見出し画像

たこやきレインボー「ボーカル進化の歴史」③シャナナ☆2018年

たこやきレインボーは、メンバー5人の個性的なボーカルを活かし合うことで、楽曲を表現します。
さくちゃんはエモーショナルで感情を歌詞に乗せること、れんれんは誰にも負けないパワーやアニメ好きらしいカリカチュアされた表現、まいまいは個性的な甘い声、くーちゃんは歌唱なんでもこなせるオールラウンダー。そして、さきてぃはニュートラルな歌声。レコーディング段階では歌割はされておらず、メンバー全員ですべてのパートを録音し、それを最適なかたちで繋いでいくことでパート割が決まり楽曲が完成する。そのような話を聞いたことがあるのですが・・。(どこで聞いたのかちょっと記憶が曖昧ではあるのですが)

この方法で楽曲制作されているとメンバーの歌割り配分がバランスよく行われるはず。
そう思うのが普通だと思うのですが、たこ虹の場合、そのような配慮よりも楽曲を最大限に表現することを重要視しているように思えます。
「シャナナ☆」はまさしくそう制作されてるとしか思えない歌割りで、とにかく、くーちゃんのパートが多い。歌い出しも、終わりもくーちゃん。
たこ虹の歌割りは、どことなくチーム制のスポーツで戦うための布陣を決めるような感じに近いように思えるのですが、くーちゃんパートがこれだけ多いということは、この楽曲の難易度がそれほど高いということもあるのだろうと思うです。
「シャナナ☆」は、大人の恋愛ソング。歌詞に登場する女性は20代後半。これまでにたくさんの恋愛経験がある。夏にはじまる恋愛。恋におちる瞬間。高揚感。その思いが永遠に続いて欲しいと祈る気持ち。
そういったものがつづら折りのように展開し、ループを描いて上昇していくような楽曲。下手すると、とっちらかってしまいかねない高難易度の楽曲に、くーちゃんのパートが増えるというのは必然と思うのですが、この楽曲のキモといえるパートは、さきてぃが担当しています。
この楽曲のおちサビ、「シューティングスター」から「願いを込めて」の部分。ここがこの楽曲の心臓部であり核心。
願いが込められた言葉にならない思いのバトンは、最後にくーちゃんに引き継がれ、静かにフェイドアウトしていくという構成になっています。

シャナナ☆は、2018年の1月から歌われるようになり、イベントのたびに歌われて、その都度、楽曲が育っていく様子がとても面白く、楽しかったのですが、2018年2月3日、愛知・タワーレコード名古屋近鉄パッセ店 屋上イベントスペースで行われたダブルレインボーのリリースイベントで、ある出来事がおこることになります。
それは、ツイッターライブで配信されて、その動画は今でも見ることができるのですが・・。

さきてぃが体調不良のため、さきてぃのパートをれんれんが歌っているんですよね。シャナナ☆のキモといえる部分「シューティングスター」から「願いを込めて」も、れんれんらしい力強いボーカルで歌唱している。
確かこの頃だったと思うのですが、さきてぃはインタビュー記事で、私はさほど声は強くないと話したことがありました。その言葉に私は驚きつつも、その裏表ないところがさきてぃらしさでもあると思ったのですが・・・。

そして、この時期の体調不良から復帰したさきてぃの歌声は、それまでと明らかに変わったように感じたのです。

私は、さきてぃをみてると、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカル「オペラ座の怪人」のクリスティーヌを思い浮かべるんですよね。
オペラ座の怪人は、さくちゃんが劇団四季の舞台を観たことがあり、番長は、ロンドンのハー・マジェスティーズ・シアターで観たという話も聞いたことがあって、なにわン2016は、オペラ座の怪人の仮面舞踏会の大階段のセットのオマージュとなっていたり、なにかとたこ虹とご縁があるのですが・・。

オペラ座の怪人は、上辺をなぞると、怪人とクリスティーヌ、クリスティーヌの幼馴染のラウルとの三角関係から展開していく物語。
でも、実はこの作品には裏になる三角関係があって、怪人とクリスティーヌ、オペラ座の筆頭プリマドンナ・カルロッタ、この三人を描いているからこそ、この作品が深いテーマ性があるんじゃないかと思っているのです。

怪人はエンジェルオブミュージックなわけですから、もう圧倒的な実力がなければならない。芸術性に富んでて知識と才能にあふれる存在でなければならない。それこそ、舞台の上で、その歌声で神のように君臨する存在。
カルロッタは、オペラ座の筆頭プリマドンナなので、やはり圧倒的な実力があり卓越した表現がなければならない。
では、クリスティーヌは何を持っているのか?怪人はクリスティーヌに魅了されている。怪人が持ちえていない何かを持っていなければならない。
そして、カルロッタの圧倒的な実力を上回る何かを持っていなければならない。

では、いったい多くの人を魅了する歌声とは何か?

それを問いかける物語でもあるのです。
当然のことながら、この3人を演じる役者には圧倒的な実力が求められるし、クリスティーヌには多くの人を魅了する「何か」がなければ演じることができない。
その前提ができなければこのオペラ座の怪人という物語は成立しない。
演じる役者に求められるハードルが、とてつもないほど高い演劇。だからこそ、オペラ座の怪人はロングランを続けるミュージカルとなっているのです。

カルロッタの圧倒的な実力を上回る、多くの人を魅了するものとは何か?
数多くの人々を心を鷲掴みにする歌声とは何か。

その答えは、クリスティーヌを演じる人に委ねられるので、答えはひとつではないし、演じる人によって異なるもの。そして、舞台を観る人が感じるものがすべて。だからこそ、この舞台は映像化されていないというのとあると思うのですが、初演のロンドンオリジナルキャストの音源化はされていて聴くことが出来て、サラ・ブライトマンのクリスティーヌがいかにすごいかがわかる。ただ、この時から30年もの年月が流れて現在のサラ・ブライトマンが怪人よりも怪人らしく感じてしまうのは、物語がリアルに続いているようで、とても面白いのですが。

オペラ座の怪人の話がとても長くなってしまいましたが、クリスティーヌとさきてぃが共通しているのは、センターに選ばれたこと。そして、クリスティーヌを演じる資質を感じること。

さきてぃのどこまでも真っ直ぐに伸びるロングトーンは、ニュートラルであるからこそ、多くの人に届くものになっています。
そして、この5人は、それぞれオリジナルのロングトーンを持っている。さくちゃんは気持ちがのったロングトーン、れんれんは力強いロングトーン、まいまいは、すべてをファンタジーにしてしまう魔法のロングトーン、くーちゃんは洋楽の歌姫そのものといえるロングトーンができる。楽曲をどう表現するかで、ガラッと変えることができる体制があるのが凄いところ。その点がスターダストの最終兵器たるゆえんだと私は思っています。

「シャナナ☆」は、2018年1月から歌われるようになり、徐々に進化を続けて、8月に行われたライブ「RAINBOW SONIC」でひとつの完成形として見ることができます。
このライブは、2017年の春から続いたなにわンダーたこ虹バンドの集大成としてみることが出来るのですが、5人のボーカルの伸び方、勢いがホントにすごい。
そして、「survival dAnce 〜no no cry more〜」で5人がパフォーマンスしてみせる完成度の高いパフォーマンスも、シャナナ☆を少しづつ、着実に完成させていったからだと思うのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?