笑いの数値化

～皆さんって、どんな笑い方をしますか？～

笑い方って、人それぞれですよね。

静かに笑う人、大きく笑う人、引き笑いする人、吹き出しながら笑う人。

それぞれの個性が出る瞬間だったりしますよね。

ちなみに、私は常に
まりもっこりのように
ニヤケ顔なので
「なに笑ってるんだ」と
よくどつかれます。

そんな、私が今まで出会った方の中で
一番個性的な笑い方をするお爺ちゃんの話をしたいと思います。

私は、学生時代ガソリンスタンドで
アルバイトをしていたことがあります。

そこに、いつも高級車を洗車に来る
フルハシさん(仮)というお爺ちゃんがいました。

フルハシさんは、とても社交的な方で
車を洗車機に入れてる最中、ずっと話しかけてきてくれました。

どこか、私のことを気に入ってくれてるようでした。

フルハシさんは、自分の話をするというより人の話を聞くのが好きなタイプのようで

アルバイトは慣れたか？
大学生活はどうだ？と
他愛ないことを聞いてくれます。

私もお話しが好きなので
フルハシさんが来店されるのがいつも楽しみでした。

私が、くだらない話をすると
フルハシさんは腹を抱えて大笑いしてくれます。
その姿が、本当に愛おしいのです。


ただ笑い方で言うと
そこまでは、よくある笑い方なのですが
問題なのは、腹を抱えて大笑いしながら
歩き始めるのです。

そして、フルハシさん愛好家の私は
あることに気がつくのです。

それは、フルハシさんにとって
面白ければ面白い話ほど
歩く距離が伸びていくということです。

大発見でした。

この発見をした時、
私の中で１つの野望を抱くことになったのです。

フルハシさんの長い人生の中で
一番笑わせた人間になろう。

つまりフルハシさんを一番遠くまで
歩き笑いをさせた人間になろうと思ったのです。

もしこの野望が叶えば
これほど、名誉なことはありません。

今までの記録では、
だいたい5メートルぐらい歩き笑いをしてくれたことがあります。

日々、フルハシさんを分析し
私は、何度も面白トークの研鑽を重ねました。

そして、ついにその日が来たのです。

私の会心のトークがフルハシさんの
笑いのツボにハマりにハマって
どんどん長い距離を歩き笑いし始めました。

1m…

5m…

10m…
よし！記録更新です！

15m…

20m…

30m…

40m…

あれ？
フルハシさん、どこまで行くつもりですか？

フルハシさんは、
大爆笑しながらどこまでも歩いていき
ガソリンスタンドの敷地を出て
歩道まで行ってしまったのです。

私は、心配になり
フルハシさんを連れ戻しに行きました。

しかし、フルハシさんは
だいぶ遠くまで歩かれてしまっているので
追いつきません。

やっとの思いで追いつき
フルハシさんの顔を見ると
もうすでに、フルハシさんは
歩いてはいるけど笑うのをやめていました。

ただただ普通に歩いているのです。

恐らくフルハシさんは、
なぜ今、自分が歩いているのか
わかっていないのではないかと心配になりました。

その後、フルハシさんは
くるりと方向転換をしてガソリンスタンドまで戻ってきてくれました。

当然、その時も笑顔はありませんでした。
思いっきり真顔です。

その後、フルハシさんは何事もなかったかのように
洗車料金を払い高級車に乗って帰られました。

私はフルハシさんの人生の一番になれたのでしょうか？