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YONEX CARBONEX SLD Vol.2 納車に至る編

Vol.1から続く

この1年以内に1台リペア、1台新車、1台バラ完で3台増車したようなもので、流石に冷静になって「やりすぎ」「バカもの」「大うつけ」と己のアラートが大きな音で鳴っている。
まあそれはそうである。

しかし買えちゃう、となるとまたそれはそれでどうしたものか。と考えるものなのだな、と妙に他人事のような気がしつつも、流石に嫁に相談した。

かくかくしかじか、春の3月に注文してフレーム生産してもらって上がってくるのが6月として、30万の目処がつくタイミングくらいには乗れるようなイメージなのだよなぁ、と。

普通のご家庭であれば半殺しの目に遭っていても不思議ではないのかもしれないのだが、うちの嫁は私が YONEX 製品を愛用している事を知っており、なおかつ大怪我以前からいつかは、みたいな話をしていた事を覚えて……いなかった。
普通に忘れていた。

忘れていたのだが、YONEX 製品については理解があるようで、何せスノーボードも YONEX の SMOOTH を使っているのだからよく目にしていて当たり前なのだ。ついでに自分の SMOOTH と同じモデルをスノボ仲間も一年遅れくらいのタイミングで型落ちになる時に購入しており、何となくいいものなのであろう、という感覚はあるようだ。
なお、嫁はスノボの経験はあるにはあるが、基本的にスキーヤーである。逆に憧れの OGASAKA ユーザーである。(嫁が自分で買った)

そんな嫁は「欲しいんなら、そんな先ではなく今買え」と、むしろ私の背中を蹴っ飛ばしてきたので逆に面食らった。

そんなわけで新春早々キムラ自転車に向かう

広島市近郊で有名な自転車屋なので多くの人が知っているのが安芸郡海田町にあるキムラ自転車、現在の建屋になる前の頃から知っている老舗の自転車屋だ。

広島で YONEX のフレームを取り扱いをしているのが、自分の生活圏内だとここになる。
ANCHOR の購入店でもあり、心理的な障壁は高くはないのだが、流石に10年経っているので店員との関係はフルリセットゆえ、多少緊張感を持ちながら乗り込んだ。

2Fの奥に、フレームが飾ってあるのを見たことがあったので、サイズを確認すると、Sサイズ。
店員と相談して確認したところ、ジャストであれが良かろう、ということであった。ジオメトリー的にもMサイズはちょっと大きいだろう、と。
カラーはどうしますか、と言われたのだがマジョーラ的といえばいいのか、ブルーグリーンの1色なのだが艶ありとマットが選べるらしい。正直どっちでもいい、と思ったがコーティングが映えそうなので艶ありのノーマルの方を選んだ。別に店頭にあったのがそれだったから、ではない。断じて。

CANYON Aeroad に不満があったら、判断材料が「そこにあるそいつ」になっていたかもしれないが、別に生産になってもいいやのつもりでいた。元々六ヶ月くらい先の計画だったのだから。

で、結局店頭在庫のフレームが希望するサイズと一致するということで、店員にはパーツはどうするかと聞かれ「じゃあバラ完できるようにパーツ類全部持ってきますわ」と言ったのが1月最初の週。

ここからが長い戦いの始まりであった。

フレームセット販売であるが故に

CARBONEX SLD のフレームセットで具体的に購入できるのは、

  • フレーム本体

  • フロントフォーク(とコラム周りのパーツ)

しかない。マジでこれだけ。
そうなってきたら完成車にするまでにこれだけは揃えねばならない、というものを列挙する。

  • ステム

  • ハンドル

  • バーテープ

  • シフター

  • ブレーキ前後

  • ブレーキローター

  • フロントディレイラー

  • リアディレイラー

  • クランク

  • ペダル

  • ホイール前後

  • タイヤ2本

  • チューブ

  • スプロケット

  • シートポスト

  • サドル

  • ボトムブラケット

  • Di2バッテリー

このうち、ワイズロードのコンポセットで買えるのが「シフター」「ブレーキ」「ブレーキローター」「フロントディレイラー」「リアディレイラー」「クランク」「スプロケット」「Di2バッテリー(充電ケーブル込み)」である。
また DRIVE40D を先行して購入していたので、ホイールとタイヤとチューブは考えなくて良い。ローターも前160mm、後140mmを装着している。
逆にいうと無いものは、「ホイール」「ステム」「ハンドル」「バーテープ」「サドル」「シートポスト」「BB」あたりだ。

真っ白なキャンパスを与えられると逆に何を描いて良いかわからなくなるように、自分もさっぱりわからずに混乱した。

とりあえず手持ちの在庫品を確認すると、シートポストは ANCHOR のシートポストをアルミからカーボンに変更を試したくて買った、4000円しない中華の謎ブランドのものがあるが、それでも200gそこそこの軽量品なのでこれにした。

サドルに関しては 3D プリント型としていいものがないかな、と思っていたのだが、同時にスペシャライズどのパワー系のサドルも気にはなった。

フレームが高級車なだけにケチるつもりもここに至ってはなかったが、流石に試さないとわからないサドルで、さらに S-Works あたりになってくると値段があまりにもあまりに過ぎる。冒険に5万円以上は出せなかった。

結果的に、最近モデルチェンジしてしまったが、ELVES Magic OSSE (無印)の143mmをチョイスした。

これで座るところは目処がついた。
ステムは ANCHOR の NITTO 製アルミを選ぶことにした。ハンドルは最終的にステム一体型のハンドルバーを狙っているのだが、ポジションがもうちょっとハッキリとしてからステムとハンドル幅を考えたかったからだ。

ハンドルに関しては GORIX のエアロハンドル 380mm を選んだ。

おそらくサイズ的には400mmが適正な気はしているのだが、エアロポジションの事を考えると UCI ルールが変わって内側にシフトレバーを傾けられなくなったので、狭めのハンドルが良いかもしれぬ、という意見を見聞きしたことによる、ものは試し、という意図だ。

そうなると最終的にこれでいこう、という一体型ではないので安物でしばらくためそう、というところにコストはかけられない。

最後に BB は TOKEN の BB86 規格の製品から BB841T-41 を選んだ。
プレスフィットでも普通の工具で脱着できるものが好ましい、と思ったのと、セラミックベアリングが望ましいが、所詮は消耗品。
近年だと JTEKT の鬼ベアリングあたりも気にはなるが、それはそれとしてここはコスパを選択した。

組み立てから納車まで2週間程度と聞いたので、「じゃあ1月末には乗れるじゃねえすか」と、思わぬ速さにウキウキし始めた年初なのであった。

ここからが本当の地獄だ

誰もそんなの想像できない

1月最終週、15日頃だったかと思う。キムラ自転車から一本の電話があった。

「予定しておりました納車が不可能になりました」

なんでー!!??

とは取り乱さないのが大人である。目の前のワクワクが黒い色に塗りつぶされて行きはしたが、怒りまでは行かなくてもとりあえず説明は聞かねばならない。

「実はフレームのサドル固定部分に問題が見つかりまして」

聞けばこうである。
シートポストを差し込んでフレーム側からボルトで規定トルクで締め付ける。そうすると体重100kgが乗っても大丈夫、という固着力が発生する、はずだった。
ただどういうわけか今回の店頭在庫フレーム、シートポストを持ち込みのもので取り付けて規定トルクで締め付けても人が座ると沈み込んでいくという。

ほう、じゃあ持ち込んだ中華シートポストに問題が? と思って店にある他の同サイズ径のシートポストを差し込んでも結局緩い、という。で、規定トルクよりちょっと強め、くらいの問題ではなくかなりの強さで締めねばならないが、そうするとフレームの厚み的にこれ以上やると割れる、と。

「結論から申し上げれば、メーカー側の製造ミスと判断しまして、フレームを交換対応で調整しております」

とのこと。あとハンドルの製造が荒く、内側がバリだらけでケーブル通しにくいからあんまり使うのおすすめしない、と言われてしまい、トラディショナルなパイプ型の380mmカーボンハンドルを別途持ち込むことになってしまった。

流石に YONEX も初の事例だったそうだが、使えんものを出した責任があるので製造ラインは優先で確保してくれるというが、それでも2週間はかかるという。そして店頭に届き次第、旧フレームから新フレームへ移植である。

私が、
「やっぱりそれも店で2週間?」
「……申し訳ありません、フレーム到着から2週間を見てください」

ということで最短でも一ヶ月延期である。
軽く吐き気を感じそうだったが、平謝りする店員には
「これは自転車屋のミスでは無いので仕方ない」としか言いようが無いのであった。まあ自転車屋の2週間は他のお客さんのオーダー自転車を組む時間もあるし、ダブルチェックをするというのもあるだろう。
「これはフレームだけもらってバラ完を自分でやってたら気づけなかった問題だと思うので、逆に良かったと考えておきます」とも言った。これは思いつきではなく本心ゆえ、メカニックはプロに任すべきというのはこういうところからもいえる。
平謝りの店側も、こう言ってもらって救われた、とも。

ただまあ本心としては、

フリーザ様も激オコ

という気持ちも無くはない。どんだけの期間と金でロイヤリティを注いだと思ってんだ、YONEX よ。
まあこのくらいの歳になれば、こういうトラブルも喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということも知っているので鷹揚に構えておくべきものであろう。
いずれにしてもショップ側に非はないのは確かだが、まあ強いてあげるあんら壁に飾る前に今度は初期不良チェックはしてね…

パーツをカスタムする人は楽しいのかもしれないが

フレームセット買いというものを殆どしたことがなかった私としては、パーツを片っ端から選ぶというというのは意外とストレスがかかることだった。
例えばハンドル一つならば考慮する変数がちょっとしかないで、せいぜい芯芯のサイズはどうだ、形状はフレア型にするとかしないとか、エアロ型にするとか重量がどうだとか、ケーブルは内蔵できるかどうか。その程度である。
だがこれを全部のパーツに対してやっていく、というのは考える変数の量が圧倒的に多すぎてとてもくたびれた。完成車というのはそういう意味でとても楽だ。ホイールまで吟味することを含めるとゾッとする思考量が求められる。

とりあえず2月中旬、バレンタイン頃には目処が付きそうだということで話がまとまった。

仕方がない、ということではあるがため息しか出なかった。
これで海外生産フレームだったら一ヶ月では済むまい。国産だからこの程度で済んだ。下手すると生産終了が決まってもう作れない、と言い出す可能性だって高い。次期型で手を打たんか、とメーカーが言ってきたとして「じゃあそれいつ届く?」って聞いたら生産開始が半年後とか平気でいう連中も多かろう。
なので皆さんもアメ車、イタ車、スイス、フランス、ドイツと様々なメジャー海外メーカーのフレームにお乗りかと思われるが、あんまり妙なメーカーは選ばない方がこういう時はとても良いかと思う。(まあ代理店の対応力次第かもしれない)

伸びた首をさらに伸ばして、2月を待つこととなった。


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