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思春期の娘と言葉の重み

「きんもっ!」

「気持ち悪い!」の上位互換である「きもっ!」の更なる上位互換であり、極めて最凶の暴言である。
ドラクエの呪文に喩えるなら、メラゾーマというメラ系の強力な呪文になるのでしょう。

そんな言葉を無防備に浴びせかけられた私ですが、今日ばかりはスルー出来なかった。

さて、どんな経緯があったのかと言うと、娘から、あるお店に買い物に行きたいという希望をかねてから伝えられていたことに起因している。

小学6年生の娘だが、そのお店は、公共交通機関を利用して行かなければならないような場所であり、わりと繁華街にあることから、親の同伴が必要だった。

娘は冬休みに入っているが、私や妻は共働きにより仕事があるため、年末年始休暇に合わせて行こうと本人に伝えていたのだが、妻より私の方が仕事納めが1日早いことから、私だけが娘に付き添う予定としていた。

その予定日から2日前となるのが今日だ。

私は仕事の合間に、そのお店の他にも、普段行けないようなお店や、娘の興味がありそうなイベントに目星をつけたり、当日の映画の上映スケジュールをチェックしたり、話題のスイーツが食べられるお店をリサーチしていた。

よし、今晩、娘に幾つかのプランを提案してみて、反応が良くて、楽しんでもらえそうなら奮発しよう…そう思っていた。

少し楽しみになっていた私は、妻とのLINEのやり取りの中で、「(娘の名前)とのデートプランを考えていた」と、少し浮ついた表現でメッセージを送ったのが、直接的な事の発端になった。

その妻と交わしたメッセージを、あろう事か妻は娘にそのまま伝えてしまった。

「きもっ!だってさー」

年頃の娘にとって、こんなふざけた父からのメッセージを受け止めれば、そんな拒否反応となるのは明白だったし、妻はなぜ安易にそのまま伝えたのか。

日頃から家族内で冗談混じりのトークは多めだし、こんなメッセージを娘に伝える事についても、妻は深く考えなかったと思う。

職場を後にして、家に帰るのが一気に憂鬱になった。

自宅のドアを開けて、妻と娘が夕食を食べている場面…娘から開口一番で冒頭の暴言を浴びせかけられた。

いつもは軽く受け流すのだが、今日はどうしてもスルー出来なかった。

「それじゃあ、ママと行きなさい。気持ち悪いパパと行くのは不本意なんだろう。」

その瞬間、2人の表情が凍りついて、食卓の空気が変わってしまった。

それもそうだろう、普段の自分ならば、こうして怒りをぶつける事はしないし、ふてくされる事もない。

妻は「何ふてくされてるのさ…」とボソッと言う。

そんな言葉にもムッとして、今日、娘のために考えていたことを吐露した。

すると妻は立て続けに、「いつもならスルーできるのに、娘に対して怒っているのはパパの問題じゃん。」とまくし立てる。

その時、自分が勝手に盛り上がっていて、それが裏切られた事で、怒りに繋がったのは明白で、その主張には納得し、感情的になったことを謝った。

けれど、妻とのメッセージを娘に伝えたのは納得出来ないし、たとえ思春期であっても、この類の暴言はやっぱり許せない。

娘は日常的に妻に対して太っていることを揶揄したり、妻や娘は髪が薄く見える部分を指差してはハゲだと揶揄することがある。
ちょっとした家族内の悪ふざけなのだが、自分もムッとする時もあるし、妻も内心傷ついている。
無論、身体的な特徴を引き合いに、相手を馬鹿にするのは良くない。
家族だからといって許されるものではなく、注意したり、反省しないとならない。

そして、今日の言葉の一件もそれらと同じであると妻は主張したのだが、それには異を唱えたい。
同じ暴言ではあるけれど、気持ち悪いという表現には、相手の存在すら否定し、相手への嫌悪感を直接伝える言葉だからだ。

娘は、この言葉の性質を深く考えて言っている訳では無いし、衝動的かつ口癖のようになっているに過ぎないと思う。
けれど、この軽薄な言葉の本質を理解して欲しいと切に思った。

とにかく、そんな稚拙な会話が横行している我が家は、家の主人である自分が招いた結果だと自覚しなくちゃならない。

年の瀬を迎えている今日、来年の抱負は、口は災いの元であり、親しき家族にも礼儀あり、に決まりです。





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