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残業の夜

幸いなことに、公務員に転職してからは、残業することが減りました。それでも、たまには夜遅くまで残って仕事なんだか、ミスの処理なんだかをすることがあります。

そんな夜の帰り道、残業ばかりだった前職の頃を思い出すのです。

事務処理は大して難しくないのですが、日中は作業に出て、夕方から事務作業をしたりすると、体はヘトヘトです。そんな日が何日も続くと、電車の中で寝てしまうこともよくありました。

ある日、いつものように疲れていた帰り道で、傘を持っていました。雨は降っていなかったので、ただ手に持っているだけ。

駅のホームに立って電車を待っていると、いつのまにか終電がなくなっていました。駅に着いた時には、まだ終電まで数分あったはずなのです。

初めは何が起こったのかわかりませんでした。時計を見ると5分経っていました。

立ったままで、寝てしまったのです。

5分の間に、終電が駅に着いて、出発してしまったのです。耳にはイヤホンもしていたからか、発車ベルらしき音も聞き取れなくて、傘でバランスをとって寝ていたらしいのです。

そんなことが起こる前は、ホームにある椅子に座って待っていたこともありました。しかし、疲れている身体は、休息を求め、まぶたを閉じさせました。そんなふうにして、何度も終電を逃していたこともあり、立って待つことにしたのです。

それでも、だめでした。

立ったまま、寝てしまうのです。きっと電車に乗っている人からは、とても不憫に見えたかも知れません。目の前にドアが開いているのに、まぶたが開いていないから乗り込めない乗客が、ひとり。

その駅は、利用者が少なくて、終電の時間にホームに立っているのは僕くらいでした。いや、ほんとうに僕だけでした。

夜8時くらいには駅員がいなくなって、無人駅になっているのです。

前職から離れて数年後、何かの機会に前職の職場を見に行ったことがありました。初めて配属された倉庫の一角にあった事務所は、倉庫ごとなくなってマンションになっていました。

もうやめよう、と決めた時の職場だった事務所も、人の姿は見えず、物置のように静かでした。

入社した時には、何十年も勤めようと思っていたけれど、さまざまな経験が知識や力をくれました。あまり明るい力ではなかったかも知れませんが、僕を強くしてくれました。

怖い上司に比べれば、怒るお客さんは優しい人でした。クセの強い作業員も、アクの濃い事務員のおばちゃんも、一緒に働いた記憶は、いつでも僕を勇気づけてくれるのです。

ここnoteで、前職の記憶をいくつか書いていました。その時々で、思い出しながら書いていますが、総じて大変だったけれど、とても貴重な経験だったなぁと振り返っています。

小田急線の支線、小田急多摩線の黒川駅が、僕の前職での、濃い思い出の駅です。


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一つ書いたら、思い出してしまい、また書きました。フォローしている、やんさんの企画、#駅にまつわるエトセトラ に乗っかりました。今日までの企画、間に合いました(ふたつ目だけど)。

企画の趣旨はこちらをご覧ください。

黒川駅は、3年間使い続けた駅で、今はあの頃の何もない駅前の風景は一変し、お洒落なお店やコワーキングスペースが建っています。

企画に参加することで、いつもとは違う視点や記憶が蘇ってきます。思い出の駅のこと、企画が終わっても、まだ書けそうです。

やんさん、素敵な企画をありがとうございます。


#駅にまつわるエトセトラ #黒川駅 #小田急線 #転職前 #働く #残業



最後まで読んでいただき、ありがとうございました! サポートは、子どもたちのおやつ代に充てます。 これまでの記録などhttps://note.com/monbon/n/nfb1fb73686fd