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FM福岡「ユア・スクリーン・ミュージック」作曲家シリーズ エンニオ・モリコーネ特集(1996年放送)

FM福岡「ユア・スクリーン・ミュージック」作曲家シリーズ エンニオ・モリコーネ特集(1996年放送、放送日不明)

出演:宇野由紀子

放送曲目:
1. ペイネ 愛の世界旅行 Il Giro Del Mondo Degli Innamorati Di Peynet: Forse Basta (vocal)
2. さらば美しき人 Addio, Fratello Crudele
3. 華麗なる大泥棒 Le Casse
4. 別れ Incontro
5. 刑事キャレラ/10+1の追撃 Sans Mobile Apparent
6. タランチュラ La Tarantola Dal Ventre Nero
7. 進撃0号作戦 Che c'entriamo noi con la rivoluzione? (Theme/Revolution)
8. 家庭教師 La Cosa Buffa

・テーマ曲:「おとぼけ先生 The Great Imposter」(作曲: ヘンリー・マンシーニ Henry Mancini)
・九州電力CM曲: 大久保好子「ごめんね」


 生まれて此の方、転々としながらも、基本は大阪郊外暮らしですが、1996年春から1997年春までの一年間、仕事の都合で福岡・博多に住んでいたことがあります。博多在住時に愛聴したラジオ番組のひとつが、土曜の昼まえ、リラックスした時間帯(11時00分~11時55分)に放送されていた映画音楽の番組、「ユア・スクリーン・ミュージック」です。

 「映画音楽」は、音楽を熱心に聞き始めた10代初めのわたしにとって、さまざまな音楽への入り口でした。映画と言っても、映画館では怪獣映画しか見たことがなく、テレビでも新聞のテレビ欄に「SF」とタイトルの前に付いているものしか見ていませんでしたが、FM大阪「スクリーン8:30(エイトハーフ)」、NHK-FM「ポピュラー・アラカルト」、「「夜のスクリーンミュージック」(NHK-FMの番組のパーソナリティはいずれも関光夫さん)といった番組で、「映画音楽」枠で紹介されるストリングス作品、ポップス、ロック、フォーク、ソウル、ラテン、現代音楽に触れることで、たくさんの、いろんな種類の「好きな音楽」を見つけることができました。

 「ユア・スクリーン・ミュージック」を聞き始めたきっかけは忘れてしまいました。たまたまラジオを点けて、だったのか、新聞の番組欄を見て、だったのか。聞いてみると、本格的な映画音楽番組だったので、とてもうれしかったことは覚えています。1970年7月のFM福岡開局以来続いている老舗番組ということでしたが、落ち着いた口調の曲紹介に重点を置いた番組構成も、1990年代後半では、とても古風に感じられました。

 博多から地元の友人たちに手紙を個別に書く代りに、ミニコミを発行していました。聞いたレコード、読んだ本、足を運んだ展覧会や音楽会(ライヴ)のレポートと近況報告を載せていました。その1996年10月27日発行の第7号に、「ユア・スクリーン・ミュージック」の紹介を書いています。引用、と言っても、参照元は個人誌なので見られる訳ではないのですが、30年近く前に書いたものというエクスキューズ込みで、写します。

 九州だけでネットされている映画音楽紹介番組です。びっくりしたのが、紹介することに尽きるという構成。いまでは珍しい古典的かつ正攻法のFM番組なのです。俳優別に特集を組んだり、作曲家別に特集を組んだりするほか、年代別にまとめてみたり、ひとつの映画の音楽に関するエピソードを詳しく紹介したりとプログラムにいろいろな工夫がなされています。
 公開年、監督、音楽担当者、主な出演者といった必要最低限の情報をきっちり押さえた曲紹介には無駄がない。選曲も、主題歌や主題曲だけでなく、映画のなかでポイントになるものをサウンドトラックから拾い出してくる。なかなか聞けないような珍しいものもかかるので、うっかりできません。
 先日もエンニオ・モリコーネ特集でかかった『新・殺しのテクニック/次はお前だ』(GIORNATA NERA PER L'ARIETE)からの曲が良くて、モリコーネなんてコテコテやしなぁと聞き流していたので、慌てた。サントラ盤探しにちょっと苦労してしまいました。多作で、効果音的なお仕事もあるからといって、あなどってはいけません。

「ヘボン式日常会話の手引き」Vol. 1 No.7(1996年10月27日)

 エアチェックが残っているエンニオ・モリコーネ Ennio Morricone 特集は、放送日をメモしていないのですが、ここで書かれている日以降に放送されたものと思われます。あなどってはいけないと襟を正した格好です。「映画のなかでポイントになるものをサウンドトラックから拾い出してくる」ことは、上掲の放送曲目からも覗えると思います。

 番組構成を担当していたのは、FM福岡のディレクター、大薗哲夫さん。映画音楽のみならず、ポピュラーソングの熱心な紹介者であり、ライナーノートも手がけられていることを知ったのは、ずいぶん経ってから。ただ、大薗さんがとてつもなく熱心なひとであることは、番組が発行していた冊子「YSM The Paper For Screen Music Fans」に掲載された文章から察せられました。
 手元にある「YSM The Paper For Screen Music Fans」は、1996年6月20日発行のVolume 4。番組企画のリスナーのリクエストにもとづく「永遠の映画音楽名曲ベスト100」の1996年度の結果をまとめたものということで、番組に請求して送ってもらいました。ベスト100のリストも、全曲について、制作年、公開年、音楽、主題歌、監督、出演、受賞歴を付した労作ですが、概観、首位曲(「風と共に去りぬ」)のサントラ情報、「映画の記念切手」についてのコラム、ベスト100についての感想、以上すべてを大薗さんが熱のこもった文章で綴られています。この「永遠の映画音楽ベスト100」は、各年度の集計結果がFM福岡のサイトに掲載されていたようですが、2009年3月28日の番組終了に伴い、なくなってしまったようです。

 余談。番組は、九州電力提供でした。大林宣彦監督が「広島出身のわたしには原子力という言葉にはとても抵抗がありました」としみじみと語るCMが流れると、もやもやさせられたものです。CMソングとして使われていた大久保好子さんの「ごめんね」は大好きな曲です。


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