情熱の北斎
やっと出会えた。
浮世絵を見に行きました。身近なところに浮世絵専門の美術館があって、日本随一の蒐集家によるコレクションを展示している場所があるのです。
さて、浮世絵といえば、誰の名前が浮かぶでしょうか。
写真の作品は、かの葛飾北斎の作としてあまりにも有名です。
富嶽三十六景は、彼の作品の中でも群を抜いて多くの人が知っている名前かも知れません。その中の作品である上の2枚(複製画で撮影可でした)は、さまざまな場面で使われ、作者名は知らなくても、作品名も分からなくても、絵は覚えている方が多いと思います。
では、問題です。
上の2枚の浮世絵の作品名は?
左は、神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)
右は、凱風快晴(がいふうかいせい)
富士山をモチーフに、さまざまな場所から眺める景色を浮世絵に刷り上げた、富嶽三十六景はとても有名な彼の作品です。写真奥の凱風快晴は、その特徴的な色から「赤富士」と呼ばれたりしています。朝焼けに映える山肌を表現しているそうです。
では、問題です。
赤富士と並んで、富士の色が特徴的な「山下白雨」があります。何富士と呼ばれているでしょうか?
A.白富士 B.黒富士 C.青富士
正解は・・Bの黒富士です。実際に作品を見てみると、富士山は黒々としていました。雨雲や稲光の中にあって、黒く重たく居る姿は、まさに神様のような佇まいでした。(実は、サムネイルがそれです)
北斎は、なんと90歳まで生きたのだそうです。江戸時代にして、人生100年時代の人という感じですね。しかも、富嶽三十六景は70歳になってから制作を始めたとされています。それまでも、絵師として活動を重ねており、満を侍して富嶽に取り組んだということでしょうか。
さらに、富嶽三十六景は、ヒットしたら百景くらいまで作ろうとしていたのだとか。
今まで、浮世絵だけをじっくり見たことがなかったし、解説もあまり読んだことがありませんでしたが、北斎だけの展覧会はとても贅沢です。その名も「大北斎展」。
ゴッホやモネが浮世絵から大きな影響を受けたというのは有名ですが、反対に、西洋画からの影響で構図が作られた浮世絵を刷ったりしているのも知り、静かに唸ってしまいました。
浮世絵は版画なので、絵画のような一点ものでありません。でも、原画を見ることはとても貴重で、あの代表作の原画は、とても精緻で清々しい絵でした。
写真などで見ていたよりも、色が鮮やかで、線もかなり細やかでした。
さらに、これは痺れるなぁと思ったのは、凱風快晴の初期と後期の展示があったこと。
版は同じなのですが、初期の作品の方が色合いが淡く、グラデーションも精細でした。山肌はもっとピンクに近い優しい色で、裾野の緑との境目が立体的に表現されていました。
油絵の肉厚な画と比べると、浮世絵はとても平板でペラんとした画面ですが、風景の切り取りや、風などの見えないものを表現する構図は、とても感動しました。
富嶽三十六景に限らず、さまざまな土地の風景を切り取り、その土地の名物を紹介する作品群は、どれも丁寧でした。
そんな展覧会を2期に分けてやるのだから、蒐集家の情熱たるや計り知れません。そんなわけで、その思いに報いたいと、年間パスを購入しました(笑)
続きも書きました。ぜひとも。
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