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やっぱり、この鞄じゃないと駄目だな。

学生時代から、ずっと愛用している鞄が有る。
一目惚れをし、バイト代を貯めて買った。
メンテナンスや修理をし、長年使っている。

もうこの鞄しか使わないと思って過ごしていたある日、たまたま入った店で何を血迷ったのか、たまたま目に入った鞄を何となく買ってみた。
使い勝手が良さそうだと思ったのだ。
軽いし、ポケットが沢山有る。

でも、何かが違う。
しっくり来ない。

使っている内に馴染むかと思ったが、なかなか馴染まない。
結局、ネットで売ってしまった。

鞄だけでなく、何に対してもそうだ。
一目惚れをした物は長年愛用するが、何となく買った物はすぐに売るか、捨ててしまう。
妥協出来ない性格らしい。

仕事も同じだ。
何も考えずに就職活動をし、流れで入社した会社。
今時珍しく、独身でフリーの社員、既婚でも子供がいない社員に人権が無い会社だった。

独身でフリーの男性は、半強制的にマッチングアプリをインストールさせられ、進捗を報告させられる。
独身でフリーの女性には、腫れ物に触る様に接する。
既婚で子供がいない社員には、何故子供がいないのかをしつこく聞き、子供を持つ事の素晴らしさを語る。

ハラスメント以外の何物でもない。
他人の事なんて、どうでも良いじゃないか。
多様性を受け入れる今の時代に、既婚で子供がいる事だけが自慢だなんて、哀れだ。

そんな社風が嫌で堪らず、お役所の様に非効率的に進む仕事にも興味を持てなかった為、早々に退職してフリーランスになった。
フリーランスになってから、会社員時代の2倍は稼いでいる。
興味が有る事には全力を注げるのだ。

恋愛も同じだ。
一目惚れをし、猛アタックの末、付き合えた彼女。
「人は人、私は私、ライバルは過去の私だけ!」というスタンスの大変さっぱりとした性格で、一緒にいて楽だった。

長い付き合いだったが、彼女が仕事で海外へ行く事になり、「日本へいつ帰れるか分からないから、待っていなくても良いからね。」と言われた。
彼女は好きだが、海外で生活する勇気が無く、別れを選んだ。

その後、何となく付き合った彼女は可愛らしいが、フリーランスに理解が無く、会社員の素晴らしさを度々語られた。
結婚願望が強く、相手に安定を求めた。

一緒にいると、古い価値観を押し付けられた会社員時代を思い出す。
次第に居心地が悪くなり、何度もフェードアウトしようとしたが、ハッキリと伝えないと分からないタイプだった為、こちらから別れを告げた。
彼女に合うのは、大手企業の会社員の男性だ。

やっぱり、あの彼女じゃないと駄目だな。

フリーランスだから、仕事は何処ででも出来る。
英語は苦手だが、頑張って習得すれば良い。
海外での生活は不安だが、その内に慣れるだろう。

彼女はまだフリーだろうか。
まだ間に合うだろうか。

緊張しながら、返事を待っている。


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