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恥は突然に。

昨日も娘に恥をかかせてしまった。
10歳の娘から散々説教を食らいながら、恥さらしの人生を回想した。

あれは日本に帰っていた時のこと。

PCの充電器をニュージーランドに忘れたのが一度目の悲劇。二度目はPCの電源を入れた時だった。

なぜか液晶画面が一向にホーム画面にたどり着かない。
「自動修復致します」の文字が無限ループで浮かび上がるだけ。とにかく修理をしなければと、知人におすすめのPC修理店を教えてもらい、そこへ足を運んだ。

修理店に入ると愛想のよい男性か出迎えてくれた。

私「さっき電話したまっ子です。」

男性「はい、お待ちしておりました。」

徳武さんと言う人が修理担当らしい。物腰の柔らかい感じのお方だった。PCを手渡し、様態を説明すると「はい、はい、そうなんですね〜。」と笑顔で対応してくれた。
しばらくすると、PCを操作しながら「何とかホーム画面に行けそうですね。」と徳武さんが言った。

私は安堵し「良かったです!!助かりました。」と言った。
その直後、「あ!」と声を出してしまった。
そんな私に徳武さんは「大丈夫ですか?」と聞いた。
大丈夫かと問われたら「大丈夫です。」と答える以外の選択はあるのだろうか。「大丈夫です。」と言い続けて生きてきた私は、条件反射のようにそう言ったけれど、全然大丈夫ではなかった。

忘れていた。

私はnoteで記事を投稿する際、ワードで作成した文章をコピーしnoteに貼り付け投稿していた。なぜかnoteに直接記事を書くと文章が消えてしまう事件が多発していたからだ。ショートカットキーを使おうとした時にその現象は起こる気がするが、どこを押したのかは不明。そして文章を半分くらい消してしまった記事はオートセイブという素晴らしい機能で勝手に保存される。
その後の絶望感。書き直すなんて気は到底起きない。
そんな訳で、PCのホーム画面にはnote記事を書いた無数のワードファイルが貼り付けられていた。

私の記事は汚物だ。

だからファイル名が
「オシもの毛」
「ケツの穴がふけない友人夫」
「猫の糞」
「露出狂と私」などになる。

完全に上の空だった私に向かい、徳武さんがPCを睨みながら言った。
「ホーム画面には行けたんですが、これ見てください。」

ひいいいいいいいいいーーーー。見たくない。
どの面で見ろって言うんだよ。

でも見るしかないだろう。この状況で「見ません。」なんて言えるわけがない。

恥の袋叩きを覚悟し、画面を覗き込んだ。
「あ」っと声がでた。今度は安堵の声だ。

画面には見慣れないアイコンが並び、そのアイコンの下にはお下劣な言葉ではなく「*%g$」←こんな文字が並んでいた。

文字化け!?

難しい顔をして徳武さんが言う。
「うーん。1週間ほどお預かりしてもよろしいですか?調べてみないとなんとも言えませんが、データは復旧できないかもしれません。」

いいぞ!!データは全消しでパソコンだけ治してくれ!!

でも・・・もしデータが復旧したら?
徳武さんはファイルを見るだろうか。いや、ファイルを覗き見するとか以前に、画面を埋め尽くしているファイル名がもうアウト。そしてそれを見た徳武さんは絶対クリックしたい衝動にかられるだろう。
だって「うんこ」だの「股間」だの、これ以上人の興味をそそる名前があるだろか?ない。ないよ。
私が徳武なら迷うことなく見てしまう。

もう修理は諦めようか。そうしたらこんなにヒヤヒヤせずにすむ。でも・・・。
ひらめいた!このPCは友達のだと言うことにしてしまおう。

私は答えた。
「えっと、このパソコンは最近友人から譲り受けたもので、中のデータは全部私のではないので、消えて構いません!!」むしろ絶対修復するなよ、徳武!!!

徳武さんは「?」という顔をしていた。だって私は徳武さんに出会って数秒後、こう言ったのだから「4年前ニュージーランドで買ったパソコンなんです。」
時すでに遅し。恥の上乗せ。いや恥にプラス虚言症。
これでもし徳武さんがファイル名を見るようなことがあれば、汚物(記事)が友人のものだと必死に責任転換をする性悪女までプラスされるだろう。

しかし、まだ希望はある。ファイルが死亡する可能性が高いのだもの!!
そう自分に言い聞かせ、店を出た。

1週間後。

約束の時間にまた修理屋さんに向かった。
どの面下げていこか迷ったけれど、残念ながらこの面しかない。

修理屋さんにつくと、徳武さんが優しい笑顔ととも出迎えたくれた。

そして相変わらず優しい口調で言った。
「残念ながらパソコンは電源が入らなくなってしまいましたが、データはなんとかなりました。」

予想外の展開。

壊れたパソコンを渡された私は不具合の生じたパソコンのような動きをしていたと思う。「まっ子さん、大丈夫ですか?」と聞かれ、今度も反射的に「大丈夫です。」と返した。が、大丈夫なわけないだろ、徳武!!!!パソコン壊れて、データ残こしてどうすんねん!!
それに・・・見た?
見たよね?ファイル名読んだよね??
その上で、よくそんな普通の接客ができるな!徳武!!!恥を知れ!!

いや恥を知るのは私。

汚物はホーム画面に貼り付けてあったのだから、「見ておくれ!ミスターオクレ!」と言っているようなもの。
それに徳武さんは汚物を生み出した私を見ても乱れることなく、優しさと笑顔で最後まで接客してくれた。彼は紛れもなくプロだ。

それにしてもPCを見られるって脳内を覗かれているようで恥ずかしい。インターネットの閲覧サイトなんか見られたら丸裸も同然。
でもね、一番の問題はやっぱり私の脳内のチンケさだと思う。
だってアラフォーになっても「股間」や「うんこ」で溢れているんだもの。それを隠すために嘘までつくなんて。本当に恥さらしもいいところだ。

















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