手塚治虫ブッダと小此木啓吾の日本人の阿闍世コンプレックス

画像1 手塚治虫ブッダ1979年版(潮出版)が我が家の書架の奥深くから発掘された。第6巻はマガタ国の阿闍世とその母の韋提希夫人の話。阿闍世といえば小此木圭吾の日本人の阿闍世コンプレックスの阿闍世だ!韋提希夫人といえば、昨年母が亡くなって初めて覚えた正信偈に善導の句に出てくる。阿闍世に幽閉された王に自らの身に蜂蜜を塗って栄養を与え救おうとした。アジャセは仙人の予言により将来父王を殺すとされ、王はアジャセを恐れるようになった。それを知ったアジャセにより深く恨まれ幽閉された。これが手塚のストーリー。
画像2 しかしかつてベストセラーとなった小此木のアジャセコンプレックスは母親が早く王子が欲しいがため仙人を殺したことになっており、このことから日本人は欧米のエディプスコンプレックスの逆の母親を恨むことになっているという話とは違うじゃないか、と。そこでwikiで調べると。なんと小此木のアジャセコンプレックスは今日では捏造とわかってきたということだ。驚いた!母が最初の命令者。そこから苦が始まるとは安冨歩の人生回顧や星の王子さま論にあって、そうだろうな、小此木もそう言ってたなと思っていただけに、頭を再整理しなくては。
画像3 小此木の本は1982年。手塚のブッダとほぼ同年。小此木は2,001年に北山修との共著でも依然としてアジャセコンプレックスを唱えていた。近松常観の説によっていたのではという研究もあるらしい。今日ではインドなどの原典に近い研究が日本でも我々の目や耳に届くようになってきたが、近松の時代はともかく、昭和末でも日本の文献のみに依拠した仏教研究を付け焼刃に引用する西欧流の翻訳学者翻案学者が大手を振っていた証拠で憐れみすら感じる。それにしても手塚は超売れっ子で超多忙な60年の人生でどこまで勉強家なんだ❗

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