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【IDと教員研修21】「指定したものを覚える」言語情報の指導方略

前回の記事では,ジャスパー教材を基に,教材設計について考えてきました.今回からは,開発した教材を指導するための教授方略について,学習目標の5分類を基に教員研修をベースに考えていきたいと思います.一つめは,「言語情報」です.


基礎の基礎.「覚えさせる」ということへの指導方略

「漢字を何度も書いて覚えましょう」
「何もみなくても解けるようになるまで,やり方を覚えましょう」
という学習,小学校や中学校で経験した人が多いでのはないでしょうか.

令和の日本型学校教育においても,基礎基本の知識・技能として,「覚える」ということが求められます.最近では,「暗記より思考」という考えのもと,ただ覚えればよいのではない,という風潮があるかもしれません.

とはいえ,基礎基本は,考えるためのベースになるものですから,「覚える」といった学習は,これからも何らかの形で必須となりそうです.

少し前置きが長くなりました.

「言語技能」という学習目標は,「指定したものを覚える」という特性をもっています.リストを覚える,再生できる,というように定着を図ります.

とはいえ,前述のような漢字をひたすら書く,計算をひたすらやる,というのは,あまり効果的な指導方略とはいえません.そういった学習も必要なことはあるかもしれませんが,効率的な覚え方をしっかり指導できるようになることも大切です.

「覚えるべきもの」の整理からはじめる

学習者は何を覚えるべきかを整理します.覚えやすさを設計することです.
例えば,覚えるべき内容を分類し,類似性や特徴別に分けます.
漢字であれば,意味の類似性,形の類似性,活用例の類似性などが考えられそうです.

類似していることがわかりやすいよう,図表を使うことも効果的です.

「覚え方」という方略の幅を意識する

「語呂合わせ」も一つの覚え方です.年表と史実,元素記号,√(ルート)など,学生時代に最もよく活用した方略である気がします.
他にも,イメージで覚える,喩えで覚えるといった工夫が考えられます.
記憶術という言い方でノウハウがあるかもしれません.

複数の言葉を覚える際,「部屋」をイメージして,一つ一つの言葉を様々な「部屋」に入れていくことで,「寝室は〇〇」「バスルームは〇〇」といった再生方法があると聞いたことがあります.いろいろですね.

覚えているかどうか,練習する

指定されているものを全て覚えられるようにするには,様々なテストの方法が考えられます.
マルバツ問題,穴埋め問題のように,覚えているかどうかがすぐにわかるようにします.

様々な方法で確かめ,覚えたことと覚えていないことを区別する

練習問題を行う際には,何度も同じ問題ということは限りません.
語順が異なったり,文脈が違ったりする中で知識を確かめることが考えられます.

また,何を覚えているのか,覚えていないのは何か,をフィードバックできるようにします.
「あと○個覚えれば終わり」ということは見通しにつながります.よく,LMSで学習を進める時には,自動採点システムで合格がでるまでひたすら問題を解くという練習をすることがあります.
しっかり覚える,という学習は,自ら覚えようとするための工夫ができるようにするための学習とも言えるかもしれません.

教員研修でも,このような指導方略に関する内容で研修をつくることができそうです.基礎的な知識・技能は,「反復が正義」といわんばかり,いまだにドリルをひたすらやれば大丈夫という誤解がありそうです.可能なら,様々な覚え方を身につけられるようにし,その子自身が覚え方を考えていくことができるようにするための指導観のアップデートができる研修につながるとよいなと思います.

次回は,知的技能の場合で考えていきましょう.


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