見出し画像

【エッセイ】大人の階段を昇らないでよ!



~皆様、人はいつ大人になると思いますか?~



年齢で言うのであれば、成人式を迎える20才になりますでしょうか。


法的な大人で言えば、18才でしょうか。


では、心の大人で言えば?



とても難しいですよね。


いつまで経っても
良い意味で
子どものままでいる人もいますし
逆に、小さな頃から
すでに大人っぽい人もいますよね。


皆様は、友達や知り合いが
いつの間にか、大人になっていたという経験はありませんか?





私には、あります。

その時の経験を今回お話させていただければと思いますので


皆様聞いていただけないでしょうか?









私には、シュウくんという1つ年上の従兄弟がいます。


シュウくんとは、物心ついた頃から
ずっと仲良しです。


そんなシュウくんは、変わらない男で有名でした。


大学生になれば、
みんなオシャレをしたがる年頃ですが、
シュウくんは


中学生時代に買った瓶底メガネ
どんなに寒かろうが中学生の頃からずっと半ズボンを穿き
そして中学生時代に流行った背中に
「絆」「奇跡」などのカッコいい文字が
大きく書かれたTシャツを着て
東京の大学に通っていました。


シュウくんは、いつまで経っても
昔のままでした。


お酒が飲める年齢になっても
居酒屋では、いつもオレンジジュースですし、夏になれば早朝からカブトムシ採りに一緒に行こうと誘ってきます。








そんな、シュウくんは
地元では老若男女問わず人気者でした。


地元の小学生達とは
大人になっても
全く同じ目線で、缶蹴りなどをするし
シニア世代の方達とは
子どものような距離感で分け隔てなく接するので、みんなに好かれていました。


私は、そんなシュウくんを尊敬していました。









それから
私が大学4年生となり東京の就活に疲れた時です。



地元へ帰って、気持ちをリフレッシュするために田舎道を歩いていたら
後ろから「プップッ」と車のクラクションが鳴りました。


振り向いて見ると
ピカピカのカッコいい車が停まっています。


私に、こんなカッコいい車を乗っている
知り合いはいません。




私は、道路で何か変なことしてしまったかな?とビクビクしていました。


すると、車から男性が降りてきました。










シュウくんでした。



でも、いつものシュウくんとは違います。



瓶底メガネではなく、
ギラギラなサングラスをしていました。


そして、先の尖った革靴を履き
ピシッとしたスーツを着ていました。


もちろん、半ズボンではなく
長ズボンです。


背中にも、「絆」「奇跡」などの
カッコいい文字はどこにも書かれていません。






シュウくんは、一足先に就職して
大人になってしまいました。


もう、あの頃のシュウくんではありません。


私は、就活の疲れもあり
とても悲しい気持ちになりました。







「やぁ!
モンキーパンツくん、こんなところで
どうしたんだい?
良かったら乗っていくかい?」



と大人っぽく余裕のある感じで
シュウくんは言いました。






私は「大丈夫!少し歩きたいから。」
無理矢理、笑顔を作って答えました。




「そっか…」
とシュウくんは、誘いを断られて
寂しげな表情をしました。






「であれば、モンキーパンツくん。
これで何か好きなものでも食べなさい。」


とシュウくんは私にお年玉とかで
よく使うポチ袋を渡してきました。








シュウくん…


やめてくれよ…


ここで、私がシュウくんから
お金を貰ってしまえば、
それこそ昔の関係に戻れなくなるだろ…


勝手に大人になんかならないで
いつまでも、子どもの頃の関係でいようよ…


私はポチ袋を貰うのを断りました。


でも、シュウくんが
あまりにもしつこく言うものですから
私は、仕方なく貰うことにしました。



これで、もう
私とシュウくんは仲良しの関係じゃなく
お金を貰うような大人の関係になってしまいました…








それから、家に帰って寂しい気持ちを抱えてポチ袋の中身を見ると、






















マクドナルドのクーポン券

入っていました。





なるほど、確かに
「これで好きなものが(安く)食べられる」



こりゃ、一本取られました!!




シュウくんは、その日
地元の小学生にカッコつけて
意味もなくスーツやサングラスを身に纏い
クーポン券をプレゼントして遊んでたみたいです。




次の日、会ったら
シュウくんは
いつものわんぱく小僧の格好に戻ってました。



シュウくんは、いつまで経っても
シュウくんのままでした。






この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?