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“はつらつ便りを待っています”

私が初めて外へ向けて書いたエッセイのタイトルは「繊細でルーズで少女」というものだった。大人になるのが淋しくてなりきれない私。強すぎる感受性のためにちょっとしたことにも傷つきやすくて、一方でだらしないところもあって、困りごとに度々遭遇する。

そのエッセイをいつの間にやら読んでくれていたAさんは何かにつけて「本当*ちゃんは、繊細で、ルーズで、少女で……」と私を評した。いいところも悪いところも引っくるめて私はそうだと分かっているようだった。

サポートすることは可能でも、根本的に他人を変えることは出来ないというのが私の持論だ。変えられるのは、本人が努力したり安心したり、健全になったりする時だけだ。
長所と短所は表裏一体で、しかも欠点の中には却ってその人のチャームポイントとなるものもあるから、どうあってもその人の短所を改善して欲しいとこっちが躍起になるのはちょっと違う気がする。

たとえば、高カロリーの食べ物は美味しい。

「美味しい」が長所で「高カロリー」が短所だとするなら、短所と思える高カロリーを改善しようとする行為と似ている。するとどうなるか。往々にして長所であった美味しさまでもがカロリーと比例して減少してしまうのだ。
全体として“すごく美味しい食べ物”が“まあまあ美味しい食べ物”になり、それそのものの魅力を下げてしまうことになりかねない。
人間の魅力もそれに似ている。その人の性質はその人の性質で、陽も陰も包括しているから短所長所と単品で分けることが難しい。これがこの人、と受け入れて愛すしかない。

私は繊細でルーズで少女です。

刺激に弱くて、大勢でわいわい騒ぐのが苦手です。私の感情は分かりにくいかもしれません。でも、誠実です。自分の発する言葉や決めたことを、とても大切にします。

あなたは率直でおおらかで直情型です。

あなたの示す態度や言葉はいつも鮮度が高いです。みんなに愛される裏表のない人。ただ、すぐに忘れてしまう。その時の言葉も、気持ちも。忘れてしまったことすら忘れてしまう。







Aさんがある人のエピソードを教えてくれた。
大貫妙子さんの楽曲「色彩都市」の歌詞にひどく泣いてしまったというのだ。

優しくあなたに
つつまれたら
少女のわたしと出会いました

いつでも心は雨のち晴れ
はつらつ便りを待っています

大貫妙子/色彩都市

あとで調べたら「いつでも心は」となっていた部分を、Aさんは「人生はいつも」と記憶していた。


人生はいつも雨のち晴れ。
そうして雨の後の晴れ間を待っている。
晴れたあなたの“はつらつ便り”を待っている。

待っています。



その人の泣いてしまうほどの優しさと、抱えた苦しさと、人生と理念との正確なことを私は知り得ない。でも、泣いてしまうその人そのものをそっと見守り包み込んで愛すしかない。
そう思う私は何があってもなくても、何をしてもしなくても、根本はいつでも少女の心だ。


人生はいつも雨のち晴れ、というのはAさんの考え方でもあるようだった。基本的に前向きで、のちに希望があることを信じている。そしてそういうことを度々語ってくれるAさんは強いなと思う。


はつらつ便りを待っているよ、とAさんは言う。*ちゃんのはつらつ便りを聞かせてよ。私が成長するのが嬉しいよと言う。




いつでも心は雨のち晴れ、はつらつ便りを待っています。


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