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取材した奇談

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心霊的・不可思議現象以外の、珍しい話、奇妙な話、人が怖い話などで、かつ取材した話です。
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記事一覧

【取材した奇談31】茨城奇談・二篇

茨城県に纏わる奇談をご紹介する。二話とも女性Dさんから伺った。 【一話目】忘れられないお花見 十年以上前、彼女は茨城県水戸市の桜山公園に四~五人で夜桜を見に行った。 桜スポットに歩いて向かっている途中、近くの巨木にふと視線を向けると──。 「藁人形が釘で打ち付けられてました。人形の顔、両手、両足の五ヶ所にそれぞれ釘が刺さってて。人形の顔の部分には写真が貼られてましたが、何が写っているかは分からないぐらいグチャグチャになってました」 ──桜を見る前に、ものすごくテンショ

【取材した奇談30】分かる

女性Xさんには、Yさんという女友達がいる。Yさんは一時期、大阪市内のマンションに家族で住んでいた。Xさんは一度だけそこに遊びに行ったことがある。新しくて綺麗なマンションだったという。 Yさんの部屋に通されてほどなく、彼女がこんなことを言い出した。 「ここな、めっちゃ飛び降り自殺多いねん」 「え? ここに住んでる人が何人か飛び降りたん? こんなに新しいのに?」 「ううん。全然関係ない人が来て飛び降りるねん」 「何でまた……。めっちゃ迷惑やん」 「たぶん、この辺でいちばん高い建

【取材した奇談29】場所を尋ねる男性

「こないだねえ、青白い顔したサラリーマンが店に来たのよぉ」 1990年代半ば、寿司屋で遅番のバイトをしていたKさんに、常連客である小料理屋の女将さんが話しかけてきた。女将さんによれば、そのサラリーマンぽい男性は店の引き戸を開けて少しだけ顔を覗かせて、こう聞いてきたそうだ。 「……すみません。この辺でいちばん高い建物は、どこでしょうか……」 そのとき、店には女将さん、男性店員一人、客三人が居合わせた。 彼女らは直感した。 このひと、飛び降り自殺するつもりかも──。 小

【取材した奇談28】街の珍人、二題

【1話目】ビキニおばさん 智昭さんは、郵便局の窓口業務を担当している。 その出来事は、ある夏の昼下がりに起きた。 「いきなりビキニ着た女性が入ってきて。四十代ぐらいのおばさん、って感じの。派手目のビキニに、ポシェットみたいなのを持ってました」 局内にいた職員と利用客の視線が、一斉に彼女に注がれる。 その状況に、女は叫んだ。 「テメェら、何みてんだよッ」 その後は複数の職員によって、速やかに外につまみ出されたという。 「そりゃあ、そんな格好してたら誰でも見ますよね」 呆れ

【取材した奇談27】謎の千円札

「お、ムーンハイツさん待ってたよ。見せたいものがあるんだけど」 ある日の夕刻に行きつけの飲食店のドアを開けてすぐ、店主からこう言われた。 で、見せてもらったものがコチラ。 2021年9月ごろ、お客さんが会計時に使用した一枚の千円札とのこと。 店主は私が怪談・奇談収集しているのを知っているので、この奇妙なお札を私に見せるために保管してくれていた。一度、店主は誤ってコンビニの自動精算機に投入してしまったらしいが、運良く(?)機械に弾かれて手元に戻ってきたそうだ。 文字部分を

【取材した人怖話26】事後報告

十年以上、前の話。 女性Kさんの兄は、中型バイクの交通事故に遭って亡くなった。 その後、警察から返還されたバイクを販売店に引き渡し、処分を依頼した。兄はその販売店でバイクを購入し、いつもその店でメンテナンスしてもらっていた。 引き渡しの際、販売店のオーナーは兄の事故に関して「ヘルメットが真っ二つになるなんて見たことがない。有り得ないです」と、かなり動揺していた。(販売店は警察からも連絡を受けており、事故の詳細を把握している)。 バイクを引き渡してから、およそ一か月後。

【人が怖い実話25】値下げ

S子さんが、とあるビルに出向いた時の話。 上階で用事を済ませてエレベーターに乗り、一階に到着した。 箱から降りてフロアに出ると、誰かがブツブツと呟く声が耳に入ってきた。 その声の在り処に視線を向けると、フロアの奥の暗がりに立っている男が目に入った。五十代くらいの男で、「サラリーマンではなく、普通のオヤジ」という風貌。下を向きながら、何やら呟いている。 S子さんは立ち止まり、耳をそばだてた。 「……します……お願いします……お願いします……」 え? なに? この人……

【人が怖い実話24】占いビジネス

今回は怖い話というよりは、業界の裏事情に近い。私の体験談だ。 以前、占い師の先生に弟子入りして実際にお客さんを鑑定したことがある。 占いは副業として十分成立するのでは、と考えたからだ。自分自身はそこまで占いに興味はなく、ビジネスとして携わってみたいと思った。特定の資格も不要で、直接的にお客さんの役に立つという点も魅力的だ。 占いといえば対面鑑定が思い浮かぶかもしれないが、メール占い、電話占い、チャット占いなど、自宅で鑑定可能な形式もある。その場合、手の空いたスキマ時間に

【人が怖い実話23】殺してるよ(笑)

※動物好きな方は閲覧注意 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 大学時代の部活の同期らと呑んでいるとき、皆の仕事の話になったことがある。 製薬会社の研究開発職に就いている同期の男が、満面の笑みを浮かべなからこう言い放った。 「毎日、イヌ6

【人が怖い実話22】縁切り榎(東京)

東京・板橋にある「縁切り榎(えんきり・えのき)」と呼ばれる神社(榎木稲荷神社)に参ってきた。 写真のとおり榎の大木がそびえる神社で、悪縁切りというご利益がある。縁切り神社といえば京都市の安井金毘羅宮が有名だが、東京にも存在する。由来は最後にまとめる。 昼すぎに私が最初に神社の敷地内に入ったとき、黒服の中年女性がベンチに座って、今まさに絵馬に文字を書こうとしていた。思いつめた表情で、絵馬をじっと見ながら、書く内容を思い描いている様子だ。 女性はこちらに気付いていない様子だ

【人が怖い実話20】こんな部屋に入りました

孝弘さんが不動産管理会社に勤務していた頃の話。 二〇〇六年に消防法が改正され、全ての住宅に火災報知器の設置が義務付けられた。この法改正を受け、報知器の設置のために管轄の部屋を訪ねて周ったことがあった。 たいがいの住人が気を遣って部屋を綺麗にしてくれるのだが、汚部屋を他人に見せても全く意に介さない入居者も多い。ゴミだらけ、本だらけの部屋はもちろん、女性の部屋で、床に散乱しているブラジャーを掻き分けながら報知器を設置したこともあるそう。だが、そんなのは序の口だ。 特に印象深い

【人が怖い実話19】誘う女(中国)

「子供の頃に、嫌な体験してますね」 と流暢な日本語を話すのは、中国人留学生の李さんだ。 2006年、中国の東北部。 当時小学2年の彼が放課後、学校の砂場でひとりで遊んでいたとき。 「こんにちは、ケンちゃん。元気かい」 ひとりの長身の老女が腰をかがめて、優しそうな口調で話しかけてきた。 だがしかし、自分の名はケンでもないし、その老婆も知らない人だ。 学校の関係者だろうか? でもこんな人は見たことない。 彼がどう対応していいか困惑していると、作ったような笑顔で彼女が続

【人が怖い実話18】スーパースターとの接触

本エピソードは、他人に怖い思いをさせてしまった者の視点から記述する。 Mという男性が経験した話。 2000年3月。その日、西日本の地方大学の卒業式(大学とは別の市内の公的施設で実施された)を終えた彼は、急いでアパートに戻り、スーツを脱いで運動用のウェアに着替えた。時間は夕方ごろだ。 なぜそんなに急いでいたかというと、大学のグラウンドで陸上部の友人らとサッカーをするためだった。Mが所属していた陸上部では、気分転換の一環として時折サッカーに興じていた。これがすこぶる楽しかった

【人が怖い実話17】地下鉄の男(フランス)

『バリ島のホテル(インドネシア)』(実話怪談7)の体験をされた健介さんの話。今度はフランス旅行中の出来事だ。 夜11時ごろにパリ市内の地下鉄でひとり、ホームでベンチに座って電車を待っていた。ホームには彼しかいなかった。反対側のホームも男性がひとり見えるくらいで、がらんとしていた。 「突然、反対側のホームにいる男が大声で何やら喚きだしたんだ。中年の男で、フランス語だったと思う。ちょうど自分の一直線上に立って、こっち向かって話しかけてる感じ」 言葉が解らない。周囲には誰もい