見出し画像

誰もゴッホになれない

埼玉県の所沢にある、特徴的な建物が話題の角川武蔵野ミュージアム。隣接するKADOKAWA所沢キャンパスも独特な建物で、一帯がサクラタウンという名前で開発がされていました。

コンクリートジャングルを揶揄しているのか、でも、重厚な作りと斬新な風景を作っている石造の外観に、個人的には面白いけれど、ちょっとなぁ・・なんて思ってしまいました。(コンセプトを全く知らないでこれを書いています)

稲城から車で1時間程度の所沢に、行ってきました。

その日は平日でしたが、たまたま用事がどんどん前倒しで進み、午後に終わる予定が、午前中に済んでしまったので、開催中のアレを観たくて向かったのでした。

日本で初めての企画展。ゴッホの作品を、動画に再構築して音楽と合わせた映像作品として展示する試みで、「デジタル劇場」と表現されていました。作品を分解し、動かし、音楽をつける、そしてその映像には「彼が見つめていたものが表現されている」らしいのです。

会場の入口ではゴッホとひまわりが出迎えてくれる

ファン・ゴッホ 
ー僕には世界がこう見えるー

ファン・ゴッホが見た世界を追体験する体感型デジタルアート展を開催します。会場の壁と床360度に投影された映像と音楽で、彼が見た世界を再現しながら、情熱的な画家の人生を辿ります。〜略〜
その生涯をかけて描いた作品群が、あなたをファン・ゴッホ作品の本質へと誘います。
同ミュージアム・ホームページより抜粋

ゴッホの作品をつなげたり、分解したりして、会場いっぱいに彼の作品が映し出されるような仕組みでした。映像に囲まれている感じで、映像に合わせて音楽がつけられて、それは時に荒々しく鳴っていたり、のんびりとした雰囲気だったり、彼の色彩の美しさを改めて感じられる場所になっていました。

写真撮影が可能だったので、ここからは写真を貼り付けていきます。

彼は、農民を好んで描いていました。それは彼自身がなれなかった、命を生み出す存在を表しているのかも知れません。人の命を繋ぐ作物を育てていること、仕事と生がとても近いのが農民だったのかも知れません。

あまりにも有名なヒマワリも、どーんと3枚分を一緒にして並べてしまう発想よ・・。背景のこともあるけれど、やっぱり眩しい作品。

写真では全く伝わらないけれど、センスの良い音楽(クラシックが多かった)が流れ、ぼんやりとしていても楽しめる。花と一緒に写真を撮る人も多かった。

アーモンドの木、は桜に似ているからか、観ている人の反応も良かった。どうやら、人・花・風景のようなまとまりで映像を作っているのではないかと推測。なんて考えていたら、このアーモンドの花が・・散っていった・・おお。

圧巻の映像・・手前に写っているのは僕の影。つまり床から壁に映像が繋がっていて、何だか自分が水の上を歩いているような感覚に。

ゴッホの自画像が集合。いくつも自画像を書いているけれど、画面左の黄緑の背景の作品、日本文化に傾倒している時代に描いた空想の自画像「ボンズ(坊主)としての自画像」が、僕は好きです。

映像は30分程度あるのですが、最後の最後は何の作品が来るのかと楽しみにしていました。最終盤の景色がこれ。わかる人は一緒に、頷いてください。

この絵には重要なカラスが出てきていませんが、彼の絶筆として紹介されることの多い「カラスのいる麦畑」が描かれ、最後にカラスが正面に迫ってきて・・。


ハンモックも良さそうでした。会場に4つしかないので、座れたらラッキー。


映像作品の展示室とは別に、これまた有名な「タンギー爺さん」ごっこができる場所もありました。

ゴッホは、アトリエにお気に入りの浮世絵を貼っていたようです。タンギー爺さんは、ゴッホの親戚ではなくて、彼が絵の具を買っていたお店の店主。絵の具代が払えなくなったゴッホが、お礼に自画像を描かせてくれと頼み込んで描いた・・という説があります。

これが、実際の「タンギー爺さん」。壁の浮世絵が、現在のものと同じくらいのサイズだとしたら、このおじいちゃん、かなり小柄な人だったのかも知れない。


ゴッホの生涯がよく知られているのは、彼が親戚や友人に宛てたおびただしい手紙によるところが大きく、それらの記録もありましたし、彼の年表がイラストとともに壁に掲示されていました。

この作品は、こんなタイミングで描いたのか!という発見や、彼の体調の変化なども記されており、やはりゴッホの人生はなかなか大変そうだぞ、と思わずにはいられませんでした。

企画展の趣旨として「彼が見た世界を再現」とありましたが、実際にそれが再現されているかは、彼にしかわからないよなぁと思いながら観ていました。

僕は、画家ではないし、オランダ人でもないし、遠く離れた国と時代に生きているから、世界の見え方は途轍もなく違っているのだろうと思うのです。

見たものをそのまま描いている、かどうかは疑わしいのですが、少なくともゴッホが描きたいと思えたものが目の前にあって、それを必死で写しとったものが我々に元気を与えてくれているのだとすると、ゴッホの眼を借りて当時の世界を見ているのかも知れない・・と思うのでした。

映像に包まれて、ずっとたたずむもよし、歩き回るもよし。ゆったりと時間を使って観てみると、新しいゴッホを知ることができるかも知れません。そんな展示会でした。



#角川武蔵野ミュージアム #ゴッホ #アート #おすすめ #絵画  

この記事が参加している募集

イベントレポ

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd