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FM大阪「ミュージックマガジン」第5週 ロックマガジン/ヴァニティレコード特集(1980年5月31日放送)

FM大阪「ミュージックマガジン」第5週 ロック・マガジン/ヴァニティレコード特集(1980年5月31日放送)

出演:山本沙由理、阿木譲(第5週ゲスト)

放送曲目:
1. R.N.A. Organism - Weimar 22
2. R.N.A. Organism - Yes, Every Africa Must Be Free Eternally
3. Tolerance - Green Paradise [unreleased]
4. Normal Brain - M-U-S-I-C
5. Normal Brain - You Are Busy, I Am Easy [alternative take]
6. Perfect Mother - You'll No So Witt
7. Mad Tea Party - Hide And Seek
8. Sympathy Nervous - Mr. OP [unidentified]
9. Sympathy Nervous - [unidentified]


 FM大阪(FM東京)「ミュージックマガジン」(土曜日、21時~21時55分)は、週替わりで、音楽雑誌の編集長が登場し、山本沙由理さんをホストに、選曲とトークを担当する番組です。各週のゲストを記しておきたいところですが、第3週の「ロッキングオン」渋谷陽一氏、第5週の「ロックマガジン」阿木譲氏の回しか聞いていなかったので、定かではありません。「ミュージックライフ」東郷かおる子氏、「POP-SICLE(ポプシクル)」木崎義二氏の回があったと記憶しています。番組名と同じ「ミュージックマガジン」(1980年1月に誌名から「ニュー」が取れた)の編集長は、このときは中村とうよう氏でしたが、登場されていたかどうか。

 稀にしかない第5週「ロックマガジン」回は、手元に残っている記録の範囲では、1979年9月29日、12月29日、1980年3月29日、5月31日の4回。5月31日は、阿木氏が主宰していたヴァニティレコード Vanity Records の特集でした。エアチェックテープには、曲だけを残しているため、阿木氏の語りは残っていませんし、覚えていません。

 ヴァニティレコードは、1978年7月から1981年5月までの間に、アルバム10枚、2枚組オムニバスアルバム、カセットアルバム6本組セット、7インチシングル3枚、「ロックマガジン」付録としてソノシート12枚をリリースしています。発足当初から、さまざまな方向での展開が告知されていましたが、1980年5月は、阿木氏が「ソニック・デザイナー」と呼んだ、新しい才能を発掘する段階にあったように思います。番組で紹介された楽曲の関連レコードのリリースを書き出してみます。実際には遅延もあったように思いますが、印刷物からわかるものと前後関係からの推測です。
1980年5月 R.N.A. Organism 『R.N.A.O Meets P.O.P.O』(vanity 0006)
1980年6月 Sympathy Nervous「Polaroid」(vanity VA-S1)
1980年6月 Mad Tea Party「Hide And Seek」(vanity VA-S2)
1980年6月 Perfect Mother「Youll No So Wit」(vanity VA-S3)
1980年7月 Tolerance「Today's thrill」(vanity 2005)
1980年7月 Sympathy Nervous 『Sympathy Nervous』(vanity 0007)
1980年10月 Normal Brain 『Lady Maid』(vanity 0009)

 番組の1曲目と2曲目は、番組と同時期に発売されたと思われるR.N.A. Organism 『R.N.A.O Meets P.O.P.O』から。

 3曲目のトレーランス「Green Paradise」は、既にリリースされていた『anonym』(1979年4月発売 ※)にも、のちにリリースされる『divin』(vanity 0012、1981年9月)にも収録されていません。また、未発表録音集『Dose』(remodel 25、2020年4月)、『Demos』(remodel 26、2020年4月)にも入っていませんでした。長らく謎でしたが、トレーランスのファンである yumbo の澁谷浩次さんに聞いてもらったところ、やはり、未リリース曲ではないかということになりました。番組で紹介しながら、お蔵入りになったことになりますが、「ロックマガジン」第32号(1980年7月)付録ソノシートに、トレーランス「Today's thrill」が収録されていますので、もともと「Green Paradise」を収録する予定だったのが、最終的に差し替えられたのではないかというのが澁谷さんの見立てです。「Green Paradise」は、よりビートを強調した構成になっていますが、確かに、エレクトリックピアノのフレーズに似たところがあります。
※『anonym』の発売時期については、記憶が薄れてしまっているのですが、1979年4月の時点では「ロックマガジン」誌上でもプッシュはされていませんでした。第26号(1979年8月)に広告が出ていますが、実際にリリースされたものとデザインが異なっています。次に広告が出るのは第28号(1979年12月)ですので、実際の発売は1979年秋頃だったのではないかと考えています。

 4曲目と5曲目は、Normal Brain『Lady Maid』からですが、Normal Brainのリリースについては紆余曲折があり、当初は1980年6月にアルバムがリリースされる予定でしたが(「ロックマガジン」第31号の広告より)、シングル「M-U-S-I-C」の9月発売に変更になり、最終的には10月にアルバムが発売されています。この経緯については、中村泰之監修『vanity records』(きょうRECORDS、2021年7月)掲載のNormal Brainこと藤本由紀夫さんへのインタビューで、レコーディング終盤に藤本さんと阿木さんの間で意見の相違があり、いったん棚上げになったあと、しばらくして出すことになったと語られています。しばらくして出すことになった際に、藤本さんが納得していなかった曲について差し替えを行ったのに、差し替え前のパッケージのままリリースされたことは混乱を招くことになりました(2019年3月発売のWRWTFWW Records版で訂正されています)。
 この経緯によってか、番組で放送された「You Are Busy, I Am Easy」は、アルバムに収録されたものと別テイクになっています(音声のあとに、最初からピコピコという音が入ります)。差し替え前のテイクということでしょうか。

 6曲目と7曲目は、7インチシングルシリーズから。Mad Tea Party「Hide And Seek」を聞いて、これはとにもかくにも買わないと、と思いました。そんなこと聞かされても、ですが、当時、このベースとパーカッションのかんじをパクって曲を作ったこともありました。

Mad Tea Party「Hide And Seek」「Modern Time's Pop」「In A Tea Bag」(vanity VA-S2)

 8曲目と9曲目の Sympathy Nervous については、録音を残しておらず、メモも不確かです。申し訳ないです。1曲はかろうじて、「Mr. OP」とメモしていますが、そのような曲は7インチシングルにも、アルバムにも収録されていません。録音を残していないので、確認もできません。

 この時期のヴァニティレコードのリリースについての「ロックマガジン」の記事を書き出しておきます。
・阿木譲「ソニック・デザイナーと呼ばれる新しい姿勢を持ったアーティストたち システムの構築=創作活動 オーケストラル・マヌーバース・イン・ザ・ダークと噂のR.N.A. オーガニズム、ノーマルブレイン、シンパシー・ナーヴァス」(第31号、1980年5月)
・特集「魚の側線のような触覚を持った、テクノ・ポップ以降に現われた日本のハイ・テック・マシーン達」(第32号、1980年7月)
- 阿木譲「自らの組織風景を繁茂させるオルタネティブ・マシーン群」(Sympathy Nervous、Tolerance、Mad Tea Party)
- 田中浩一「そして金属の囁きは、ジョーゼットの乱反射となって世界を埋め尽くすだろう ―メビウスの環を所有するアーティストたち―」(R.N.A. Organism、Mad Tea Party、Tolerance、Perfect Mother、Sympathy Nervous、Normal Brain)
- 嘉ノ海幹彦「我々はもはや自然物ではありたくないというところまで来ているのだ。 テクノポップ以降に表われた植物システム機械群」(Sympathy Nervous、R.N.A. Organism、Mad Tea Party、Normal Brain、Perfect Mother、Tolerance)
- Tolerance、Sympathy Nervous、Mad Tea Party、Perfect Mother、R.N.A. Organism、Normal Brainによる自己紹介
・Normal Brain、Tolerance、BGM、Sympathy Nervous、阿木譲による座談会「TAPE RECORDED DIALOGUE」(第33号、1980年9月)
※冒頭のMad Tea Partyの写真は、第32号の自己紹介文に付けられたものです。

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