27「詩」ミモザ
ブルージュにある古い修道院の中庭
餌をついばむ白い鳩の周りに白い水仙が咲いていた
春風が水仙の香りを編み込んで
細く尖った葉っぱの先から
やわらかく伸びていた
その先にはミモザの花束
赤いエナメルの靴を履いた少女が
抱えきれないほどの花束を持っている
手には酷い火傷のあと
おかあさんがこの木を植えました
私を産んで戦いの中で死にました
少女が両手を広げると
ミモザは春風にのって
世界中に飛んで行った
そうして
戦いのために使われる道具を
すべて
ミモザの花に変えた
修道院の中庭では
相変わらず白い鳩が
餌をついばんでいる
羽の一部を切られた鳩は飛ぶこともない
空を見上げて鳥を見る
「鳥はいいな空が飛べて」
と思っている
いつもの変わらない穏やかな時間が流れている午後
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