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舞台『異世界転生したら大恐竜時代でオワタ。』氷河期で奮闘編

少し前まで異世界転生ものって苦手だったんですよ。なんでもかんでも異世界転生もので食傷気味で。でも、根岸可蓮さんの影響でアニメを観るようになって、そのような気持ちが一切なくなりました。「無職転生」面白いし、「転生したらスライムだった件」さいこーだし、なんじゃこれ?っていうのもあるけれど、「便利屋斎藤さん異世界に行く」というような秀作もある。異世界モノではないけど、推しのアイドルの子供に転生してしまう推しの子も面白いですしね。
量産されるからこそ名作や傑作が生まれ、ボチボチなものもあり、底辺だよなーとしかいいようのない作品もある。それって昭和の時代にあった時代劇やヤクザ映画が大量生産されたのと同じなんだな・・ということに気がつきました。同じ世界観、共通した設定にお決まりともいうべきお約束のなかで何ができるかという思考実験。もうなんでもアリなものとして、その限界の向こう側に挑むという、もはやここまでくるとなんだかわからない感じもしないでもないですけど、自動販売機に異世界転生したのもあれば、島耕作な世界に転生した作品もあったりして。
カオスとしかいいようがないですけど、でも大抵の面白いものはカオス、混沌から生まれるものですから、それはそれで大局的にみるととてもいいことだと思うのです。

「異世界転生したら大恐竜時代」というタイトルをきいて、そうきたか!という心づもりで観に行きましたが、いざ幕が上がってからもう目まぐるしく変わる展開に爆笑しつつ、あややの超有名な楽曲を聞きながら、えーっと私は何をみているのだ?? という気持ちが頭のすみっこにでてきて、えーっと、これは恐竜だけど猿の惑星なのか?それとも恐竜版のけものフレンズなのか??とグルグルしてて、・・と、瞬間に、ひとつの作品を思い出したんですよね。

私はSFが大好きでこれまでたくさんの小説を読んできたのですが、このタイミングで唐突に思い出したのが、フィリップ・ホセ・ファーマーのリバーワールドシリーズ「果てしなき河よ我を誘え」。この作品は人類が21世紀初頭に絶滅した後に、ある巨大な惑星の大河の畔にネアンデルタール人から人類が絶滅する21世紀までのすべての人類が転生する(再構築される)という物語。こでまでアニメでたくさんの異世界転生ものをみてたのに、まったく思い出すことのなかったこの小説を、この舞台をみて思い出すという。家に帰ってすぐにこの本を探して、冒頭を再読してみたら、テンプレともいっていいくらいの異世界転生モノのライトノベルと寸分変わらず、昭和58年に出版された本に、異世界転生ものの原点を感じてとても不思議な気持ちになりました。

全編65分という上演時間。その中にありとあらゆる情報を盛り込んで、アイドルな現場ネタや、めちゃくちゃニッチな昭和ネタがあったり、いやちょっとそこ触れちゃうんですかー的な芸能界の時事ネタがあったり、てんやわんやな展開で、ちょっとこれ、どう収拾つけるの??と思いつつ、でも、登場人物ひとりひとりにちゃんとしたディープな理由があったり、とても意外な存在がカミサマだったり、救世主だったり。
私はいったい何をみているのだ?からのカオスとしかいいようのない展開からの最終的には広げた風呂敷をキッチリをたたむ手腕は見事なもので、観劇後の満足感がハンパなかったです。

個人的に三大怪獣をもってきたのは、私的にはびっくりで。『三大怪獣 地球最大の決戦』って1961年の映画で、私が産まれる少し前に上映された作品なんですが。この舞台を観た中でどれだけの人がこの映画を観たことがあるのかとても気になるところで、でも、私的にはそれがめちゃくちゃうれしくて、春名真依さんが「モスラーやモスラー♬」といやいや困ったなーという面持ちで歌うところは最高でした。
でも、三大怪獣って、ゴジラとモスラ、ラドンのことで、キングギドラは別枠の宇宙からやってきた怪獣なんですよーと言うのは野暮というもの。でもきっと、そのことも踏まえての作品なんだろうなぁ。

最近、とてもニッチな平成、昭和ネタを作品に盛り込むというのが流行ってるように感じますけど、とても良いことだと思うのです。YouTubeやサブスクで過去にアクセスできるとても良い時代。愛あるオマージュ、そして、引用と発見の繰り返しによって、どんどん面白い作品が産み出されていくんだろうなぁ・・。それを純粋に楽しむ。そのありがたさを感じる。
そういったことをあらためて感じる舞台でした。



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