」  なんて返された。知らなかった。ググったらすぐに出てきた。というか、その会話をした後でセール中の店を見に行ってみれば、「左利きグッズの日」と書かれた紙が壁に貼ってあった。自分の観察力のなさを知る。 「あのセールには私も毎年お世話になっているよ」

2月11日 建国記念の日

 今日は、この国が建った記念の日。皆で建国祝いのパーティーだ!  うちの国は赤ん坊から老人まであわせて百人ほどもいる大所帯なので、こういう時はとっても賑やかで楽しい。広場の中に国民皆が集まって、美味しい料理を食べたり会話を楽しんだりしている。私もお寿司をもぐもぐ味わっている、と、ふと、広場の片隅にガクシャさんが座っているのが見えた。  広場は華やかに飾り付けられている、広場の壁も床も天井も、カラフルにペイントされている、その中でガクシャさんだけがいつもと同じしかめっ面をしてい

2月12日 レトルトカレーの日

「旨い! 旨いよ、これ、お袋の味そっくりだ」  旦那が大喜びで食べているカレー。お義母さんの味そっくりらしいカレー。  それは、私の買ったレトルトカレーだ。  湯煎したレトルトパウチのカレー。レンチンしたパックのご飯。ただ温める事しかしていないカレーライス。それをお袋の味だと言ってはしゃぐ旦那。  ああ、本当……良い時代になったものだ。 「でも、悪いなあ。結構高いんだろ、このカレー」 「あら、家計の心配? 珍しい。いいわよ、ちょこっとお高めの食品を買うくらいの余裕はあるんだか

2月13日 日本遺産の日

 僕は学校の宿題をするので曰本遺産について調べました。  曰本各地を旅する事によって僕は様々な曰本遺産を知りました。たとえばアイヌの文化。たとえば弥次さん喜多さん。たとえば琉球料理。それらの中には様々な物語が内包されています。僕はそれらを勉強してとても興味を惹かれました。  曰本語の勉強も僕はしました。  曰本語の仕組みは僕の母星語と比較してとても複雑でしたが、今はこのように自然な文章を書く事が可能になりました。曰本語は独特であり面白いです。  僕は母星に帰る事を中止し曰本で

2月14日 バレンタインデー

 私の血液はチョコレートでできているのよ。  彼女がそう発言した時、僕は当然ウソだと思ったのだけれど、彼女の手首の切り傷から流れ出た液体は確かに茶色く、甘かった。ミルクチョコの味がした。  二月十四日、招かれた彼女の家の中、彼女の部屋の中、彼女のベッドの上で、僕は彼女の手首に口付けをして吸血鬼みたいに血を吸った。 「だけど、どうして君の血はこんなにも甘いの」 「血だけじゃないわ。私は全身が甘いの。あのね貴方にだけ教えてあげる。内緒よ。私の体はお菓子で作られているの。パパが私を