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焼き芋とドーナツ

間食(おやつ)。
それらは、命を繋ぐための「食事」ではなく、だけでなく、
楽しみや、気持ちを満たすためのものとしての意味もある。
お喋りもだ。
お腹の足しにはならないかもしれない。
けれど、楽しみや、気持ちを満たすものとしての意味や、
生きる上での指針や希望に繋がるということもある。
おやつ、女子会、雑貨店やお洒落、芝居や、劇場。
でも、食生活が状況や環境によって満足にゆき届いていない場合には、
おやつはご飯になる、せざるを得ない時もある。
女子会やお喋りも、楽しみのためじゃなく、
必要不可欠なものとなるときや場合がある。
その連帯はなにかを動かすことだってあるし、
想いもしないところに影響したりする。
例えば国や時代をも越えて。
 
話題の1冊『焼き芋とドーナツ 』(湯澤規子・角川書店)が本当におもしろかった。
サブタイトルは「日米シスターフッド交流秘史」。
気になる本屋のSNSで知り、即ポチった。
とっておき、とっておきの時間と空間で一気に読んだ。一気だった。
著者は「食」をテーマに「生きる」を解く研究をされている人間環境学者で人類学研究者。
帯に書かれた「間食(おやつ)から紐解く人間交流史」というフレーズの時点でもう興味深いのだが、内容は、想像以上、と、言っていいと思うし、言う。
 
〝女性労働者は一方的な弱者ではなく、
 実は「わたしの」人生を強かに拡張していた。
 ではなぜ「わたし」という主語で語る術を私たちは失ってきたのだろうか?〟
 
言葉にこだわりすぎる癖があるせいだとは自覚している。
が、わたしは「弱者」という言葉を使うことや使われ方に慎重になってしまう考えてしまう。
「シスターフッド」や「連帯」という言葉も然りだ。
嫌とか嫌いとかじゃない。逆だ。
考えねばならないことが詰まっているからこそ、使い方使われ方に妙に慎重になる。
 
本作には、タイトルにも、サブタイトルにも、痺れた震えた。

想像もしなかった近現代史を知ることとなった。

わくわくと、「現実」を知って、考えたり、
絶句からの立ち止まりもある、
でも読み進めていくうちに見えてくるのは、希望の灯だ、と思うし、思った。
 
近年、わたしは「伝えること」や、
さらには「残すこと」の大事さと難しさ、
難しさとそれでも大事さを考える、考えている。
書くことも、口からの言葉にすることもそうなのだが、
書くこと書き残すことに関しては、とても、だ。
どのようなものでも「誰か(たとえば書き手)の目」が入る以上、
一方的であったり、主観が入ることは否めない。
限りなくフラットな目や立ち位置は限りなくともフラットにはたぶんならない。
でも、その「一方的」が信じられる信じ込まれることの怖さや責任というのはとても大きいし、考えなしに動くことは非常に危険かつ傲慢なことだ。
SNSが身近で当たり前の世の中だからこそ、より、思う考えるのだろう思う。でも、とても。
もがいて、立ち止まって、進んでは止まって、進もうとして、進むから、だから、考えすぎるけど、考える、動きながら。
 
本書は冒頭からもう、つきつけてくる。
 
皆が知る(学校とかで習う)「女工哀史」。
その残され方、伝えてこられ方。
伝えられ伝わってきたことの、偏りと、理由と、背景と、「実は」。
(第一章「糸と饅頭」)
 
さらに、これも皆が知る(学校とかで習う)「米騒動」。
その伝わり方と「本当は」。
(第三章「米と騒動」)
 
ここから夜明けを経て、国をも越え、第八章「ドーナツと胃袋」へ。

そうして、しみじみとアツいエピローグへと進んでゆく。

もう一度言うけれど、一気だった。

「取るに足らないもの」、「取るに足らないもの」とされてきたもの。

〝対岸〟

〝対岸とはすなわち、関心を寄せてこなかった「向こう側」〟

〝私たちは時として自らを「こちら側」と措定し、向こう側にいる人びとを「他者」と名付けて関心の対象から排除することがある〟
 
〝対岸にあって他人事のように顧みられてこなかった歴史は膨大にある。
どちらに立つかは問題意識の如何によるのだろう。
本書ではその中でも主に日常茶飯という生活世界と
「わたし」を探す女性たちのライフヒストリーに焦点を当て、
「対岸の歴史学」を一つのかたちとして構築することを試みたつもりである〟

〝無名になって「わたし」を探し、「わたし」を取り戻し、「わたしたち」を生きる〟
 
「わたしの人生」
 
ライフストーリー。ライフヒストリー。日常茶飯。その、おおきさ、素敵さ! 大事さ、連鎖!
 
第二章の「焼き芋と胃袋」の最後に登場する、
タイトルにも含まれる「焼き芋」、
このエピソードに登場する
市場、甘味、映画館、芝居小屋などのある地は、
私的にもとても馴染み深いというか、よく知る場所だった。
偶然に、驚いた。うれしくなった。


今年、いや、この何年かのわたしのお気に入りは大根の皮。
大根じゃない。大根の皮。
漬けても炒めても美味い。
酒のアテにもめっちゃええ。
身より栄養もあるらしい。
是非おすすめしたい。
もう皮だけでええから売ってくれ売って欲しいと最近冗談ではなく思う。
猛暑で野菜の値段が高騰、猛暑だけじゃなくいろんな諸々で物価が高騰の時代と世に。
野菜の値段も今更知るようなおっさんが一国の首相をやっとる国と世で。

◆◆◆
以下は、自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。

構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。

詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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めっちゃ、どうぞ。

lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
【Twitter】【Instagram】 など、各種フォローも、とてもうれしいです。

先日、ご縁あって素敵なWebマガジン「Stay Salty」Vol.33の巻頭、
「PEOPLE」にも載せていただきました。

5月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋もやっています。

参加した読書エッセイ集もお店と通販で取り扱い中。

旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)です。

noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。

旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
こちらのバックナンバーも、さきほどの「出発点」さんに置いています。

あなたとご縁がありますように。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

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